道永蓮の夕方13
腕を伸ばして「んー!」という声を漏らす。そして空を眺めた。外はもうすでに真っ暗だ。ただ黄色い月だけが存在している。僕が、空也さん、優ちゃん、飛鳥くんと関わってきたあの世界は、もう遠い存在になってしまった。もはや、夕焼け自体もう見ることはないのではとさえ思ってしまう。それでも、いいか。
きっと帰ったらまた養父に殴られるな。今日はまともに勉強していないし。しょうがない。今日はとことん殴られてやろう。それでこっちの気持ちにも素直になれるかもしれないし。
「よかった。君が生きようとしてくれテ」
おじさんの声が聞こえる。油ギッシュな雰囲気漂う男性。しかしなぜか、こんな汚い風貌でも威厳を感じてしまった。
「あなたは?」
「今後どこかで、君に会うことになる存在ダヨ。まだ会うには早すぎたけどネ」
どこかで、この人と関わるのか。ちょっと嫌だな。でも、それが定めだったらまあ従うとしよう。
「なんで、話しかけたんですか? 今じゃないのなら」
「空也クンの努力が実っているところを見たかったカラ」
やっぱり、死後の世界の人なんだな。きっと、かなりのお偉いさんなんだろう。空也さんの努力が実ったのなら、よかった。空也さんに少しでも恩返しできたんだな。
おじさんは少し笑っていた。本心から落ち着いているのだろう。本当に慕われているんだな、あの人。
「『夕方世界』の存在意義は軽く証明された。これで、存続できる道は開いた。まあ少しの改革は必要だろうけどネ。本当によかった」
おじさんはもういなかった。わざわざ僕と話す必要があったのか真偽は不明。けど、あの世界に関わった人はみんな、優しい人なんだなと気付けた気がする。
僕はまだ死なない選択をした。その選択に後悔をしたくない。やるせない後悔を極力残さないで過ごしていきたい。どこまでも笑っているために。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました! これにて「道永蓮の夕方」完結、次のエピローグで『夜はまた今度』完結です‼︎
いやはや、やはりかなり長くなりましたね、まあ完成したものを分解して貼っていっただけなので一週間もかからずに全投稿したんですが。詳しい後書きなどはエピローグと活動報告で行いますのでひとまずここではこれまでで。
お付き合いくださりありがとうございます! エピローグまでぜひお付き合いください‼︎




