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黒き邪心に薪をくべろ  作者: XI
25.ディザスター・レッサーヴァンパイア
137/160

25-3.

*****


 グリフィン議長に会うことができた。どこぞの誰かが話を通してくれたのかもしれないし、そうではないのかもしれない――どうだっていいな、そのへん。どうあれわたしはデモン・イーブルなのだから。


 出会いの場は奴さんの事務所だった。

 粗末な事務所だ、しかし、接客の応接セットは立派で――その立派なソファへと促された。


「わたしはだな、グリフィン議長」そこまで言って、デモンはコーヒーカップを優雅に口にした。「一般的な世情に飽いていて、だからこそ面白いことを探している。おまえはわたしの欲求を満たしてくれる要素たりえるのかね?」

「それはわからない――とでも申し上げておきましょう」五十は過ぎているだろう、きちっと整えられた口ひげがナイスミドルなグリフィンが言う。「私は国家の安寧を図ろうとする立場だ。その点については、与野党との立場はあれ、キルケー首相と一致しています」

「そこまでさらりと言えるのに、だったらどうして対立するんだ?」

「さんざんぱらの話、ポピュリズムは嫌いなんだとしか言いようがない」

「ああ、素敵だな。まさに説得力のある一言、一撃だ」


 彼の解が愉快なものだから、デモンは馬鹿にするように笑ったわけだ。


「なんだかんだ言っても、わたしは図りかねているんだよ、そのレッサーヴァンパイアという存在を」


 するとグリフィンは「ヴァンパイアだ。しかしレッサーヴァンパイアだ」と歌うように述べ――。


「実際のヴァンパイアよりは劣ってでもいると?」

「そうは言いません、が――」

「何が言いたい?」


 レッサーヴァンパイア氏とは、組める部分があるのかもしれない。

 そんなふうに、グリフィンは言って――。


「おまえはまともな役人ではないのか? そんなのをくそったれと呼ぶんだが?」

「デモンさん、と、いうと?」


 比較的、どうでもいいことなので、デモンは「――まあいい」と受け流した。「誰かの期待を集めているかもしれない存在……いいさ。わたしがじきじきにこの目で確かめてやろう」


 するとグリフィンは嫌な笑みを浮かべて――。


「レッサー、レッサー、レッサーヴァンパイア。デモンさん、あなたは彼を舐めているようだ」


「阿呆が。それがわたしのデフォルトなんだよ」デモンは露骨に顔をしかめた。「しかしだ、そんなことより――」

「そんなことより、なんでしょう?」

「もはや言わずもがなだが、聞いたぞ、レッサーヴァンパイアとこの国、村の若い女が愛しあっていたとな。しかし魔女狩りがごとく、つまるところおまえたちはその女を足元から焼いた。だからこそのレッサーヴァンパイアの怒り……興味深いと言っている」

「基本的に、レッサーヴァンパイアとは我が国に仇をなす怨敵なんですよ」

「知らんがなと謳っておこう。おまえたちは恐らく過ちを犯したんだ。であれば、報いを受けるしかない」

「それを理不尽とは言いませんか?」

「抜かせ、馬鹿男め。そこにあるのは他者的にも事実であり、わたし的にも当然の真実なんだよ」



*****


 ミライが聞いてほしいというので、話に付き合ってやっていた、ミライの家、テーブルを挟んで向き合いながら。ミライは事の深いところを聞いてほしいのだと言い出した。


「いろいろわかったよ。ミライの先祖――祖母らしい女が愛したレッサーヴァンパイアは、不思議なことに、ヒトのせいで害悪に見舞われたというのに、いまだニンゲンをそこそこ愛しているらしい、とな」

「で、あるとするなら――」

「ああ、そうだ。おまえの祖母が奴さんを愛したことについて、悪いと断ずることはできないんだよ」

「……悲しいです」

「しかし、それがホントのところだ」



*****


 レッサーヴァンパイアとは、いよいよ向き合った。

 黒く長い法衣、シルバーの刺繍が施された高貴としか言えない一着。


 ヒトにだけ矛先を向けるあたり、レッサーヴァンパイア殿は原則、優しいのだろう。そこにはきっと、いろいろと許せない、怒りを含んだ側面というかファクターがあって。だからある程度、攻撃の手を緩めないのだ、あるいはそれって綺麗で潔いことなのかもしれない。


 あまり好手ではない。

 街中にあって、こともあろうにレッサーヴァンパイアはわたし目掛けて突っ込んできた。


 残念だな、そうそう簡単に打ち崩せるわたしでははないんだよ。おまえは馬鹿だから、そのへん、わかっちゃくれない。だからこそ、おまえなんてどうでもいいとして、前向きに事を進めたいとも考えてしまうんだ。


 わたしはえらく強いんだぞ、なあ、レッサーヴァンパイア――。


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