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夜はまた今度  作者: 下田尚志
エピローグ
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エピローグ

 かなり広い病院だ。どこを見ても人が沢山いて、無関係の人がいるのではないかと疑ってしまう。

 俺の今回の仕事は終わった。あとはただ少しふらっと歩いていよう。薫さんもいないから、次の行動を勝手にすることもできない。

 待合席に座り、一息つく。病院はもうすぐ死んでしまう人が多い。そのせいで、俺がこの役職についてから、もう数えきれないくらいに通っている。

 ぼーっとしながら天井を眺めていると、いきなり大きな拍手が上がった。気になって首を動かし周りを確認する。広場のようなところに人が沢山集まっていた。

 立ち上がって近づいてみる。そこから見えたのは、グランドピアノだった。人が多すぎて拍手を受けたピアニストがどんな人かまでは見えなかった。病院でここまで人口密度が集中してしまっていいのだろうか。いくら少し隔離されたところの広場とはいえ、もともと人がかなり多い総合病院なのに。

 拍手が収まり、静寂が生まれる。その空気を察してか、ピアノを囲んでいる人以外も少し静かになった。そして突如として、その静寂はかき消された。ピアノから発せられる音によって。


「え?」


 音が鳴り始めた瞬間、背筋に寒気が走った。そして、そのあとすぐに心が落ち着いてくる。今は冬。いくら空調を整えても少しの寒さが残っていたのに、そんなもの、消え去ってしまったかのように暖かさが感じられた。赤く優しい太陽に当てられたようだ。

 頬に、また別の温もりが感じられる。これは自分から出たものだろう。まさか、また聞けるとは思っていなかった。俺が大好きだったピアノの音。いや、それよりも更に綺麗になっている。俺が昔いた『夕方世界』そのものを全身で感じている気分だ。どれだけ近づこうと頑張っても奏者を見ることはできない。けどこの音だけでもう、誰かは十分わかる。もういいや。気付かれたらダメだし。

「よかった。弾けるようになってんだな。道永」

 お前だけでも、生きていてくれてよかった。やりたいことができてよかった。お前は、親と向き合えたのか。本当に強いな。その強さの一片だけでも俺が関われていたなら、俺も生まれた意味があったと思える。いや、そんなもの望むのは傲慢か。いい。俺はお前にとっての悪者でいい。だからせめて、その音だけは心に留めさせてくれ。

「海斗くん終わった?」

 薫さんの声だ。どうやらあちらも仕事が終わったらしい。

「はい、終わりました」

 音楽の中から抜け出せず、目を合わせられなかった。薫さんもその状況を察したのか、いきなり静まり返る。少しの間ピアノの音だけ響いたあと、「綺麗な音」と言った。

「あれ、俺の大好きなピアニストなんです」

「そうなんだ。でも、わかるな。私も大好き」

 やはり、誰が聞いても心を動かされる完成度のものらしい。自分のことのように嬉しく感じた。

「さあ、行こう。ずっと聞いていたいけど、そうもいかない」

 そうだ。俺にはやることがある。ここで道永の音に浸り続けられるほど、今の俺に自由はない。これがきっと、永遠の別れになるだろうな。いや、永遠の別れにしたい。

 道永、お前と会うことがないことを、ずっと願っている。お前が苦しみを乗り越えたその先の中で、幸せを感じてくれることを強く願っている。

 最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました‼︎ 『夜はまた今度』堂々完結しました‼︎

 正直本編で出していない設定(飛鳥海斗の母親の話や大久保の正体など)もあるのでもしかしたらいずれそのスピンオフや、個人的に続編の構想もあるので、関連作は作るかもしれませんが、『夕方世界』をめぐるこの物語はこれにて完結です!

 またちゃんとした後書きは後日活動報告で書かせていただきますので、ひとまずこれでお別れです。長かったし、拙い文章が多いですし、私の考えが足りていなかった部分もあったと思いますが、ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました! 

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