教会組編01:神造聖女、世界の仕組みを一部開示する
私はアインスと申します。
私の出自や現状、そしてこれからのことを語るには、まずこの世界について語らねばなりません。
世界は合計で24あります。
世界というより宇宙の数ですね。
宇宙に文明はひとつの星にしか生まれません。
理由は管理者のキャパシティがひとつの星で限界だからです。
また、類似の理由ですが生物が生まれ生きる環境を構築するのもひとつの星が限界だからです。
そう、世界にはそれぞれ管理者がいます。
管理者は文明の生物に「神」と呼ばれる場合が多くあります。神でないにせよ、それに比較的近い概念です。
管理の範囲は星の文化や文明、ひいてはそこに住まう者たちが主たるものです。あぁ、後述する星の体調も対象となります。
とはいえ、何もかもを思いの儘にするのではなく、あくまでそこに住まう者たちの自主性に任せ、どうしようもない場合にのみ軌道修正をするというものです。ここの介入度合いだとかスタンスは管理者次第です。
この世界の管理者は原則「世界に住む者たちに極力介入しない」を主軸に裏方で世界の脅威を取り除く方針でしたが、どうやらスタンスを変えたようで、だからこそ私のような存在が生まれることになったのでしょう。
私はその管理者の分霊を受肉させ、かつそこに住まう人々の基準に合わせて能力をデグレードさせて下天した「アバター」です。
管理者の知識を有していますが、開示可能な情報量に制限をかけています。なので、例えば世界の真理を誰かに語るにせよ断片的なものにならざるを得ない程度の権限しか持っていません。
力も同様ですね。かなりデグレードしています。神の力は星の生物に比べものにならないくらい強力なものです。デグレードさせないと私の存在そのものが世界の脅威になりかねません。
そんな私の役目は、俯瞰して世界を見ることしかできない管理者の代わりに、下天して人として世界を体感して世界に関する問題があればそれを解決、どうしても解決が難しいものがあれば管理者にエスカレーションするというものです。
アインスとはδ世界におけるとある語で「1」を指します。製造番号1という意味合いです。
現時点でドライ、つまり製造番号3までのアバターが出来ています。それぞれが世界に散りばり世界を体感しています。ツヴァイは帝国、ドライは魔王領です。
かくいう私は今、この世界で最大勢力の宗教である「女神教」のシスター見習いとして活動しています。経緯としては、過去最大級の攻撃性バグ現象である「スタンピード」に対抗する戦力として派遣されたというものです。
具体的には、この世界における特記戦力3名の補佐ですね。私は今後も産まれるであろうアバターの中で最も回復能力に秀でた個体です。
過去最大級であろうと、スタンピードにより生まれた魔獣の処理に管理者が介入するわけにはいきません。あくまでこの世界に住まう者が処理しなければならない事象です。
私の派遣や、私の行動は、管理者そのものの介入とは言い難いものです。と言い張るのもかなりグレーゾーンかもしれませんが、特にペナルティは無いようです。
女神教の上層部に出自を明かした上で女神教の後方支援を確約させ、私自身は最前線で特記戦力の回復役を担い、最終的にスタンピードは終結しました。
ここで言う終結とは、この世界の住人が魔獣を殲滅させ、同時に女神がスタンピード発生の要因となる次元の穴を閉じることを指します。
さて。
話題は逸れますが魔獣が現れる原因は恒久的に生じる次元の穴によるものです。残念ながらこれを防ぐ手立てはありません。
星の体調と呼ぶのが適切ですかね。人の体でも、健康に過ごしている筈が免疫機能の一時的な低下や外的要因により風邪をひくことがあるでしょう?それと同じようなものです。
つまり、魔獣は細菌、冒険者など魔獣を討伐する者は免疫機能に例えることができます。
ちょっとした体調不良は頻繁に起きますが、稀にスタンピードのような大規模な体調不良が発生します。スタンピードは大量発生した細菌を免疫機能が抑え込み、同時に神という医師が原因を除去する形で対応していることになります。先般のような大規模なものだと、例外的に私のような抗生物質の手を借りることになります。
私のような存在の投入は初の試みでしたが、成功したのは僥倖でした。まぁ前線で頑張ってくれた規格外の免疫機能の奮闘あってのことではありますけど。
更に話を逸らしますと、私たち女神のアバターは「聖女」と区画されるべきものですが、厳密には「神造聖女」となります。
神が造りし聖女。ということは、神が造っていない聖女もいます。
初代聖王がそれに該当します。表現に悪意があると捉えられると困りますが、言うなれば「天然聖女」です。何かの介入なしに生まれた、法力に優れた才気ある女性を指します。行動が天然であるとか、そういう意味合いはございません。まぁ初代聖王は猪突猛進で一途な性格でしたが。
話を戻しましょう。
過去最大級のスタンピードという緊急案件を乗り切った私は恒常任務に戻ります。
繰り返しますが、私たちの役目とは「俯瞰して世界を見ることしかできない管理者の代わりに、下天して人として世界を体感して、世界に関する問題があればそれを解決。どうしても解決が難しいものがあれば管理者にエスカレーションするというもの」です。
私はその活動の場を、本体である管理者を崇める宗教組織「女神教」に定め、所属することとしました。
前述のとおり、スタンピード解決に際して女神教の幹部には私が女神のアバターであることを伝えています。
その上で、私はシスター見習いの立場にいます。黄金郷の消滅やスタンピード解決の立役者としての功績で若くして司祭候補となっているオーク族のアンドリュー準司祭、それを補佐する壮年のシスター・マザー、を補佐する役目を私が担っているという建て付けです。
が、実態としてアンドリューとマザーは私のお目付け役です。アンドリューの活動拠点である辺境国教会本部を中心に、私たちは世界の根幹に係ることに関わっていくことになります。両名はご愁傷様ですが、一蓮托生ということで何卒。
ということで、前置きが長くなりましたが、今回お話することは世界の根幹には係らないものの、世界にとって重大な災厄になるかもしれなかった出来事についてです。
お付き合いいただけると幸いです。よろしくお願い申し上げます。
誤字報告、大変助かります。
自分で決めている投稿時間を大幅に過ぎての更新となりました。セットせず寝落ちしてしまいました・・・
見切りで新編開始します。長くはならない想定です。




