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閑話:元聖王騎士団員、巻き込まれた

 緑がかった肌の色。

 僅かに尖った耳。

 他種族に比べて小柄で非力。

 一方で種族内でのネットワークは強く、情報伝達や組織戦に長けている。

 稀に魔力に特化した者が生まれる。

 それがゴブリン族の評価だ。


 種族としてのポテンシャルが低い訳では決してなく、次期魔王四天王との呼び声の高いとあるゴブリンメイジの冒険者クラスはA。

 それ以外にも、辺境国内を拠点としているとあるゴブリン族の4人パーティの活躍はめざましく、遺跡調査の分野における業績で国王より栄誉賞が授けられるという話も聞く。


「こんちわー」


「あぁ、どうぞ、お通りください」


 聖王国の関所を何らその身を確認されることなく素通りするゴブリン族の少女。

 少女のように見えるが、実際には30歳近く。ゴブリン族が他種族に比べて若く見られることが多く、彼女も例外ではない。


 ただ特異なのは、彼女はここまで走ってきている。市街地からこの関所に来るまで、早馬を走らせて1日はかかる。

 宿泊できる中継地はあるが、そこを経由していない。厳密には経由しているものの、休憩がてら水を飲んで一休みした程度で、本来の目的で中継地を使っていない。


 途轍もない身体能力を活かし、早馬で1日かかる道を半日以下で通り抜ける。それでいて、国境の関所では一度止まって歩きはするものの、まったく息を乱さず守衛にスマイルを振り向く余裕さえある。


「あれが魔王様以外に国際的に顔パスで移動できる数少ない1人ですか」


 私が生まれるより遥か前の主要国サミットで、世界の守護者であり抑止力でもある魔王は国境を自由に行き来できるようにするという条例が締結された。

 それは歴代魔王にも適用され、世界で唯一の例外であるとされていた。聖王様をはじめとした国家首脳であっても、国家間の行き来では相応の手続きと許可を得る必要がある。


 その例外に追随する、個人。

 ゴブリン族の麒麟児。


「あれって失礼ですね。アーク・パインブックって名前がありますし、一応企業の代表も務めているんですけど、って」


 おっと、何の気なしに呟いていた言葉が聞こえていたようだ。

 というより、何年も前のことだが私の顔に覚えがあったのだろう。

 私としては1日たりとも忘れたことがない。


 かつて模擬戦で引き分けたかと思えば、黄金郷の解決の報で一躍有名となり、更には過去最大級のスタンピードで魔王様とともに最前線に出たという。


「昔、あなた模擬戦で私と引き分けましたよね!うっわー懐かしい!!」


 私は以前、聖王騎士団に所属していたが、とある事情で騎士団を辞し、今では聖王国内で小さく商売をして生計を立てている一般人。

 対して、彼女は世界的な有名人であり、ことこの関所という場であれば役人が数々のルールとともに覚えなければならない必須事項。当然、その規格外さも知っている。


 そんな魔王様と同列に扱われる彼女が「引き分けた」と言ったことで、守衛たちがざわめく。

 あれから鍛錬して強くなったし、今でも衰えてはいないにせよ、彼女とは比較にならない程度であることを自覚している私は若干気まずい思いをした。


「お前、あのアーク氏と引き分けるほど強かったのか」


「いやいやいやいや、昔の話だって。今の私じゃ足元にも及ばないって」


 顔馴染みの守衛の疑問は最もだし、私も全力で否定する。もはやステージが数段階違うのだ。同列にするなど烏滸がましい。

 まさしく昔は昔、今は今だ。


 ほら、興味のあることは顔を突っ込むことで有名な彼女は、私に再戦を申し込もうとしていない。あくまで昔のちょっとした知り合いに声をかけているだけ。私の強さに興味がないことがよくわかるし、わかってくれて助かる。


 私の今の強さは、かつての騎士団長に及んでいない。

 騎士団長はよく「俺より強い輩がどんどん出てきて困る」などと零していたが、それは世界の守護者と称される魔王や、とんでもない才覚と努力で理外の強さを持つに至った美しき皇帝という、例外中の例外を相手取ってのこと。

 ある意味では騎士団長は「壁」なのだ。身体能力や魔力に優れる竜人族、魔人族の猛者でさえ、騎士団長には及ばないのが事実なのだ。


 つまり、私は壁を超えることが出来なかった。騎士団を辞したのはそれが理由ではないが、ドロップアウトしても良いと思える一因になっているとも言える。


「へぇ、じゃあ今は騎士団を辞めてご実家の事業を継いでいらっしゃるんですね」


「あぁ、リベンジを果たしたい気持ちはあるが、そうもいかない事情があってな。騎士団との繋がりはあるが、現役からは引退だ」


「なるほど、どおりで姿をお見かけしないわけですね」


 ちなみに、商人となった彼女が商談と称して聖王城に何度も訪問しては無茶振りしているというのは有名な話だ。国家的にも利益のある話なので厄介者扱いされてはいないが、嵐を呼ぶ用注意人物と見做されている。


 彼女は急いでいたので高々10分程度の会話。終わったら早々に走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。尋常ではない体力と足の速さに舌を巻く。恐らく聖王国の中心地までほぼノンストップで走るのだろう。


 もっと舌を巻いたのは、これを契機に私もちゃっかりと彼女の事業に巻き込まれることになったことだ。

 更なる未来には私が彼女の聖王国での事業におけるコアメンバー、言ってしまえばパインブック社の西欧各支社長に据えられてしまい、騎士団時代には雲の上の存在であった聖王様との交渉ごとをすることになる。


 そんな未来が待ち受けていることなど、今の私には知る由もなかったが、懐かしい彼女との会話を終えて、のんびりと関所を通過するのだった。

移動について。

道中、魔獣との遭遇の可能性があるため武装は必須です。移動手段によっては護衛を雇うこともあります。


主な移動手段は徒歩か、馬車。

馬車の移動速度は荷台の強度や大きさ、車輪や馬の質によって大きくブレがあり、概ね時速20km〜50kmあたり。馬も魔力で身体能力が強化されているので、現代で考えられるより速度・耐久力が上になっています。


速馬での移動になると、それなりに休憩を挟みますが

概ね時速80kmはくだらない想定です。


種族特性として健脚なエルフ族は、速馬並の移動速度を出せます。

アークはゴブリン族でありながらエルフ族を上回る移動速度を出せます。が、アークと同じく黄金郷で壁を突き破ったエルリィには若干負けます。


また、風魔法の使い手は移動補助で風魔法を用いますが、そもそもあくまで補助にしか使えず、国家間の移動に耐えうる魔力を持ちません。高位魔法使いであっても、小規模な追い風のような形で徒歩を楽にする程度です。


一方、魔力に優れる魔王は低空飛行、魔王を凌駕する魔力を持つ五郎は吸血鬼顔負けの高空飛行での高速移動が可能です。


徒歩<馬車<速馬≒エルフ族<アーク<エルリィ<<<魔王≦五郎


アンドリュー「僕は走ったり魔力で飛んだりは無理ですね。素直に馬車に乗ります」

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