指原優の昼5
「そうだ、空也さん! 神社行きたい!」
この前のことを思い出した。レンくんと一緒に見た、したいことをさせてくれる拝殿。そこに行きたかった。やりたいことを、やりたい。
「お〜行く? いいよ。でもちょっと待って、せっかくだから蓮と行こう!」
「レンくん来たの?」
レンくん。同じくらいの年で、一番自分を見せられている相手。こんなこと言うのは正直変だろうだけど、私は彼に好意を抱き始めている節がある。話せる同世代の異性が一人だからってだけかもだけど。まあそんなの関係なく、一番悩まずに「友達」と呼べる相手だ。会えるのが楽しみ。
「わかった! じゃあ僕このあたりでブラブラしてるね!」
「うんごめんな!」
空也さんは神社と反対方向に走っていった。祭りの真ん中に最初から来れたら楽なのに。できるのかな? 知らないだけで。
「さ〜て何しようかな〜」
私は神社へ歩きながら、屋台を見渡す。何度かここに来て気付いたこととして、神社に近づくと近づくほど遊び系の屋台が多くなる傾向にある。どんな理由でこうなってるんだろう?
「お、何これ」
興味深いものを見つけた。小さいバケツを持った人たちが中にザリガニを入れていっている。今までこんなのあったけ?
「ねえ、これどんなの?」
店員さんらしい男の人に話しかける。二十代ぐらいの青年だった。身長は高いが空也さんほどではなく、代わりに筋肉がしっかりとついている。髪はマッシュでセンター分けをしており、なんかちょっとモテようとしている感が滲み出ている気がする。ただ、勾玉のネックレスはちょっと微妙だと思うからやめた方がいい気が……。
「やるか? ザリガニ釣り」
ザリガニ釣り、か。なんか屋台というより、どこかの遊園地で見たことある感じするな。
「えじゃあやる!」
「オッケー。じゃあはいこれ、釣り竿とバケツ」
黄色い小さいバケツと、糸の先に短い木の棒が付いた簡単な竿を渡された。餌とか着いてないのにこれで釣れるのかな?
「おじさん餌は?」
「おじさん⁉︎ 俺二十代だけど。まあいいや」
しまった。地雷踏んじゃった。こういうときは無視するに限る!
「これね、木の板をザリガニに挟ませて釣るの」
「なるほど!」
釣り竿を構え、木の板を水槽のザリガニに近づける。ザリガニは全く興味を示さない。
「お前下手くそだな」
誰かが私のバケツを見ながら言い放った。いや確かに下手だったけど、言い方あるじゃん!
視線をずらし、悪ガキを見る。髪を立てておでこを出し、顎にオレンジ色のマスクを着けている。特に、鋭く怖い目つきが印象に残る奴だった。男子高校生かな、制服着てるし。……ていうかこの制服、ネイビー色のブレザー。レンくんと同じ?




