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夜はまた今度  作者: 下田尚志
道永蓮の昼
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道永蓮の昼7

「これ、どうしよう……」

 僕は周りを見て、トイレットペーパーを見つける。力一杯引っ張り、ちぎらずにそのまま体の水分を拭き始めた。

 ある程度水分を取り、見た目では髪以外はなんとかなった。匂いまで取るのは流石に無理だろうから諦めるしかない。どうせ先生もクラスメイトも興味を示さないだろう。

「気色悪いって……どっちがだよ。そっちの方が気持ち悪い」

 飛鳥くんは僕がいじめられているとき、いつも離れたところからこちらを覗いている。屋上での一件の翌日からいじめが始まったことなどから、おそらく彼がいじめの主犯格。二人にいじめさせるだけいじめさせて、自分は手を汚さないようにしているのだろう。

 いつも笑うでもなく、馬鹿にするでもなく、真顔でひたすら部外者のようにじっと見てくる。その姿が本当に気持ち悪い。結局なんでいじめられているのかもわからない。あの日僕を殴った理由もわからない。飛鳥くんの何もかもがわからなくて、気持ち悪い。

 授業の遅刻は確定しているので、気にせずゆっくり歩いて教室に向かう。時折先生とすれ違うが、彼らは二度見したあと足早に去っていく。わかりやすくて気持ち悪い。気味が悪いならこっちを見ずにさっさとどっか行ってよ。

一、二分ほど歩き、廊下と階段の境目に来たとき、教室に着いた。トボトボ歩いていたせいか、かなり時間をかけてしまった。

 教室の後ろのドアを開けて中に入る。開けた瞬間は数人に驚かれたが、僕だと気付いた途端すぐ各々の方向に向き直した。先生も特に言及せず授業を進めている。

 クラスの中で僕は、「よく授業に遅刻する不良」という認識らしい。ただいじめられている影響で遅くなっているだけなのに。一応何度か相談したことがあった。しかし対応が面倒臭かったのか相手にされず、逆に僕がヤバい奴にされてしまった。その恨みもあるので、関わった先生の授業は一切聞かずに独学でテスト高得点を取り続けている(順位は内申点込みのせいで、落とされているが)。先生からさぞかし気に食わない相手認定されていることだろう。ざまあみろ。

 自分の席に座り、教科書を開く。本来書かれていないだろう線が描かれている。まあいいか。どうせ家に帰ればもう一冊あるし、特に困ることもない。

 頬杖をついて窓から空を眺める。快晴とも曇りとも違う平凡な空。今の僕では、この景色に風情を付けられない。濡れた埃の匂いを漂わせ、風情を消すことしかできない。

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