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夜はまた今度  作者: 下田尚志
道永蓮の昼
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道永蓮の昼3

 ドアの辺りから物音がする。その途端二人は無言で離れた。先生の気配に感づいて席に戻ったのだろう。やっと終わった。

 まだホームルーム開始まで時間がある。確か文化祭がもうすぐあるはずだし、そのためだろうな。

「はい。じゃあちょっと早いけれどホームルームするぞ。休みはゼロだな。じゃあ今度の文化祭の話だ」

 やっぱり。興味無いし、無視していよう。僕にできることなんて無いし。

 教科書と外を交互に見ながら時間をやり過ごした。先生の話には全く耳を傾けていなかったので、なにを言っていたかはわからない。



 ホームルームが終わり、少しの休憩時間を挟みながら授業が続いていく。

 この高校は進学校を自称している。それだけあって勉強のレベルはまあまあ高いが、正直授業が適当な先生が多い。「仕事だからやっている」というのがよく伝わってくる。こんな教育で勉強に興味を持てる理由がわからない。稀にいる「本当に好きだから教えている」という人のものは面白いが、そんな人、絶滅危惧種だ。

 予習した範囲ばかりだし、どうせ復習するからそこまで真面目に聞かなくていいや。あいつらから逃げられる時間という風に思って過ごそう。幸い今日は移動教室も無いし、授業合間の短い休憩中に襲ってくるほどあいつらも律儀じゃない。一週間の中で一番落ち着ける日だ。


 授業は存外早く終わっていった。そして昼休み。あいつらの時間がくる。授業が終わると同時に僕は教室を出る。どこにいてもなにかされるなら、せめて人に見られない所がいい。

なるべく早歩きで廊下を進んでいき、教室から少し離れた位置にある個室便所に入る。後ろから付けられている気配もなかった。今日はやっぱりついている。

「あ、ご飯忘れた」

 折角久しぶりに落ち着いて食べられると思ったのに。持ってくること以前に、用意自体忘れていた。午後の授業はお腹を鳴らしながら受けるしかないか。

 上を向く。小さな豆電球が一つあるだけ。壁を見渡す。トイレットペーパーだけだ。だが、お金がかかっているおかげか全体的には綺麗だった。便座も温かく、思っていたよりも落ち着いていられた。

 ……暇だ。昼休みは四十分。携帯もカバンの中に入れっぱなしだし、今この狭い空間の中でできることが無い。しょうがない。寝るか。

 僕は両肘を膝に固定し、手で頭を支えて目をゆっくり閉じた───。


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