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夜はまた今度  作者: 下田尚志
二人の夜
102/118

飛鳥海斗の夜中7

「海斗、なんで」

 啓太が口を開いた。まあ、死人がいきなり現れたらそりゃびっくりするだろうな。

 俺はしゃがんで啓太を見る。顔以外、いつも通りだ。まあ死んでからそんなに経ってないからな。変わらなくて当然だ。でも、啓太少し痩せたか? 俺も少し変わってしまったかな。どうせなら、前まで通りの俺を見せたかった。

 啓太は体を起こし、俺に抱きつく。

「幽霊じゃない。お前、生きてたのかよ」

 まあ、そう思うよな。こんな姿で現れたら。でも、ごめん啓太。

「俺は、死んだよ。どうゆう状態かわかんないけど、まあ幽霊みたいなものだと思う」

 少し残酷なこと言ってるかもな。でも、しっかり言わなきゃいけない。俺は死んだってことを。じゃないと、変な期待をさせてしまう。

「ありがとう今まで。玄弥もありがとう。俺のために、いつも一緒にいてくれて。怒ってくれて。見ていてくれて」

 こいつらが道永にいじめを始めたのは、俺のためだった。俺の苛立ちを、俺の自分勝手な怒りを、代わりに引き受けてくれていた。

 俺は啓太を強く抱きしめる。

「本当にごめん。俺の罪を、代わりに負わせていた」

 いつも誰かに救われてばっかだった。俺が背負わなければいけないものを、いつも一緒に背負ってくれていた。そんなにいい奴らに恵まれていたのに、なんで気付かなかったんだろうな。

「もう、いいよこんなこと。どんな理由があったとしても、悪いのは全部俺だ。道永に悪いところなんてない」

「でも、納得できない! あいつよりお前のほうが頑張ってたのに、苦しんでたのに!」

「苦しみも、努力も、比べるもんじゃない。その人なりの幸せ、苦しみがある限り、どっちのほうがなんて決めれないもんだ」

 俺は、啓太から離れて後ろを向き、道永を見た。

「今更、何を言ってるんだよ」

 道永が怒っているのも当然だ。今更綺麗事を言ったって無駄なことはわかってる。でも、どうせ最後なんだ。言わせてくれ。

「道永。ごめんな今まで。勝手に嫉妬して、勝手に憂さ晴らしの道具にしてた。こんなので許されるとは思っていないけど、ごめんなさい」

 頭を下げる。なんで、せめてこれを生きているうちにしなかったんだ。死んでから後悔しても、もう遅いのに。

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