辺境国国王の受難
ここから新規短編です
私は辺境国の国王だ。
辺境国は世界的にみて規模が中堅どころ。突出した産業があるわけでもなく、あらゆる分野で世界最大の国家である聖王国や、グローバルな種族の集まりであるものの何故か国家を名乗らない魔王領に比べたら木っ葉のようなもの。
とはいえ、中堅ながらの安定した国家運営を脈々と続けているし、変に成り上がる野心もない。国家内で賄われる産業と多少貿易を重ね、私の代もそれで平穏無事に終わるのだろうと思っていた。
「王、来月下旬に聖王国で主要国首脳サミットが開催されます」
「あぁ、そうだな」
「呼ばれました」
「ん?」
「王が」
「えっ?」
辺境国は中堅どころの国家だ。
故に、辺境国は世界的に見て主要国ではない。
そうした国の首脳に呼び出しがかかるということは、どこかで国家的に何かやらかしをやってしまい軌道修正を求められるとき。
要するに吊し上げである。
「いえ、そういうのではなく、当国の冒険者ギルドに所属するいちパーティの上げた業績がどうにも無視できないものとのことで、彼らの扱いについて国家の長の見解を問い糺したいようです」
ふむ。
側近、それを吊し上げというんだよ。
経緯はともかく、結論としては「優秀な人材は辺境ではなく中央に置くべきだからそう促せ。むしろ強権発動しろ。なんなら追放でもいい」という流れになるのは目に見えている。
はっきり言って、関わりたくない。
主要国の貴族は規模が規模だけに生き残るための権謀術数を幾重にも張り巡らせることが日常になっている海千山千の達人どもだ。
そういった貴族を取りまとめているのが主要国の各代表、つまり王であり、主要国首脳サミットとはそういう伏魔殿の怪物が集まる場だ。考え方の根本が違う。
国家運営に手を抜いているつもりはないが、彼らにしてみれば我々は殺伐とした権力闘争とは無縁の生温い場で生きているだけのように見えるだろう。
そんな連中に何を問われても困るしかない。対抗できる気がしない。ばかりか、迂闊な発言が国家の損失に繋げられかねない。
あーやだやだ。
とはいえ召喚されるのであれば仕方ない。
仕方がないから、そのパーティについての情報収集を行う。サミットでの方針を決めるために。
ふむ、どうやら人間族、ゴブリン族、エルフ族、オーク族で構成される4人パーティ。全員が異種族というのも珍しいな。余程の旨味を見出しているのか、単に仲が良いのか。
で、直近の大きな実績は長らくアンタッチャブルだった黄金郷の調査と解明。
成程。
っていうか、そういえばあれウチの国のギルドの実績なんだよな。でも私のところに直接報告が上がっていないのは何故だ?
ふむ、解明した内容が世界にとってあまり喜ばしくないものだったので、パーティリーダーが黄金郷を調査したこと自体を秘匿しようとしていたと。
が、どうにも隠しきれずギルドにはバレて、ギルドの中央に報告が上がり、その流れで主要国上層部は把握していたものの、私には報告が無かったと。
順序の問題か。であるなら納得。
「黄金郷の調査・解明によって世界各地に点在していた正体不明の厄介な呪いの数々が解呪されました。黄金郷そのものが呪いを維持する機構だったのでしょう。それ自体は喜ばしいことですが、呪いが発生するに至った原因や経緯を秘匿したかったようです。その経緯は口を噤んで未だ明らかになっていませんが・・・」
いいよいいよ。
現場の判断でしょ。私に事実だけでも報告してほしかったが、国家損失になるものでなければ行動の意図を咎めたり指図するつもりはない。
そもそも冒険者を管理するのはギルドの役目。それ以上の介入は彼らの尊厳を傷つける行為になりかねん。
だが、サミットにまで彼らの存在が議題に上るとなると、無視はできないな。
「無視できないとは?」
「そのパーティに断りを入れる必要があるということだ。首脳会議の結果次第では彼らの行動に何かしら制限がかかる可能性がある。それは彼らにとって本意ではないだろう」
「では、ギルドマスターに連絡をとって彼らを王宮まで出向かせて」
「あぁいや、そこまでの必要はない」
・
・・
・・・
というわけで、やってきました辺境国冒険者ギルド支部。
お忍びではないが護衛は最低限。誰かを威圧させるつもりもないので、服装も平民より少し良いもの程度を纏う。
ギルドマスターには事前にアポをとり彼らを召喚してもらっている。少し緊張した受付嬢の案内で客間に入ると、そこには話題の四人が座っていた。
上座に座らせてもらい、彼らの存在がサミットの議題に上ること、想定しうるメリットやデメリットを伝えると、パーティリーダーの人間族の男は快諾した。
「意外でした」
「何がかな?」
「国家の王がわざわざ市井に出向いたばかりか、私たちを尊重する姿勢で話をされたことです。蔑ろにしろとは言いませんが、王宮に私たちを召喚するなど、ご自身になるべく手間をかけさせない方法も取れたと思いますし、取っても誰も文句を言わないと思いましたので」
ははは。
そうかもしれないが、まず酷な言い方になるが国政は冒険者の存在にそこまで重きを置いているわけではないんだよ。
魔獣退治、各種調査、市井の大小問わずの問題ごとの解決や治安維持補助。それ自体は必要だし有難いことだが、そもそも冒険者ギルドは超国家的な組織であって、運営は国家から独立したものになっている。ある程度スポンサーの意向は反映されるにしてもな。
であれば、君たちが我が国の国民であろうが、そうでなかろうが、国と独立した組織の者であるからには礼をもって接するべきだろう。私は王だが、少なくとも本件について王座で王の威光をもって君たちに接するべきではないと考えているのだよ。
「というのは半分本当で、もう半分は王の趣味です。街に繰り出して庶民の生活を感じたり料理を食べるのが好きなんですよ。今回のコレは堂々と外に出る口実に使われています」
「あっ、側近てめぇ」
「ちなみに普段から王宮を抜け出すことはザラです。冒険者ギルドにも変装してたまに顔を出してますよ。今後注意深く見てください」
おっと、ネタバラシしやがったな。
受付嬢が驚いている。そうだな、冒険者ギルドにおいてはギルドマスターを除けば実は私と一番顔を突き合わせているのが受付嬢。君とベテラン冒険者との夫婦漫才はとても楽しみにしてるんだわ。
まぁいい、当座の目的は終えた。
彼らの人となりは掴めた。丁重にお願いしたら国のために働いてくれそうだし、なんなら中央にも行ってくれそうだが、そういう彼らだからこそ自由に活動させたほうが国家の利益となりそうだ。サミットでの私の方針は定まった。
故に今日の要件はこれで終わりだ。ということでギルド併設の酒場に行くぞ。ボアの串焼きでエールを飲みたい。
側近、そんな呆れたかのようなジト目で見ない。長い付き合いなんだから予測はしてたでしょ。余程の緊急事態にならない限り、今日不在にしたくらいで王政が回らないことはないでしょ。なぁ側近もたまには飲もうや。おいセクハラとかアルハラとか言うな。
あぁ、君たちやギルド職員も手が空くものは来ると良い。私のポケットマネーで奢るぞ。話をしていてリーダー君が好青年だったので、すこぶる気分が良い。
ん?ウチにはめっちゃ食う女とめっちゃ飲む女がいるけど大丈夫か、だって?
ははは。心配は無用だよ。いうて私は国の最高責任者だ。個人の財布であろうと飲食程度で足りなくなるということはない。ははは。
ははは・・・は?
・
・・
・・・
そもそも冒険者ギルドが超国家的な組織なので、不祥事や国家に損害を与えるケースでない限り国家が介入することはない。
故に、彼らの今後について国として口を出すつもりはない。また彼らは彼らの赴くままに活動をさせるほうが世界の利益になる。
彼らと会談した印象はそういうものだった。
故に、各国も彼らを自国に引き入れようとするのではなく、超国家的組織に属する者たちとして尊重すべきだ。
という主張でサミットを乗り切った。
一応の納得は得られた。
胃が痛い。
辺境国に戻ってからは彼らの動向に注目しながらも今までどおりの概ね平和な国家運営の日々を過ごしていた。
「引退するのか?」
「そうみたいですね。リーダーは音楽性の違いによる解散と言ってましたが、ちょっと冗談の意味がわからないですね」
そもそもたまに言っていることの意味がわからないことがあるんですけどね、と受付嬢は苦笑する。
聞くところによると、大酒飲みで私の財布を空にした戦犯Aのエルフは放浪の旅へ。オークは故郷へ、またリーダーおよび大食らいで私の財布を空にした戦犯Bのゴブリンは冒険者時代に得た特許料で会社を立ち上げるとのこと。
受付嬢は書類仕事をしつつ、残念そうな表情でそう教えてくれた。彼女はもはや私が変装をせず普段着でギルドを出入りしていることに慣れたようだ。
「それぞれ来月には出立するそうですから、機会があればお声をかけてさしあげてください」
「うむ、送別会には財布の中身を存分に用意してこよう」
「王様・・・それフラグってやつですぜ」
後のギルドマスターとなる年配の冒険者の呟きを、しかし私は聞き逃していた。
送別会の出費は・・・うん、聞かないでくれると助かります。
・
・・
・・・
数年後。
気晴らしに串焼きが食べたくていつものように城を抜け出そうとしていると、側近が血相を変えて自室に飛び込んできた。
「王!大変です!!」
「なんだよ側近」
「またサミットに喚ばれました!呼ばれる概要を聞きましたが今回は間違いなく大事件です!!」
なんだって?
聞くと、要件はあのゴブリンの娘が立ち上げたという会社についてだった。
彼女が作ったのは風呂に関する事業を営む会社。いま考えると何故無かったんだと思える文化だが、風呂、確かにアレは良い。
それを皮切りに、製造業・飲食業・農業・学校教育・建設業・運輸業・教育、その他挙げればキリがないほどの他業種に介入し、尋常でなく業績を伸ばし、企業というには留まらずもはや国家に匹敵する総資産をもった、どうにも無視できない規模の会社に成長したという。
世界各国に支社支店を持つが、本社はここ辺境国となっている。そのため、本社の税金は辺境国に納められている。
つまり、手綱を握る権利というか、義務を持っているのは辺境国だといえる。
主要国すら飲み込まんとする勢いで成長する彼女の会社に対し、手綱を握り明確な対応を取れというのが召喚のメッセージであろう。言ってしまえば、これ以上成長させるなということ。
「・・・困ったな」
重責で泣きたい。
深呼吸して落ち着く。
すまん側近、泣きそうな顔をするけど見なかったことにしてくれ。
泣いてもいい?いやいや、少し気を抜くだけだ。男として、王として最低限の格好くらいはつけさせてくれ。
ふう。
さて。
国家に損害を与えるばかりか、むしろ税収で多大な貢献をしてくれている。が、確かにその急激な成長が国家を危ぶもうとしている。
呼ばれたからには行かなければならない。欠席など論外。
故に、事情を聞くため私は代表取締役社長と我が国の商業ギルドマスターを召喚した。本来は召喚ではなく私が行きたいところだが、今回はそうも言ってられない。首脳会議の目的が完全に吊し上げだからだ。
王が王として対応し、綿密な方針決定および応答のシミュレーションをせねばならぬ。
「本人はそう思っていないでしょうが、地方の商業ギルドマスター程度ではもはや御せないくらい彼女の会社規模は大きいですし、権力もあります。はっきり言って私ごときでは知恵を出すことすら躊躇われる状況です」
呼びつけた老年の商業ギルドマスターはわかりやすくお手上げのジェスチャーをした。
いや、ごときって、君が中央でかなりの発言権を持っていることは知っているんだが?
え、その上でお手上げ?商業ギルドは各国支部で多大な恩恵を受けているから抑えつけるようなスタンスを取ると吊し上げを食らう?
仕方ないと言いたくないが、仕方ないな。
「うーん、少なくとも別業種に新規参入するときには各商業ギルドや対象業種の主要企業、お偉いさんにちゃんと仁義を切ってはいるんですよね。それぞれの関係も良好ですし、利益もちゃんともたらしていますし、その上で国家連合みたいなのに介入されるのは癪ですね」
癪か。
雑な物言いではあるが、気持ちはわかる。
だが君も承知しているだろうが、どれだけ正当なやり方をしていたとしても、往々にして理不尽な横槍は入るものだ。著しく実績を上げているものならば特に。
とはいえ、だ。
財務諸表を読み解いて改めて思ったが、会社の成長率は異常と言える数値だ。年間4桁%が何年も続くとか意味がわからない。
もはや手遅れかもしれないが、このままだと世界の経済を牛耳るのもそう遠くないと恐れられるのは仕方がない。
初期から介入していたのならともかく、ここまでの規模になると少し何かを介入したところで止まるものではない。抜本的な何かを変えない限りは。
ならば、経済を牛耳ったとして何をやりたいか。まずそこを確認しないといけない。
巨万の富や権力は、それを使って何かをするための手段だ。富や権力を持つことが至上目的にすり替わることもあるが、まずその「何をやりたいか」を明確に把握しておかないと味方にも敵にもなれない。
恐らく、主要国首脳もそこが不安なんだろう。意図が見えない相手と戦う未知は怖い。
はてさて、どう答えるか。
「えっと、今でこそ昔からは考えられないほどの資産がありますけど、それは結果です。やりたいことをやってきた結果が今なんです。そのやりたいことは何なのか・・・色々不便だったことをよくしたり、元々良かったものを更によくしたかったんだと思います。その「よくしたい」って思いを行動に移した結果が今なんだと、そう思います」
成程。
そういえば城にも常設された風呂は彼女が広めた文化だが、発祥は水浴び嫌いだったゴブリン族と言われているな。
会社経営をしていて単純な興味や好奇心、何かをよくしたいという思いだけでやっていけるわけではないだろうが、彼女の根がそういうものだというのは理解した。
敵か味方かということであれば、間違いなく後者を選ぶべきだな。うん。
方針を決めるぞ。ギルドマスター、荷が重いのは承知している。それでも、すまないが共に知恵を絞ってくれ。
「王は色々な意味で甘いですね」
うっさい側近。
甘くていいんだよ私は。
というか他国はともかく、ウチは王が絶対的な権威であるにせよ、さほど強い権力をもっているわけではない。王政の下部組織とはいえど、司法・立法・行政それぞれの管轄を私の一存で恣意的にひっくり返しはできないだろう?
中堅どころだからこその緩さがあり、私が城下に赴いても変な事件が起こらない平和さがある。国の緩さと民の善良さが、そうした国を形作っている。大小問わずのトラブルがあるにせよ、善性を謳える国であること。王にとってこれ以上喜ばしいことはない。
民あってこその私。であれば、私が民を尊重してもよかろう。
その結果、甘いというのであればそれでいい。
・
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二度目の首脳サミットも無事乗り切った。
乗り切ったったら乗り切った。が、何度吐きそうになったことか。やはり私は王の器ではないんだなと痛感した。
まず、彼女の会社は資産と運営の分散・負荷の軽減のため、既に参入している業種ごとに子会社化し、それらを統括するホールディングスを立てることで一応の納得を得られた。
ここは彼女の旦那・・・つまりはかつてのリーダー君の案とのこと。こうすれば常日頃から各部門の状況を確認する必要もなく、また所属する従業員も環境や制度を他に合わせて画一化する必要もなく、それぞれの特色に合ったものに変化させやすい。
また、新たな事業に参画する場合は、事業計画を立てて新たな子会社を作ることで、ホールディングスの過度な資産の増加を抑制できる。
管理の面でいずれそうする構想はあったそうだが、これが良い契機になったとのこと。彼女たちにとって不本意な措置ではなかったことには安堵している。
そして、
これは私以外の首脳の満場一致というかほぼ事後承諾に近いものだったが、
次回以降は私も首脳サミットに参加しなければならなくなった。資産が分散されたとはいえ依然大企業の規模であり、その企業の本拠地が辺境国であるからには動向を把握し手綱を握るべきであるし、入ってくる税収も莫大なものになるから、重要性と経済性を鑑みて主要国と見做すべきだということらしい。
個人的には大変不本意な措置だが、仕方ないとは思うし、そこらへんが落とし所だろう。せいぜい他国の宮廷料理を楽しませてもらう。
「まぁ今回は主要国の仲間入りになる儀礼で吊し上げのようになりましたが、いつもそうなるわけではない。肩の力を抜きつつ、締めるところは締めるスタンスで良いんですよ」
サミットを終えた後の会食の場で、主要国の筆頭首脳である壮年の聖王がそう和かに話した。思ったより温和そうな方だが、王としての格や経験は圧倒的に上だというのが対面してよくよく分かる。苦労してるんだろうなぁ。
まぁ私は油断はしないくらいの心構えではいるようにしよう。腹芸は苦手だし性に合わないが、そうも言っていられなくなったな。
「腹芸は苦手なんだよなって顔をされてますが、安心してください。私も苦手ですよ。魔王領はどうしても解決できない衝突があると力で雌雄を決する性質がありますからね。そんな脳筋な領の首脳でも、代々サミットでやってこれました」
聖王の横にいた更に温和そうな優男・・・魔王はそう言って微笑む。まるで女性かのように華奢だが、魔王に就任するには他者を寄せ付けない圧倒的な力を持つことが最低条件と言われているから、わざわざ見せつけないだけで相応の素養と土壌を持った傑物なのだろう。
私の収穫は、この二人とのコネが出来たことか。このことは私の今後の人生で非常に重要なこととなり、なんやかや数年後には市井でいうマブダチの関係性になったが、その時の私にはサミットを終えて緊張感から解放されたからか、別のことのほうに意識が行っていた。
「ところで、何で彼女がここにいるんですかね?」
「そもそもここ数年のサミット後の会食は、プランニングも含めて彼女の会社の外食産業部門に発注をかけているんですよ」
「ほー」
「『ウチの会社が槍玉に上げられるそうだけど、ついでに出される料理のQCもしたいから、詫び代わりに今回の会食には私も参加します』でしたか?」
「『有り体に言うと、サミット開催の費用で私に高級素材を使った料理をたらふく食わせてください。拒否権はない』とも言ってましたよ。しかし普段は普通の量なのに、相変わらず食べる時はホント自重せず食べるな・・・」
「聖王、そろそろ各国首脳がドン引きし始めましたよ。品よく美味しそうに食べているのにその量とスピードが尋常でないっての、はたから見て一種のホラーですな・・・」
「うーむ、相変わらずですね・・・まぁ彼女がいるとフードロスの心配はないのでそこは良しとしておきましょう・・・ということで」
聞けば、聖王も魔王も彼女とは面識があるばかりか懇意にしているとのことで、今回のサミットでも私側に立つよう根回しを受けていた模様。
更に、過去に彼女の大食いによって個人の財布が大打撃を受けた経験もあるとのこと。
めっちゃ親近感わいた。
・
・・
・・・
私は辺境国の国王だ。
2回目のサミット後に結婚して産まれた息子に、そろそろ王位を渡して引退しようと思っている。もう成人になるというのに未だやんちゃだが、しかし思慮深くもあり民思いの良い子だ。
辺境国は世界的にみて規模が中堅どころ。
だったが、意図せず突出した産業が出来てしまい、あらゆる分野で世界最大の国家である聖王国や、グローバルな種族の集まりであるものの何故か国家を名乗らない魔王領と肩を並べる国家となるに至ってしまった。
それから多忙を極めたものの、驕らず元中堅ながらの安定した国家運営を脈々と続けているし、やはり私には変に成り上がる野心もない。亡き父もそうだったし、息子も野心があるように見えず、家系なのだろう。
私の代で特に経済環境が劇的に変わり、かつ私を含めた全国民の生活も劇的に変わったが、民の善性が変わらなかったのは僥倖と言える。
さて、まずは平穏とは言えなかったが無事に私の王位が終わり、そして息子の世代やその次の世代も無事であることを願いながら、私の回顧の締めとしようと思う。
鳥山は会社経営も経済も国家運営もよくわからぬ。
お読みいただきありがとうございました。