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教会組編07:神造聖女の選択の結果と、それぞれの結末

 私が少女の怪異にとった選択肢は「倒さない」「助ける」でした。


 ゴローさんの見立てのとおり、あの時の私は非常に怒っていて、また苛立ってもいました。マザーを害したことを許せず、かといって少女が怪異になった経緯を一目見て悟ってしまったことにより怒りの遣り場を見失うことに苛立ちを感じていました。


 アバターとはいえ、管理者の立場としては特定の存在に過度に入れ込む行為は不適切です。が、ゴローさんの選択肢は私の決意を固める契機となりました。


 今回は私の我儘を通す。

 その決意です。


 怪異を倒さない。

 このままでは王都の住人への被害が拡大するので、怪異に私の生命力を分け与える。

 怪異が目的を達成したあとに人類を害する存在に進化するようであれば、責任をもって怪異を倒す。


 昏倒の被害者は約200人だったと聞きます。

 単純計算で800人分の生命力を分け与えることになりました。

 管理者のアバターであり、竜種を超える生命力を宿すとはいえ、その行為は相当な負担となり、それこそ私が昏倒する一歩手前まで疲弊してしまいました。


 生命力を与えられ終わった怪異は、目にそれこそ生気が宿り、まず涙を流したそうです。朧げに「お姉ちゃん」と呼ぶ声が聞こえたような気がしました。

 怪異の権能は消え、それが別のものに置き換わっている可能性はあるにせよ、少なくともその時はただ泣きじゃくる子供でしかなかったと、ゴローさんが仰ってました。


「成程。とすると、元々の手段で1000人分の生気を吸い終わっていたとしたら、正しく人類の脅威としての怪異が成誕していたかもしれないですね」


「どういうことですかドライ?」


「キザな言い方ですが、あなたの愛が怪異を怪異性から解き放ったということですよ。とはいえ、怪異であることは間違いないですから、教会での保護という形であなたが監視するということも正しい選択と言えるかと」


 妹からはそうした講評を受けました。

 そうですね、私の決意がそうした結果をもたらしたというのであれば、それもまた良いことです。素直に喜びたいと思います。



・・

・・・


 さて。

 昏倒事件から数ヶ月が経ちました。

 それぞれの結末を述べますと。


 まず、アンドリュー準司祭は見事に役目を果たしてくれました。

 マザーを被験体にして生気を取り戻す手助けとなる回復魔法の改良版を開発し、それを王都内の治癒術師に拡散しました。


 教会と王室、ギルドなどの組織との連携も滞りなく済み、貴族含む王都の全人口から被害者数を把握するに至りました。

 その上で冒険者ギルドマスターが被害者リストをもとに教会の治癒術師を的確に派遣して、アンドリュー準司祭が開発した回復魔法の改良版を被害者に施しました。

 目覚める早さに個人差はあるものの、昏倒による後遺症のようなものは誰1人として発生しませんでした。


 この功績でアンドリュー準司祭の名声が更に上がり、中央ではそろそろ司祭に昇進させるべきという声が上がっています。これ以上偉くなりたくないとは準司祭の談ですが、諦めざるを得ないのではないかと思います。


 次に、ゴローさんは本件とは無関係の体をとっていますが、内々の依頼ということで冒険者ギルドおよび商業ギルドからは多額の報酬を得ています。


 私としては彼が力を振るう、振るわないにかかわらず、居てくれると非常にありがたく力強い存在です。本体が異世界転移させたことを強く感謝したいと思います。

 事業も順調なようで、ギルドとの板挟みになるにせよ今後の発展に期待したいところです。


 で。

 最後に私にとって非常に重要なこと。

 怪異が居た貴族の邸宅の住人についてです。


 結論を言うとお取り潰しになりました。

 具体的には爵位と財産を剥奪の上、国外追放。ほぼ死刑宣告に近い措置です。


 怪異となった少女は、そこの令嬢です。

 立場としては末っ子。

 具体的には語りたくありませんが、両親や兄姉、果てには使用人からも酷い虐待を受けていたようで、地下牢に放置されて衰弱死。


 この怪異は魂が受肉した存在なので、放置された遺骸は別にあります。

 死亡して約10年くらい経過し、肉は腐敗し融けきって、骨だけになった状態の遺骸が発見されました。

 ゴローさんの報告でそれが事件後に発覚してから審問が行われ、過去の虐待死が露呈し、それが悪質に過ぎると司法に判断された結果が、爵位剥奪の上の国外追放。


 既に伴侶を得ている兄姉はいずれも離縁ののち追放を命じられるなど伴侶から見捨てられ、同じく国外追放されました。


 幸いなことに、怪異には過去の記憶がありません。

 虐待されていた事実を忘れているなら、無理に思い出させる必要はありません。


 おっと。

 本当の意味でこれが最後です。


 受肉し完全体に至った怪異は教会が引き取ることになりました。

 ええ、全ては私の責任において。


 生気を吸い取る権能はなくなりました。

 今のところ、それに変わる権能の存在は確認できません。

 受肉した体の機能はほぼ生前と同一と思しきものです。元が怪異となった魂なので、体の機能は同じでも質が違います。具体的には私たちのような神のアバターに近いものです。肉体の質は常人以上、しかしちゃんと寿命はある。


 まぁ基本的に人と同じであるなら、あとはどう育つかです。その教育環境や、どう生きるかについて、全責任を私が持ちます。


 とはいえ、普段はマザーについていることの方が多いですね。彼女は私のことを姉、マザーのことを母と呼んでいます。


 満更でないのがマザーです。

 彼女は60歳あたりですが、40歳前後の若々しい見た目をしています。聖職者としての人生を歩み子のいない彼女にとって、母と慕う存在はとても嬉しいものなのでしょう。だからこそ、マザーと呼ばれていますが。


「まぁ、うん、拾ったからには最後までちゃんと責任を持つように」


 とはゴローさん談。

 失礼ですね、と言うと、


「異世界ジョークだよ」


 うん、意趣返しされてしまいました。

 私のやるべきことは、女神のアバターとしての使命を果たすことと、この子を立派に育て上げることです。

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