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浪費家だった私が、投資を始めたら貯金ができるようになった話  作者: 貴堂水樹


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4.なんのために投資をするの?【不安になるなら投資をするな】

 株価の推移にはいい時も悪い時もあって、二〇二六年一月十三日の日経平均株価は過去最高の値をつけた。今はきっといい時で、ここからなんらかの要因によってガクッと下がるタイミングが来たら、それが悪い時。「歴史はくり返す」という言葉は株価のチャートが物語っていて、数十年の長期で見てみると、なんとアップダウンの激しいことかと思い知らされる。いちいち心を揺らしていたらとんでもなく疲れることだろう。


 今がいい時というだけあって、インデックスファンドに預けた私の資産はほんの少しだが増えている。特に好調なのはTOPIX連動型の国内株式ファンドで、プラス四パーセントの運用益だ。預金口座に預けっぱなしでは増えなかった金額が、たった数百円でも増えているとモチベーションは上がる。人間というのはわかりやすく欲深い。

 気をつけなければならないのは、順調に増えていることで気が大きくなって、無闇に投資額を増やさないことだ。まずは日常生活をきっちりこなす。その上で、自由に使えるお金かつ今すぐ使う予定のない分だけを投資に回す。このことを肝に銘じておかなければ、いつか大失敗をやってしまうに違いない。


 投資を始めて二週間、お金がお金を増やすということはよくわかった。すると次に考えることは、私の中の「株」のイメージの根幹であった個別株への投資について。


 投資信託と違い、個別株はとにかく価格が乱高下する金融資産であるらしい。直近五年分のチャートを見れば明らかだ。リーマンショックやコロナショックのような「○○ショック」と呼ばれる経済危機的事件が起きると株価は暴落し、国会の解散総選挙が決まれば急騰する。

 なんじゃそりゃ。株ってすげー景気に左右されるじゃん。そんなんに投資して本当に儲かるの? とシロートの私などは思ってしまうわけだけれど、これがどうやら、株式市場に長く居続けると結果的に儲かるらしい。

 曰く、なんだかんだ事件があっても、経済は成長を続けるから。世界経済が成長し続ける限り、株価は上がり続けるのだという。


 ここでもやはり、長く株式市場にいること、すなわち長期投資という言葉が出てくる。とにかく株式投資というのは、どっしりかまえて長期で運用するのが鉄則。これを破ると大損する、ということらしい。

 まぁでも、わからんでもないな、というのは個別株投資にも言えることだというのはなんとなくわかる。個別株を買って保有していると、決算時に配当金がもらえる(可能性がある)からだ。


 配当金とは、企業の利益の一部を株主に還元するシステムで、金額は企業ごとに異なっている。たくさん還元してくれる企業もあれば、自社の成長のためにお金をかけることを優先して配当を少なくする企業や、業績不振で配当を出せない企業もある。各企業が投資家向けに提示する資料の中にそうした企業姿勢みたいなものは基本的に書かれていて、一株に対してどのくらいの配当を出す企業なのかを示す指標の一つに「配当利回り」、株価に対して年間の配当がどれだけもらえるかをパーセンテージで表したもの(配当金÷株価×一〇〇)が存在する。

 配当利回りは預金でいうところの利子に相当するもので、たとえば配当利回り三パーセントの株というと、元本割れの恐れはあるものの、金利一パーセント未満の預金口座にお金を寝かせておくよりよっぽど稼いでくれるよね、という話になるわけだ。ただし先述のとおり、株式を購入する場合は銀行預金と異なり、元本割れのリスクが避けられないという裏目がある。


 ピンと来る方も多いだろうが、この配当金という制度は、利回りはともかく、うまく利用すればお金を増やす手段としてかなり有用だということがわかる。

 単純な話、株を買って保有しているだけで企業が我々株主にお金を払ってくれる(可能性が極めて高い)のだ。元本割れさえしなければ、毎年いくらかは必ずプラスになるというシステムである。

 また、よく言われるのは「株価は予想できないけれど、入ってくる配当金は計算できる」というもの。企業は投資家に向けて、決算予測から配当金について一株当たりの金額をあらかじめ提示してくれるため、私たちは自分の保有株数から年間いくらの配当金がもらえるという額を計算することができる。

 これはありがたい話だろう。株価の推移は予測できなくとも、配当金でいくらもらえるのかがわかれば、その後の資産運用の戦略や私生活の計画はうんと立てやすくなる。株価の上下に一喜一憂するのはイヤでも、その年の配当金を出すことを企業が約束してくれているのであれば一定の安心材料にはなってくれそうで、リスクは取ることになったとしても利用価値はあると感じた。


 デメリットを上げるとするなら、配当金の額は常に一定ではなく、増える時もあれば減る時もあり、あるいはまったく無くなってしまう無配の年が出てくる企業もあるということだ。しかし、それについては対策方法がまったくないわけではない。

 配当金について「累進配当」、無配や減配の措置は採らず、金額は据え置き以上とすることを標榜している企業があるのだ。こうした企業の株を保有していれば、毎年一定額あるいはそれ以上の配当金を受け取ることが確約される。

 もちろんどんな企業も明日はどうなるか、という心配はあり、なにかの拍子に累進配当制度が崩れる日が来るかもしれない。しかし、過去に無配の実績がある企業を選ぶよりは、きちんと毎年配当を支払ってくれて、かつ増配または据え置きにしてくれている株主に優しい企業を選んで投資したほうが気楽だし、企業としてもそうした投資家心理を踏まえた上で累進配当を採用しているだろうから、その点でいけば、未来の保証はなくとも互いにWin-Winの関係でいられる可能性は十分に見込めるはずだ。


 そんなわけで、なにごとも経験だマンの私はさっそく個別株にも手を出してみた。

 もちろん闇雲に買い漁ったわけではなく、予算を五万円と決め、配当利回り三パーセント以上、かつ業績と財務状況の安定していそうな企業の株を購入した(詳しい財務諸表の見方は絶賛勉強中である)。

 元手資金五万円では一単元(百株)の購入は難しかったけれど、私の利用している証券口座では単元未満でも株を購入できたので、とある企業を数十株、また別の企業を数十株、といった具合に、三月が決算の企業の株をほんの少しだけ買ってみた。まずは様子見。さっそく株価を下げた銘柄があるけれど、下がった分は勉強代だと思うことにしている。


 とはいえ、投資信託でプラスの運用益が出ていることもあり、個別株でマイナスをたたいているという現状は私にとってけっこうつらいことだった。思っていたよりもずっとしんどい。この体験をできたことそのものが価値のあることではあるのだけれど、それにしても、なにもしていないのにお金が減るというのはとても悲しい。けっこう悲しい。

 投資は長い目で見てやるものだから、一時的なマイナスには心を揺らすな、と本で読んだりYouTubeで見たりしているというのに、いざマイナスになっている株式の状況を目の当たりにするとなかなかうまく心をコントロールできないものであるらしい。私がそういう性格で、かつ投資を始めてまもないせいもあるのだろうけれど、意外と私のリスク許容度は低いようだ。こんなことなら個別株なんて買わなきゃよかった、とさえ思っている。慣れたら変わるものだろうか。


 個別株に手を出したことをさっそく後悔している要因の一端として、毎日の株価の値動きが気になって仕方がなくなってしまっている現状も挙げられる。インデックス投資をオススメされている投資家の方のお話でよく見かけるように、最近私も仕事の合間にチラチラとYahoo!ファイナンスを見てしまうようになった。投資先の企業に悪い情報が出たらスマートフォンを片手にトイレへ駆け込む、なんて体験談も見受けられ、私もいずれそうなってしまうのではないかと、そっちのほうがよほど不安に思えてくる。


 私はよく『鳥海(とりうみ)(しょう)(だま)されない金融学(きんゆうがく)』というYouTubeチャンネルを拝見しているのだけれど、チャンネル運営者の鳥海翔さん曰く、「不安になるようなものに投資をするな」とのこと。

 ごもっとも。投資をしたことによって日々心を揺らすようになってしまったら元も子もない。そもそも株式投資にリスクはつきものなのだから、いちいち不安になるような人には向いていない行為と言えるのだろう。


 その点、私はどうなのかな、と考えてみる。

 確かに今、購入した日本株が株価を下げ、少なからずショックを受けている。けれどその下落率はどの株も二.五パーセント以下で、たった数百円のマイナスでしかない。

 正直、この額なら配当金がもらえればチャラだ。それでも手を出さなければよかったと後悔しているのだから、もしかすると私には個別株への投資は向かないのかもしれない。


 とはいえ、投資を始めてまだ一ヵ月しか経っていないのだ。今すぐ売って撤退しようとか、そんなことはまったく考えないけれど、長い目で見た時のことを思うと、おとなしくインデックスファンドへ投資しておいたほうが心穏やかな投資生活を送れるのだろうな、とは思う。

 そもそもの話、私はお金持ちになりたいという夢は持てど、今すぐお金持ちになりたいかと言われると頭にクエスチョンマークが浮かぶ。私が投資を始めた目的は「浪費癖を直し、貯金のできる人間になること」であって、「今すぐ大金を稼ぐこと」ではなかったからだ。

 そうであるなら、やはり投機的な思考による個別株への投資はやるべきではないのだろう。投機的でないにしろ、不安になるような投資をするくらいなら余ったお金を自由に使っていたこれまでのほうがきっと幸せに暮らせるに違いない。


 もう少し具体的なプランでいくと、私は六十歳までに一千万円以上の資産を築きたいと最近考えるようになった。私の今の務め先は六十歳が定年で、欲を言うとそのタイミングで一度退職したいと思っているからだ。

 正直、今の仕事はあまり長く続けたくなかった。前職(二十代の頃)では働くことが楽しいと思えていたけれど、体力面や職場の距離の都合で転職した今の仕事は特におもしろいこともなく、言ってしまえば息子を育てていくための手段でしかない。やりがいなんてものはなくて、そんな仕事を長く続けたいなんて思えるはずもないわけで、なんなら定年を迎える前に辞めてしまいたいくらいだった。


 一人息子がいるのだから、いざとなったら息子に面倒を見てもらえばいいじゃない、という声も聞こえてきそうだけれど、私にはその考えが一切ない。息子には私の存在を気にすることなく自由な人生を送ってほしい、というのが私の願いだからだ。あと、息子に養ってもらうのはプライド的に許せない。息子が巣立ったその先も、できるだけ長く経済的自立を保てるような大人でありたいと思っている。

 だからこそ私は、働きたくはないけれど、収入面で安定した老後を送るための準備を少しずつ進めていく必要があると考えた。今の職場の退職金がいくら出るのか知らないので(前職では年に一度、予想される退職金の報告があった)、基本的には年金を頼りに生きていくことになるが、それでは足りないだろうということは想像に難くない。

 少し前まで「七十歳までアルバイト生活か~」なんてことをぼんやりと考えていた中で、このたびめでたく出会ったのが投資という資産形成方法だった。貯金のできる人間を目指すという目的の片隅で、インデックスファンドへの投資によっていわゆる「じぶん年金」づくりの下準備をすること、これも目指していこうと思っている。とりあえず一千万円以上を目標に貯め、その後も運用を続けながら年金と退職金をもらい、私はおひとりさまの老後生活を乗り切るつもりだ。


 ちなみに今から六十歳までに一千万円以上の資産を作ろうとすると、年利五パーセントの運用であれば月に一万五千円~二万円ほどを積み立てれば理論上達成できるらしい。三菱UFJアセットマネジメントさんのつみたて投資シミュレーションがとてもわかりやすかったので、興味のある方は一度サイトを覗いてみることをオススメする。

 月二万円なら、もう少し節約できればいけそうな金額である。ボーナス月だけつみたて額を増額するなどの方法で補完することもできるとすると、なんやかんや毎年達成できない数字ではない。

 息子が成長するなど生活環境が変わって今よりも余裕が出てくれば、つみたて額を増やすことによってゴールが早まり、六十歳になる頃の資産は目標値よりもずっと増えることも期待できる。こうして具体的な数字を掲げておくことによって、今後も投資に対するモチベーションを保つことができそうだった。


 一方で、そうした目標があるにもかかわらずハイリスクな個別株に手を出しているのだから、結局私は目先の利益に飛びついているということなのだろう。今すぐお金があったほうが嬉しいし、お金があれば、息子と今よりもずっといろんなことをして遊ぶことができる。

 でもそのお金って、投資をすることで得る必要はないよね、ということなのだ。投資は余剰資金でやるのが大前提。息子との時間を過ごすためのお金(遊興費)は決して余剰資金ではないのだから。


 やはり私にとっての最適な投資方法は、浪費癖を直すためにインデックス投資をしながら老後資金を作る、と結論づけることができそうだ。個別株への投資は最適解ではなかった可能性が極めて高い。

 お笑い芸人のパックンさんがおっしゃっていた。複利を活用したインデックス投資は、未来の自分にお金を贈ることなのだと。数十年後の自分はきっと、今の自分にうんと感謝することになるだろう、と。

 私もそれでいい。この先何年生きられるかわからないし、息子に迷惑をかけるだけなので長生きしたいとは思わないけれど、仮に明日死んでしまって貯めたお金を自分では使うことができなくなったとしても、少なくとも私の財産は息子の手に渡る。息子のためにいくらかでも残してやれると思えば、私は一つも損をすることなく積み立て投資を続けることができる。


 こうして投資を始めたことで、浪費癖を直したいという当初の希望は少しずつ形を変え始めている。人として変わりたい、貯金のできる人間になりたいという思いから、将来の自分へ、あるいは息子へささやかな贈り物をしてあげられる人間になりたい、と。

 株式はリスク資産。減ってしまうこともきっとある。それでもめげずに続けることができたなら、目標を達成した時にはきっと今とは違う自分になれているはず。そんな未来が楽しみだと思えていることも、投資を始めてよかったと感じることの一つだ。


 二〇二六年一月下旬、株式投資という手段と出会っておよそ一ヵ月が過ぎた今、貯めたお金は元本からほんの少しだけ増えた。ニューバランスのスニーカーとか新しいカーテンとかマイ枕とかエアコンとか、いろいろと欲しいものはあって、手もとのお金はあればあるだけいいと今でも思ってしまうけれど、忍耐、忍耐。ここであきらめては本当に欲しいものが手に入らない。


 私の大好きな戦隊ヒーロー、海賊(かいぞく)戦隊(せんたい)ゴーカイジャーのゴーカイレッド、キャプテンマーベラス様が言っていた。「欲しいものは、この手で全部つかみ取る」と。

 そのとおりだ。待っていても始まらない。

 とにかく、やる。やると決めたら、やる。

 やってダメでも、やらなかった時の後悔よりはずっとマシだ。どんな結果であれ、最後に納得できるような行動を取っていれば大きな後悔にはつながらない。「為せば成る」は私の中学時代からの座右の銘で、この言葉を忘れず投資も続けていければと思う。

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