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第26話 レッドドラゴン②

 上空に信号弾が駆け上がるのが目視された。


「特等!15時の方角、救助要請です!」


 哨戒している自衛隊員から無線が入る。

 東富士演習場全体を見下ろせる高台に陣を張っていた、藤聡明と丈二郎ガルシア八雲が弾かれたように立ち上がった、丈二郎が首を捻って信号弾を目視する。

 視界の端、遠く上空で炸裂する閃光を確認した。


「見つけた!聡明!」

「丈二郎、頼む!」


 聡明が傍に置いた刀を掴み、飛びかかるように丈二郎に触れる。

 聡明が触れた瞬間、丈二郎が能力を発動させる。

 その瞬間、聡明と丈二郎が空間からふっと消えて、その地面に燃えかけた閃光弾のかけらが落ちてジュワッと音を立てて煙を発した。

 即座にそのかけらの存在を消すように磯前豪太が踏み潰した。

 豪太は何かを懸念するような不安な表情を浮かべた。



 地上からおよそ20メートルほど上空に聡明と丈二郎は躍り出るように出現した。

 丈二郎は眼下に広がる光景を見て驚愕する。


 これはやばいな、丈二郎は直感した。


 流石にドラゴンがでるとは思ってなかった。

 レッドドラゴンがまさに炎を吐き出したところだった、そしてその先には巨大な岩人形が伸びている。

 あれは熊野の能力だ。


 もう一度能力を発動して移動できるかーいや、このタイミングだとその次の移動のタイミングが間に合わない。

 それに聡明が今自分と接触しているので移動に巻き込むことになる。

 二人同時にレッドドラゴンの火炎に飛び込むのはリスクだ。

 丈二郎が瞬間的に脳内で落下しながら計算をして対応に苦慮する最中、聡明と丈二郎は不思議な光景を目にする。



 明らかに意識をなくして動きようがない熊野の巨大な岩石の体が、レッドドラゴンの火炎放射が当たる直前にふわっと風に吹かれたのか、宙を横滑りするように位置がズレた。

 コンマ数秒後、熊野が伸びていた位置に炎が降り注ぐ。

 何かの衝撃が熊野に加わったというより、見えざる大きな手が掴んでずらしたというか、どこか物理を無視した調整として熊野の位置を置き換えた、そんな動きに見えた。


 丈二郎はすぐにその数10メートル横でなにやら大きな声で絶叫する戸隠彼方を見つける。

 両手に白兎木葉を抱き抱えながら何事か不明瞭ながら声を張っている。

 白兎ではないだろう、あの少年の恩恵が念動力のようなものだったのか、それとも今開花したのか。

 もしくは隠し持っていた可能性もあり得る。

 丈二郎は瞬時に思考を巡らせたが、いずれにせよこれで救助の目が出たことに変わりがない。


「聡明!」


 丈二郎が叫ぶと、次の瞬間、藤聡明が消えレッドドラゴンの頭上数メートルのところに移動した。

 そして丈二郎もそのまま消えて、何者かによって移動させられた熊野の横に着地する。

 意識はないが生きているようだ。

 そのまま間髪おかずに彼方のすぐ後ろに移動した。これで離脱の体制が整った。

 あとは聡明の力が及ぶかだがー。




 閃光が消えたと思ったら頭上はるか高くに日本刀をかかがけた藤特等と作務衣姿の八雲が現れたのを木葉は見た。

 そして次の瞬間、熊野先輩が謎の動きをして間一髪火炎放射を免れたと思ったら、特等も八雲も消えて、気がついたら八雲と熊野先輩が自分の後ろにいる。

 一瞬でさまざまなことが起きて木葉は混乱した。


 混乱したがこの人たちならそんなこともできるだろうと、不思議な納得感もあった。

 そしてその中心人物である特等の姿を探すとレッドドラゴンにむかって落下しているところだった。


 落下と同時に鞘を投げ捨て、抜き身の刀を両手で上段に構えるとそのまま落下の勢いのまま振り下ろした。

 レッドドラゴンも頭上からの敵襲を察知して大きく体を捻って巨大な尾で防御と攻撃一体の動きを繰り出す。

 藤特等が着地したと同時に凄まじい声量でレッドドラゴンが鳴いた。


 まさに地を揺るがす咆哮。

 木葉は次の瞬間、ドラゴンの巨大な尾が根元から切り落とされているに気が付く。

 断面は達人の居合い切りのようにどこまでも滑らかで、元々ふたつに分かれていたものがポロっと取れたように見えるぐらいだ。


 これが、藤特等、日本最高戦力の一太刀かと木葉は衝撃を受ける。


 レッドドラゴンは追撃をするかと思いきや、かなりの痛手をおった模様で、そのまま咆哮をさせながら大きく羽をふって飛び上がるとそのまま山頂にむかって飛び去っていった。


 外敵の逃亡により戦闘終了。

 木葉は自分が助かったことに気がついた。息つく暇もない、まさに電光石火の早業の救出劇だった。


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