教会組編02:神造聖女、うっかりやらかしてしまう
引き続き、女神教シスター見習い兼、女神のアバターのアインスです。
さて、普段私は聖王国から離れた辺境国の教会本部にて日々のお勤めをしております。
朝の清掃、朝食の準備、礼拝に訪れる信徒の案内、準司祭の祈祷補助などなど。
シスター見習いは私だけではないですから、チームごとにセグメント化されたお仕事をこなしています。
基本的な私のチームは早番で、夕方は規律を逸脱しない程度に自由な時間を過ごすことができます。
辺境国王都の教会で私が女神のアバター、つまり女神そのものであることを知るのは準司祭のアンドリュー、シスター歴の長いマザー女史のみです。
本部の上層部には知っている人が多いですけどね。私個人は別にバレてもいいのですが、女神教は偶像崇拝の宗教を長いことやってきたのです。いきなり本物が現れてしまえば教義の根幹や教会の在り方が崩れてしまう恐れがあります。なので、基本的には秘密にしています。
私はアンドリュー準司祭のお付きではありますが、同時に彼は私のお目付け役です。
それはシスター・マザーも同様。
言ってしまえば私のブレーキ役です。
下界の様式を理解していても、そうしたものが染み付く生活をしていたわけではありません。
分霊としてポンと生み出され、女神の知識や力を有し、それを制限ないしはデグレードさせた上で受肉し、下天した。
それが私の生のはじまりです。純粋に年齢で言えばまだ幼児のようなものです。
活動期間が短く、常識を知っていても行動が伴っていない。
そんな私が地上で活動するにあたって、多少世間知らずであってもある程度許容される「見習い」という立場は、非常に都合が良いのです。
その上で、アンドリュー準司祭とシスター・マザーは私のフォローに回る形になっています。
なので、多少の粗相は許容いただきたく思います。特に、女神本体の承認により異世界転移したあなたには。
「・・・うす」
前言撤回。
許容しろなんて傲慢が過ぎますね。
ええ、本当に申し訳ありません。本当に。
水の入ったバケツを転んでブチ撒けてしまうとか、テンプレにも程のある粗相です。うっかりうっかり。いや本当に反省していますよ。まだ汚水でなかったのが不幸中の幸いです。重ねてお詫び申し上げます。
どうにかしたいのですが、ここで私が使える力としては洗浄魔法のみになります。他は使うと立場が危ぶまれるので、お召し物をお着替えいただくことになりますが。
「いや、念のため洗浄魔法だけかけてもらえますかね?他はどうにかするので」
承知いたしました。洗浄魔法チンカラホイ。
え、何を笑ってるんですか?そんなの魔法の掛け声ではない?粋な異世界ジョークですよ。
あーなるほど。
魔法で火と風を混合した温風を浴びて乾かすんですね。
なるほどなるほど。
しかし器用ですねー。
魔法のブレンドってかなりの高等技術、確か高位の魔術師でも初級魔法のブレンドは相当な難易度と認識していますが。
「練習しまくりました」
勤勉なのは良いことです。
おっと、そう言っているうちに早々に乾きましたね。さすがです。
ところで、どうしてここにいらしたんですか?事業は好調で、主人からのオーダーは順調に進んでいるという認識でしたが。
「あぁ、今回は全然別件なんだ。アンドリューに取り次ぎ願いたいのだが、どうだろう?シスター・マザーと、あとアインスさんもお付きのシスター見習いとして同席いただきたい」
あー、なるほ。
多忙な筈のあなたがここに来て、そんな真剣な顔をして3人を招集したいということは、案件ですね。
承知しました。
が、準司祭もシスター・マザーも日々の務めに係る外出をしておりまして、大変申し訳ないですがしばらくお待ちいただけないでしょうか。
ええ、別室にご案内いたします。
私の本日の務めはそろそろ終わりますので、あとでお茶菓子とお茶を用意してお伺いします。
なお、ちょっと帝国での出来事について根掘り葉掘り聞いておきたいところですが、そこは自重しておきましょう。
「ん?根掘り葉掘り?」
おっと、キョドりましたね。
心当たり、自覚があると見做します。自覚がなければ、あなたとは言えどグーパンするところでした。乙女の鉄槌と言い換えても良いでしょう。
帝都には私の後継機がいます。
有り体に言うと妹です。名をツヴァイと言えば、あなたならご納得されますね。
帝国での行動を余さず見ていたわけではありませんが、お見かけした際に誰と居て何をしていたのかくらいは報告を受けています。
おっと、ヒントはそこまでです。具体的にどこにいるとか、何をしているかは開示しません。あなたなら彼女にもいずれ会うこともあるかもしれませが。
まぁ、それだけです。
今はちゃんと自覚があるならそれでいいです。
とりあえず、お務めを終わらせてきますので、お悩み相談があるならその内容を考えておいてくださいね。こう見えてシスター見習いの立場ですから、それくらいはできますので。
教会組編の執筆は終わり、07+エピローグとなります。
隔日ごと0時の予約投稿済みです。
1話の長さはさほどありません。
引き続きお付き合いいただけると幸いです。




