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愛しの彼女は地味で大人しいのに  作者: バネ屋
1章 カノジョの魅力を知ったら
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#10 ケンピのお家



 土曜日の朝、いつもよりも早い6時に起きて、自分の部屋の大掃除をした。


 出しっぱなしのゲームや漫画や雑誌を片づけ、部屋中掃除機かけて、窓とか机やテーブルとか本棚とか片っ端から雑巾で拭き取って、ベッドのお布団やクッションとかもベランダで干した。



 自分んちに女の子が遊びに来るとか初めてのことだから、緊張してしまう。

 石垣とか男の友達ならしょっちゅう来るけど、こんな風に事前に掃除したりしないし。



 9時半になってからワラシを迎えに行く為に家を出た。


 途中でコンビニにも寄って、ペットボトルのお茶とジュースを購入してからワラシの家に向かう。


 ワラシの家のお店の前に到着すると、スマホでワラシに通話を掛けて「お店の前に着いたよ」と伝えると、ワラシは直ぐに出て来た。



 ワラシは昨日とは違う七分袖の黒いワンピースだった。


「おはよ。わざわざお迎えありがとうね」


「おはよう。 コンビニでジュース買うついでだったから気にしないで。んじゃ行こっか」


「うん!」


 ワラシはリュックを背負ってて、手には紙袋を持っていた。


 荷物を預かろうかと思ったけど、何となく手土産っぽかったしココで預からない方がいいのかと思って、手だけ繋いで歩き出した。



「ワラシ、今日もオシャレ頑張ったんだな。今日のも可愛いよ」


「ホント?ぐふふふ。 それにしてもケンピくんって「可愛い」って女子に向かって照れたりしないで普通に言うよね。やっぱり中身は女たらしのイケメンだよね」


「普通は照れるものなの? よく解らんけど、俺の場合は自分がブサイクなのよく分かってるからな。俺が「お前ブサイクだな」なんて言ったら、お前が言うな!って怒らせちゃうでしょ?。でも俺から見たら「可愛い」って「可愛くて羨ましい」っていう意味もあって、恥ずかしがる様な話じゃないんだよ。でもまぁ、俺なんかに「可愛い」って言われても普通の子は嫌な顔するけどな。喜んでくれるのなんて、ワラシだけだよ」


「ケンピくんの、いつもイケメン発言だと思ってたのに、まさかの超卑屈発言だったなんて! でも、ケンピくんの言いたい事が分かり過ぎちゃう私も多分同類だよね。私が男の人に「かっこいい」って言っても、多分「は?キモイんだけど」って迷惑がられるだろうし」


「いや、ワラシはそんなことないだろ?普段大人しいワラシがいきなりそんなこと言い出したらビックリはされるだろうけど、迷惑とは思わないと思うぞ。 それにワラシは俺と違ってブサイクじゃないし。ちょっと髪型変えただけで可愛くなったし。 俺なんてどう頑張ってもブサイクのままだしな」


「ううう、やっぱり中身女たらしのイケメンだぁ。糞ビッチの宮森さんがちょっかい掛けるの、分かる気がしてきた」


「いや、宮森さんは別にビッチじゃないだろ。短気で暴力ふるうのはマジうざくて糞なのは同意だけど」



 そんな話をしながら歩いていると、ウチに到着。


 この日は土曜日だから父さんも母さんも家に居る。ついでに小3の弟も。



「ただいまー」

「お、おおおおお邪魔します・・・」


 ワラシがキョドりだした。

 まぁそうだよな。


「俺の部屋、2階だから」


「う、うん」


 ワラシは靴を脱ぐと手で揃えて、ついでに俺の脱いだ靴も揃えてくれた。

 緊張してる割には結構冷静なのか?と思ったけど、廊下に上がると俺のシャツの端を握りしめて俺の陰に隠れるように小さくなっていた。



 リビングから母さんが顔を出して「おかえりー」と言うと、ワラシに気が付いた母さんは「ぬお!?お、女の子!? お兄ちゃん、女の子のお友達いたの!? もしかして恋人!?」と騒ぎ出した。


 母さんの騒ぐ声を聴いたのか、父さんもやって来て「お前どうした!? 女の子の友達なんて連れてきて!」と騒ぎ出した。



 ワラシは、顔を真っ赤にして縮こまって完全にフリーズしていた。


「うるさい!ワラシだよ!小学校から一緒だった井上フミコ!緊張してるのに騒ぐから固まっちゃったじゃん!」


「ああごめんなさい!ゆっくりしていってね!」


「ほら行くぞ?」


 そう言ってワラシの肩を強めにポンポン叩くと、ようやく動きだしたワラシが消え入りそうな声で「お邪魔します・・・」と言って頭を下げた。




 2階に上がり俺の部屋へ入ると、ワラシは床にへたり込んで「緊張したぁ~」と直ぐにいつもの調子に戻っていた。



「悪かったな。 俺んちも女の子とか連れて来るの初めてだから、母さんとか大げさに騒いで」


「ううん。ウチも同じだったしね。ビックリしちゃったんだね。 あ!そうだった。コレ今朝焼いたパウンドケーキなの。あとで食べようと思って」


 そう言って持っていた紙袋からラッピングされた包みを取り出した。


「お店で焼いたの?」


「うん。パパに教えて貰いながら私が焼いたんだよ」


「おお!?ワラシの手作り!」


「うん。初めてだったから見た目綺麗じゃないけど、味は良かったよ」


「手作りすげぇ!マジで楽しみ!」


 女の子の手作りお菓子とか、俺には一生無縁の夢物語くらいに思ってたけど、こういうところはワラシもやっぱり女の子で、俺のカノジョなんだよな。 テンションあがるくらい凄い嬉しい。



「ケンピくんには珍しくテンション高いね、ぐふふふ」


「おう!カノジョの手作りお菓子とか凄い憧れてたけど、俺には一生無縁だと思ってたからな!マジでちょー嬉しいよ!」



 元気を取り戻したワラシと雑談で盛り上がっていたが、本来の目的はテスト勉強なので、早速始めようとテーブルで向かい合って座り、勉強を始めた。




 勉強を始めて一時間もするとノックされて扉が開き、母さんが「フミコちゃんもお昼頂くでしょ? おうどんでいい? 食べるのお部屋のが良いよね?」とお昼ご飯の確認をしに来た。


「うん、ココで食べる。 ワラシ、うどんでも大丈夫?」


「うん・・・」


「フミコちゃんって、3丁目の喫茶店の子だよね? 中学生になって可愛くなったねぇ!」


「いえ、あの・・・その・・・」


「もうワラシが緊張しちゃうから余計なことは良いから!お昼お願いね!」



 30分もすると母さんから「お昼出来たから取りにおいで~」と呼ばれたので、ワラシは部屋に待たせてお昼を取りに行った。







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