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第37話 八雲班②

 丈二郎は、さて軽口はそのあたりにしておいて本題なんだけど、と言うと三人の前に1、2と指を二本立てた。


「さっきも言ったように僕は君たちに、1つは『戦い方』、もう一つは『恩恵』について僕が知っていること、君たちが知って知っていた方がいいこと、身につけた方がいいことを教えていく。まずこの『戦い方』についてだ。前回の御殿場でのチームプレイはなかなか見事だった。ただ、戦闘そのものについては完全に熊野仁之助の力におんぶに抱っこ。これじゃダメだね。仁之助のスキルアップも含めて、彼方と小葉には戦い方そのものを体系作る必要がある。二人にあった戦闘方法ということだね」


 熊野を含めて、彼方も小葉も丈二郎の指摘の言わんとすることは自分たちでも思っていたところだった。

 逃げるだけでは勝てないし、現在の小葉の能力はあくまでもサポートの域を出ていない。


「ちなみに、この八雲師匠は恩恵はレアだけど、能力そのものに攻撃力があるわけではないです。ただ、僕の総合的な『強さ』はおそらく藤聡明とも五分五分。世界中を見渡してもこれは勝てるかわからないなと思うのは数人だけ。他全ての適応者やその恩恵とは少なくとも『負けない』と言い切れる。それくらい僕は『戦い方』に関しては文句なしに1番だと自負しているし、多分僕がこの世界の誰にとっても一番『戦いづらい』相手だ。それは『恩恵』を深く理解していてそれを戦い方に反映できているからだ。だから僕の教える方法を信頼してくれていい」


 丈二郎は三人が自身の言葉がしっかりと受け止めたことを見てとると、再び三人の前に手の広を広げた。


「さて、そうとなるとまずはここから。『武器』についてだ」

 言うや否や、彼方たち三人の目の前に広げられた手のひらの上に、一瞬にして長さ2mはあろうかという長い槍が出現した。

 まるで映画のコマが切り変わったかのようにあたかもずっと前からその手のひらの上に存在していたかのようにと唐突に出現した。


「な・・・!!」小葉が驚きのあまり声を上げた。彼方と熊野も魔法のような現象に言葉をなくす。


「びっくりした?ちなみにこれがさっき言った『恩恵を深く理解』しているからおこせる現象なんだ。みんな僕のことを瞬間移動人間だと思っていると思うけど、こんなこともできる。ちなみにこれは僕がいつも使っている武器だね。と、言うわけで本題はこっち」


 丈二郎は再び広げた手のひらに、何もないところから別の武器を現出させた。

 Yの字型の器具にレイルのようガイドがついたパチンコのような器具だ。


「スリングショット、の改良版だよ三河重工に無理なオーダーで作らせたやつで、通常の人類には引けない強度の伸縮機構を使っているヤバイやつだよ」

 丈二郎は手に平につかんだパチンコ器具を木葉に渡す。

「木葉の能力を付与するにはこのくらいがちょうどいいはずだ。ちなみにちょっとしたショットガンをはるかに超えるインパクトをだせる強度だよ。銃とちがってとばすもの色々と試行錯誤することと能力の相性がいいはずだ」


 小葉はもらった大型スリングショットをひっぱっる。

 確かに適応者でないと絞れない強度だ。ただ真っ直ぐに飛ばすのに習熟が必要な練度を感じる。

 しかし、もしここに能力を乗せて放つことができれば無火器ながらのハンドカタパルトと呼べる火力を感じた。

 小葉は丈二郎を見て頷く。

 これなら、これなら奴らを倒せるかもしれない。

 胸の奥の外敵への敵愾心が沸々と煮えたぎるのを感じる。

 一体でも多く撃破したい・・・小葉ははやる心をおさえるよう気を落ち着かせる。



 続いてはこちら、と丈二郎が掌に二振りの短剣を現出させる。

 どちらも同じ双刃のダガーナイフと言われる刃渡り10センチ程度の短剣だった。


「これは近接戦闘に適したコンバット用の両手ナイフだ。僕は彼方がやるべきはこれだと理解したよ。彼方、君の能力の真髄はギリギリで避けることじゃない。外敵の攻撃対してギリギリまで『待てること』にある。他の誰もが自身の身を守るためには肉薄できないギリギリの際まで攻め込むことが逆にできる。攻撃される恐怖に打ち勝って耐えられる『勇気』そのものが君の力だ。だからこの超近距離戦法は君にしかできない武器になる」


 ダガーを二振り渡された彼方は憧れの野球選手からグローブをもらった野球少年のように目を輝かせる。

 僕だけの武器だ。

 彼方の心がおどる。

 やっと僕もみんなの役に立てるかもしれない。


 そして彼方は丈二郎に言われた言葉を反芻する。

 僕の力、それは逃げることじゃゃない、敵の攻撃をおそれない心、勇気そのもの。

 彼方はこれまでにないくらいクリアに視界が張れたような、全く気が付かなかった自分を見つけた気がする。

 僕にその勇気があるなら、こんなに嬉しいことはない。

 いま、この瞬間何だってできる気がした。


 丈二郎はダガーナイフを両手に構えて目をかがやかせる彼方をしばらくみていた。

 丈二郎は自身の直感に確信を得た。


 彼方の恩恵を通してより自分たちが恩恵の真髄、深淵に近づこうとしている。

 果てしてその先に見えるのはどんな世界か。


ーやはりホールの先に答えがある。我々、適応者には何かしら意味がある。なにかの意思のもと、与えられた役割があるはずだ。

 静かに昂る心を落ち着かせると丈二郎は散歩のついでのように閉めた。


「ま、とりあえずやってみよっか。実践に勝るものなし、ってやつだ」


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