8.「いい会社」を見つける=株の買い時
世の中では衆議院の解散総選挙があったり、私は物価高対策の現金バラまきの恩恵を少しだけ受けたりなど、これまで気にも留めなかったお金の事柄に目を向けるようになると、世界とはなんて目まぐるしく変わりゆくものなのだろうと日々驚きの連続だ。
普段は世界情勢などに対し「ふーん」くらいにしかとらえていない私だけれど、それでも選挙と名のつくイベントにだけは十年ほど前の一回を除きすべて足を運んでいる(その一回は唐突に仕事が入ったため期日前投票にも行けず)。もちろん今回の衆院選も投票したが、選挙と株式市場の動きに深い関係があると知ったのは投資を始めてからのことだった。
だからといって投票先を変えたかと言われればそんなことはなくて、けれど結果的に、選挙結果によって日経平均株価は大幅に上昇した。私はもろにその恩恵を受け、一月のある時点で購入した個別株はおかげさまで二十パーセント弱の含み益となっている。
今回の解散総選挙を含め、二〇二六年一月から二月にかけての株価の値動きは私にとってとてもいい勉強の機会となった。株価というのはなにかの拍子に突然上がったり下がったりするもので、そのきっかけに対しイチイチ反応していてはとても心が追いつかない、ということがよくわかった。
株に買い時はない、なんて言葉をよく耳にするけれど、そのとおりなのだろうなとつくづく思う。かのウォーレン・バフェット氏の格言に、
――株式投資とは、いい銘柄を見つけ、いいタイミングで買い、いい会社である限りそれを持ち続けること。これに尽きます。
というものがあることは多くの投資家様の知るところだろうけれど、この「いいタイミング」というのがいったいいつなのか、これがわからないからこそ我々シロートは勉強の手を止めてはならず、いつかバフェット氏の言う「いいタイミング」で株が買えるように日々鍛錬を積む必要があるのだと私は感じた。
株式投資を始めてからおよそ二ヶ月が過ぎようとしている。この間、私は時間の許す限り投資の勉強に取り組んだ。
その中で、日本人の方にとって特に読みやすいなと感じた書籍に出会ったので紹介したい。栫井駿介さん著『買った株が急落してます!売った方がいいですか? ――株で利益を出す人の考え方』だ。
この書籍は著者の栫井さんによる株式投資についての解説だけでなく、株式投資で大損をした主人公が投資のプロの力を借りながら投資家として成長していく物語を並行して(小説形式で)読むことができる。どの銘柄に投資すればいいのか、買った株が大暴落に見舞われた際にはどう動くべきかなど、我々個人投資家の悩みを代弁してくれる主人公で、一緒になって成長を手にしていける内容になっているところがオススメポイントとしてかなり高い。
特に、個別株を売買したいと考えている人はぜひ一度お手にとってみていただきたい一冊だ。というのも、内容の大半が個別株の売買を想定していて、妙な投資信託に手を出したり、「暴落=買い」という単純な方程式で考えてはいけない理由だったり、私たち個人投資家が危険な投資手法からどうにか遠ざかれるように導いてくれる。「選んだものの正しさ」ではなく、「選ばなかったことの正しさ」を教えてくれる、背中を押すより、襟首を引っつかんで「ちょっと待て、よく考えろ」と止めてくれる、そんな本だと私は感じた。短い本なのでサクッと読めるところも推しポイントである。
詳細な内容はさておき、大筋を掴むとすると「とにかく自分の頭で考えて選択しろ」というのがこの本の主張で、そうした自分で下す「判断」のための指針となるようなことが書かれている。暴落した株を売った方がいいのか、いつ売ればいいのか、乗り換える場合はどの銘柄にするべきかなど、考えなければならないことは無数にあって、しかし自分の「軸」をしっかりと持つことによって次第に「判断」の質は高まっていき、失敗は少なくなっていく。そうやって投資家として成長していきたいと考える人にとっては、ある意味背中を押してもらえる一冊とも言えるだろう。
特に私が強い印象を持ったのは、「自分の信じるいい企業の株を買う」という部分だ。
誰かがオススメしていたから買う、という「判断」ではなく、自分から興味を持ち、どんな会社なのかよくよく調べた上で周囲の反応を伺い、買うかどうかを決める。このやり方がすごく賢いなと思った。自分で選んだ服を上機嫌で着て外を歩けるように、自分で選んだ株ならちゃんと信じられるし、誰のせいにすることもなく、これからもずっと自分の力で株式投資を続けていける力につなげることができる。また、「いい会社」であると信じることができたなら、たとえばリーマンショックに代表される外的要因による暴落などでは慌てて売ろうという気にはならないはず。「いい会社」ならば、いずれ株価は元の水準まで戻り、その先も成長を続けるに違いないのだから。
これは一つ、私の「軸」として持っておきたい考え方として心に根づいた。
株に買い時はなく、買いたいと思った時が買い時。買いたいと思う瞬間は、興味を持った会社について調べ上げ、「いい会社」であると判断できた時。
なにをもって「いい」と判断するか、という観点ももちろんあって、たとえばその会社の商品を日常的に使っているなど、なんらかの形で今の生活にかかわりのある会社であったりすると選びやすいのかもしれない。本日ご紹介した栫井さんの著書の中でも、小説の主人公が奥さんの愛用している商品を作っている会社の株を買うシーンが描かれ、なるほど、家族が安心して暮らせる日常を作ってくれている会社ならば「いい会社」に違いない、と彼が判断できた理由としてふさわしいなと私は強く共感できた。
そう考えると、誰かのオススメによって自分のよく知らない会社の株を買うのはちょっと怖い気がしてくる。SNSなどでどれだけ優良株だと推されていても、名前すら知らない会社の株主になったところでなにができるとも思えないし、株価上昇以外のなにを期待していいのかもわからない。
かのバフェット氏も、
――注目すべきは株価ではなく、事業そのものでなければなりません。
という言葉を残していることから、株式投資とは究極的に「企業を買うこと」と同義であるととらえなければならない。とするならばなおのこと、名前も知らないような企業の株を買うこと自体が大きなリスクであると考える必要があるわけだ。
とにもかくにも大切なことは、自分の頭で考えて選択すること。誰かにとっての「いい」が自分にとっての「いい」とイコールであるとは限らない。
自分のケツは自分で拭く。いい大人なのだから、投資だって自己判断でやっていくべきなのだ。
そうして自立的に行動できるようになるために、投資についてずっと勉強し続ける必要がある。これが今回の結論だ。株を買うことそれ自体も勉強だし、YouTubeを見たり、本を読んだりすることもそう。勉強法は人それぞれでかまわない。
いい会社を見つけた時が株の買い時であるように、学ぶことをやめた時、それが私の株式投資のやめ時なのだろう。勉強し続ける限り、投資の世界にいる資格を得続けることになるのだ、きっと。
最初は怖かった投資の世界も、勉強を重ねることでだんだん怖さがなくなってきた。
今は資金的にあまり余裕がないけれど、来年くらいにはもう少し個別株の売買もがんばれればいいなと思っている。
そのためにも、まずは貯金だ。理想のポートフォリオは、株式:現金=6:4。子育て中ということもあって、これ以上は攻められない。
少しでも理想に近づけるよう、自らを律し、貯金のできる体質づくりに努めたいと思う。
ムダ遣いするなよ、私。見ているからな、このエッセイの読者の皆様が。




