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ひなた

誰かを好きになることと、その人を本当に大切にすることは、似ているようで違う。

あの時、手を離してしまったのは、自分の中にまだ足りないものがあったから。

それでも、人は後悔の中で少しずつ、愛し方を学んでいくのかもしれない。

一人の青年が“愛するということ”をようやく理解し、次に出会う人の笑顔を願いながら歩き出す。

霖太は静かな夜、ふと一人で過ごす時間が増えていた。食欲もなく、夜も浅い眠りを繰り返していた。部屋の片隅に積み重ねられた写真や思い出の品々が、彼の目に映る。花音との時間は確かに幸せだった。彼女の笑顔、二人で分かち合った小さな喜び、それらが今も霖太の心に残り続けている。


しかし、霖太は気づいていた。あの頃、花音を喜ばせることよりも、自分の仕事や未来のことばかりを考えていた。そして、最も大切な「彼女が本当に求めているもの」を見落としていたのだ。

人を愛するということは、ただ自分の思いを伝えることではない。どんな時でも、相手を喜ばせる気持ちがあることが、愛の本質なのだと、霖太はようやく理解できた。それは、未来の約束や優しい言葉よりも、毎日の些細な気配りや思いやりの中にこそ宿っている。

「花音、君が本当に求めていたのは、もっと温かい場所だったんだろうな。」

霖太は静かにそう呟きながら、窓の外を見つめた。もう遅いということは分かっている。彼女は翔真と一緒に新しい一歩を踏み出した。その幸せを願う気持ちだけは、どこまでも続くのだろう。

「もしもあの時、もっと彼女を喜ばせる気持ちを大切にしていたら、もしかしたら…」

そんな思いが、霖太の心を包んだ。しかし、過去を悔いても戻ることはできない。大切なのは、今後自分が誰かを愛する時に、花音のように大切な人を本当に喜ばせることができるかどうかだった。


霖太は深呼吸をして、静かに目を閉じた。愛するということは、想像するより難しいのかもしれない。それでも、自分が次に誰かを愛する時には、必ずその人の笑顔を思い描きながら歩んでいこうと心に誓った。

◆登場人物◆

土井霖太どい りんた

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