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教会組編03:オーク族の準司祭、旧友に事情を話したり聞いたり

 僕はアンドリュー。


 オーク族の準司祭です。


 とはいえ、ほぼ司祭(部長級)のような扱いをされていて、他に司祭級がいるにもかかわらず辺境国教会のトップに据えられています。


 正直納得がいかないけど、そこは置く。


 さて、唐突だけど教会の運営について言及しておきます。生々しい話、お金。


 詳しい内訳は割愛するけど、教会の運営費の大体半分は寄付金。あと半分あるとして何だと思いますか?


 正解は学校運営。

 学校運営にあたっては、その学校が設立されている国からの補助が出る。これが各国バカにならない額の補助で、特に6歳から15歳までの9年間の教育について強く力を入れています。


 知る限り例外はないです。

 民から税金を徴収し、それが子供達の教育に還元され、教育の対価にその恩恵を教会が多く預かっています。

 教会が教育のシェアを大幅に食っているこの状況が健全であるかどうかの判断はしづらいところですが、長く教育に携わってきた女神教は学校運営のノウハウのレベルが高く、国家の依頼で学校運営をしています。というか、僕らが学校運営している民間組織にノウハウを伝授しに行くくらいです。


 ということで当然、辺境国でも例外ではありません。国家に運営委託された学校が相当数あります。

 僕は準司祭として辺境国王都を中心に5つの学校運営を任されています。立場的には理事。

 各校の定期的な視察や、辺境国の役人との運営面談、それにかかる資料作成の指示と取りまとめなど、その上で教会の運営をしなければならず、管理職として思った以上に忙しい日々を過ごしています。


 まぁ収入の内訳には回復魔法や洗浄魔法の使用もあるけど、そこはお値打ち価格としています。学校運営で多くの補助をいただいていますしね。バランスは取らねば。


 学校運営の大変さについての詳細はともかく、何故このお話をしたかというと、その卒業生のひとりが現職の教員とトラブルを起こしたという話を聞いたからです。


「聞く限りだとお礼参りみたいなヤツか」


「?なんだいそれは」


 来賓用で他と比べて少し格式の高い調度品のある部屋で、僕は訪問してきたかつての仲間であるゴロー・パインブックと話をしていた。

 多分本題があるんでしょうけど、まずは簡単な近況報告けらという感じです。彼とは長い付き合いですが、異世界転移者であるからか僕の知らない概念なり価値観なり、それこそ僕が尋ねた聞き慣れない言語について聞くことがあり、そうした時に新鮮味を感じます。


「今までお世話になった恩師に礼をするんだけど、転じて自分に不利益を与えた教師に報復する意味合いとなっているんだわ」


「うっわ、やだなそれ」


「まぁ別に教師と生徒に限った話でもないさ。俺だってどこでどういう恨みを買われているかわかったもんじゃないんだけど、そちらはそれで終わる話でもなさそうだな」


 その通り。

 聞いた話だとその卒業生と教員は義理の兄弟だそうです。

 義弟である卒業生は白昼堂々と職員室に乗り込んで義兄に詰め寄ったそうだ。「お前のせいで姉さんは」とかそういうことを言っていたが、当の義兄である職員は何を言っているのか意味が分からずきょとんとしていたそうです。


 ほどなく怒りの形相の義弟は突如として意識を失い倒れたそうです。倒れるだけならまだ良かったかもしれない。意識を取り戻す兆候が全くないとのことでした。


 起こったのは昨日の昼間。

 現場ではどうにも解決できず、エスカレーションされて僕が明朝行くことになりました。朝の段階で教員に話を聞くも特に問題はなさそうで、件の卒業生はやはり意識を取り戻していないため全く何もわからない。


「シスター・マザーを経由して市井でそういった突如昏倒して意識を取り戻さないケースが他にあるのか調べてもらっている」


「あぁ、だからシスター・マザーは不在なのか。うん、俺が教会を訪ねたのもその件。昨日から、決して多くないけど少ないとも言えない件数の昏倒事件が発生している。平民である以外の共通点はないし、冒険者ギルドも商業ギルドもこれが魔術的なものかどうかを判別する手段を持たない。だから教会にお伺いを立てに来た」


「ってことは」


「冒険者、商人いずれも昏倒した人がいる。ので、これは両ギルドも重く見ている。俺が来ている理由もそこだよ」


 かつてのパーティメンバーであり今は商業の道を進むゴロー・パインブックはため息をつく。


 彼の妻であり彼と事業をしているアーク・パインブックはほぼ商業に専念しているが、彼は冒険者を引退しているもののギルドとの繋がりを切ることが出来ず、たまにギルドの依頼をやることになっています。


 まぁ冒険者としての実績は十分、強さはあの魔王と同格の夫婦を完全に冒険者から引退させるのは、冒険者ギルドも商業ギルドも惜しいと見做したのでしょう。ゴローだけ兼業というのも相当譲歩したと見て良いかもしれません。


「昏倒してちゃんと目覚めた人って、現状いますか?」


 と問うのは、一応は僕のお付きといつ立て付けになっているシスター見習いのアインス。

 女神のアバターであり、僕は実質彼女のお目付け役だ。もっと言うと、様々な怪事件の解決の主体が彼女となります。


「いないな。まだ昏倒してからそこまで時間が経っていないってのもあるけど、こうも同時期かつ多発的に起こっているとこれは人為的なもので、最悪目覚めない結果になる可能性も想定している。だから早期の対応のために協力を仰ぎたいというのが両ギルドの意向であり、このままならそのうち王室からも声が上がるかもしれない」


「ええ、その判断は正しいと思いますよ。原因の特定は現時点で難しいですが、例えば呪いだった場合は時間の遅れがそのまま危険に直結します」


「あぁ、やっぱりそういう類か、まぁ呪い対策は黄金郷関連の影響でかなりノウハウのある世界だから、原因はそこじゃないかもしれないが」


 ゴローは再度ため息をつく。

 今の彼の立場は両ギルドの伝書鳩だけど、最終的には問題の解決に足を突っ込むことになる。両ギルドもそこを期待している筈です。それを想像して憂鬱になってるのでしょう。


 一方でゴローに質問したアインスは首をかしげて考え込んでいるようです。女神の知識と力を持っていても、デチューンした上で制限をかけているのでは、僕らよりアドバンテージがあっても何でも解決とまではいかないのでしょう。


 怪事件に対しては、基本的に僕が窓口となって話を聞き、アインスが実動の形になっています。必要に応じて僕やシスター・マザーが情報収集などの実働に回ることもあります。


 だから、この流れはある意味では「いつものこと」に該当します。まぁそんなに頻繁にあることではないですが、アインスを旗印に僕とシスター・マザーの3人で怪現象に挑むことがほとんどです。たまに誰かの力を借りつつ。今回はゴローという戦略面での頼もしい味方がいます。


 ちなみに、その怪現象の解決による名声はすべて僕に集中します。僕が解決したわけではないのに僕の手柄になる状況には申し訳なしかないですが、これも役目と割り切るしかない。割り切るしか、ない。うーん。


 と考えていると。


 バンっ、とドアが勢いよく開かれました。

 入ってきたのはアインスと外見年齢のさほど変わらない、若いシスター。

 急いでやってきたからか、息を切らしています。


「アンドリュー準司祭!大変です!シスター・マザーが街中で倒れて冒険者ギルドの救護室に搬送されました!」


「は?」


「えっ?」


「っ、どういうことですか?ご存じな限りで結構ですので説明をお願いします」


 ゴローどころか、アインスでさえも、若いシスターの言葉の内容が想定外だったからか驚きの声を上げた。

 僕も驚いたけど、とりあえずは若いシスターに説明をお願いした。そうでなければ、僕も気が動転したきりになっていたかもしれない。


アーク「へぇ、学校。学校ねぇ」

ゴロー「妻がアップをはじめたようです」

アンドリュー「」


誤字報告ありがとうございます。

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