道永蓮の夕方1
「道永蓮の夕方」始まりました! 遂に最終章の幕開けでございます。親との関係、いじめ、本来不必要に思えるほどのものを背負ってしまった蓮がこれからどう歩んでいくのか。最後まで亜付き合いいただけると幸いです!
それでは蓮のこれからをどうぞ。
飛鳥くんは突然消えた。そのあと十分ほどは公園に居座っていただろう。いじめっ子の二人が今まで見たことないほどの勢いで泣いていた。いじめ加害者だからただ最低な奴としか思っていなかったが、彼らは彼らでしっかり人間だったらしい。
二人を公園に置いていき、一人で先に家に帰った。高校から家までの間、僕はただひたすら無心だった。何度見ても感動していた好きな景色も、今日はただの背景でしかなかった。
家に帰り着く頃にはもう暗くて、ボヤッとした光が蝋燭のように目に映った。微かにクラシック音楽の音も漏れている。養父はもう帰ってきているらしい。なるほど。僕は怒られるな。
「ただいま」と小さく言いながらドアを開ける。入ろうとすると途端に腹部を狙って拳がぶつかってきた。僕は家の中に入ることなく追い出され、鍵をかけられた。殴られた衝撃で尻餅をつき、ただでさえ身体中痛かったのに症状が悪化した気がする。どうやら言葉をかける慈悲も与える気が無いのだろう。
今日も当たり前のように塾に行く必要があった。しかし、公園に連行されて殴られていたせいで、行くこともできなかった。そのことにご立腹なのだろう。こうなってはもういる場所は無い。僕はよろけながら立ち上がり、ゆっくり歩いてマンションのエントランスに来た。追い出されて家に入れなかったからとはいえ、勉強をしなかったらまた怒られる。どんな状況でも勉強をしないとあの人は許さない。
ある程度しっかりとしたマンションのため、エントランスにはソファーと机があり、ある程度集中して勉強できる。もちろん帰宅してくる他の住民とも出くわすが、基本的にその人達も睨むだけで何もしてこない。もうどうでもいい。




