第48話 磯前班外敵撃破チーム
外特機動隊主力の磯前豪太の圧倒的な怪力の武を眼前にして、伏見慶一郎は全身の細胞が沸騰するようなアドレナリンが一瞬にして駆け巡るのを感じた。
(す、すげぇ…。豪太さん、半端ねぇ!俺も負けてられるか!)
あの時渋谷で見た「藤聡明」の後ろ姿を見て日々その存在を追いかけ続けたが、ここにもこんなにも凄い人がいたのかと伏見は圧倒された。
そして、自分も同じように活躍したいと強く願った。その感情のまま、伏見は全力で駆け出すと横須賀クラスでもNo.1の身体能力で大きな跳躍をした。
実に6メートル近くまで飛び上がると滞空しながら手のひらを上に掲げて大型な火炎の球体を作った。
そのまま勢いよく眼下のアンデッドたちに投げつけた。夜間の幹線道路に小型の太陽が落ちたかのような強烈な閃光が広がる。
アンデッドたちが炎に包まれバタバタと動き回る。周囲に強烈な焦げついた匂いが立ち込める。
伏見は着地すると手当たり次第小型火球を投げつけまくる。
アンデッドたちは完全な混乱に包まれてお互いが折り重なるように焼き焦げていく。
豪太は伏見を横目に、いいぞそのままやれ!とふたたび壁を展開すると焼き焦げて混乱するアンデッドの軍団を再び一気に壁に押しこみ圧殺した。
大通りを埋め尽くしていたアンデッドたちの焼き焦げた慣れ果てとビル壁挟まれたアンデッドだったものたちがうず高く積まれた。
ものの数分で大群に方がついてしまった。豪太と伏見はお互いを見て頷き合った。この外敵であれば行けそうだ。
「景次!鳥たちを展開してくれ!このまま見つけ次第奇襲をかけまくるぞ!」
大山景次は八面六臂の活躍する外特機動隊の主力と横須賀クラスのエースの様子にすっかりのまれてしまったが、自分の名前を呼ばれるとすぐに我に返った。
すぐさま恩恵能力を発動して背後に控えていた使役している鳥たちを上空に展開した。
この鳥たちは台湾に到着してすぐに基地の周辺で戦いに備えて使役した。台湾でよく見られるオウチョウと呼ばれる中型の黒い野鳥たちだ。
大山は目を閉じると意識を使役した鳥たちに集中した。
大山の脳裏に大量の映像が流れ込む。
現在7羽のオウチョウたちが大通りから北上して細かくさまざまな通りに入っていった。そのすべてのオウチョウが見た映像が大山の脳内で同時にモニターされる。
複数の他の動物たちの見聞きした大量の情報が脳内に流れる感覚を大山は他者に説明できる自信がなかったが、例えるなら壁一面に並べられたモニターを監視する獄卒を大山イメージした。
何か違和感がないか、懸念する事象が起きてないか、漫然と自動判定のようにすべての映像が脳内でスキャンされて処理されていく感覚があった。
細かく細部を見るのではなく全体を俯瞰して観て、異を識別する。
大山が体得したこの特異な恩恵能力の本質は思えば小学校、中学校にどうすれば弱者に回らずに済むか、奴らから虐められないようになるか、教室の隅から隅まで意識を働かせていたあの頃としていることと変わらない気がした。
大山はかつて悪質ないじめをクラスメイトたちから受けていた。もうホールにのまれてしまった大山の生まれ故郷の思い出したくもない過去の土地での思い出だ。
多くのクラスメイトは帰らぬ人となり、大山はかつての弱者ではなく、適応者として覚醒した。
あの頃とはもう違う、と思いつつも今もたまに恐怖に駆られた日々が夢に現れて夜中に起きることがある。
大山は横須賀クラスで虐められながらもめげずにひたむきな努力を続ける彼方を見て、生き方が不器用な奴だと馬鹿にしつつ、自らがそのポジションに落ちなかったことを安堵する自分を恥じていた。
ホールが自分の世界を一変させた後に待っていた横須賀クラスでの適応者としての日常が、新たな弱肉強食の世界だったことに大山は至極真っ当な世界だと思ってしまう自分を悲しく感じた。
彼方へのいじめを通してそれに相反する自分を抱えながらも、生き抜くためだと彼方のいじめに加担しながら強者を絵に描いたような伏見を前に自分も自分を貫けるほど本当の強さを手にいれたい、と切実に願った。
この戦いでそのきっかけを手に入れたい。
台湾に向かう機内で豪太に聞いた劉将軍のことを思い出す。
使役恩恵の最高戦力にして世界でその名を轟かす、蟲の王。使役という恩恵能力における文字通りトップの存在だ。
自分もこの鳥類使役の能力を鍛え上げていけば、劉将軍とは言わなくても誰もが無視できない存在になれるかもしれない。
豪太からはこの高雄ホールでの作戦に中国最高戦力が参戦する可能性は限りなく低いと聞いたが、先ほど聡明から自衛隊メンバー全体に今回の各国の参戦している適応者の陣容が伝えられてから鼓動が止まらない。
劉将軍が参戦していると言っていた。
何か、この戦場に自分を変えることができるチャンスが埋まっている気がしてないらない。
ここでチャンスを掴めば、強きにただ追随して長きに巻かれるような自分を卒業できるはずだ。
大山は願望に似た希望を胸に、だからこそこの役目を全力でまずはこなすんだ、と使役した鳥類たちによる哨戒任務に改めて集中した。
程なく幹線道路の左右の枝道に複数のアンデッドの集団を確認した。
「豪太さん!伏見さん!左二つ目、右3つ目にそれぞれ20体以上の集団がいます!」
「二手に分かれるぞ!慶一郎、ぶっ潰せ!」
「はい!」
即座に二人が飛び出して左右に分かれて路地に飛び込むなり攻撃を繰り出す。
右手奥の路地から巨大な炎が上がる。
左手路地からは瞬く間にスケルトンたちを圧殺した豪太が出てきた。
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