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夜はまた今度  作者: 下田尚志
道永蓮の夕方
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道永蓮の夕方3

「うぅ……」という唸り声を上げながら床を這いずる。壁に辿り着いてからは手足に力を入れて、寄りかかりながら立ち上がった。その状態のまま部屋から出てリビングに行く。

 いつも通りのリビング、と見せかけて前には無かった凹みが机や壁に見える。養父が全部やったんだろうな。当の本人は多分仕事に出かけたのだろう。暗転前には見えなかった眩しい光が、ハイライトの如く照らし出してきている。

 椅子に座り、机に突っ伏す。そして、腕に違和感を覚える。古いカレンダーをちぎっただろう紙が置かれいた。丁寧な字で「学校と塾に行け」と書いてある。

「あっそ」

 紙を握り潰し、ゴミ箱に叩き入れる。そして、食パンを一枚取り出して口に詰め込んだ。


 お風呂にも入らず、昨日のボロボロ姿のままで学校に向かった。どうせこんな格好でも、教師も生徒も何も言ってこないだろう。そういう奴らだから。陰でいろんなことを言うだけ言って、僕を嫌って終わり。それがあの学校だ。もうわかってる。

 登校の道中はただただ憂鬱だった。たまに道路や踏切が見えると、「あ、ここなら自殺ができそう」と考え、それについて五分ほど考える。それの繰り返しだった。歩き、電車に揺られ、また歩き、そして忌まわしき学校に到着した。

 時間はいつも通り。朝起きた時間自体が少し遅かったので、準備をせずに出ても変わらなかったらしい。予想通り、ネズミの死体を見る目を感じる。やはり、変わることはない。まあ、今回は僕の状態があまりにもカツアゲ後だからだと思うけれど。


 教室に到着し、僕は国語の問題集を開いた。エントランスにいたときになんとか課題は終わらせれていたので、今は復習に集中しよう。

 国語の問題。僕は一番この教科が嫌いだ。特に現代文の小説問題。芸術作品を芸術作品として見ない扱い方。もし必要な教科だったとしてもあまり納得ができない。一応何年間も学び続けているので正解を導くことはできる。ただ、その答えを正解にしたくない。心境を応える問題とか、なんで多種多様を許さないのだろうか。

「ホームルーム始めるぞ」

 あれ、もうそんな時間か。いつもそれまでにあの二人が何かをしてくる。でも今日は全くそういうことが無かった。いじめられたかったわけではないけど、微妙に調子が狂う。

 ホームルームが終わるとチャイムが鳴り、すぐに授業が始まった。そして、流れるように授業が進み、終わっていく。昼休みが来たらトイレに籠って過ごし、昼の授業も難なく流していった。本当に退屈な時間をただ退屈に過ごしていった。窓から見える景色も楽しめなかった。ただ、苦しむことも無かった。そのことが衝撃的だった。

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