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帝国編10:竜種の棲家への道のり

「竜種には3人の眷属がおりまして」


 山麓の道と言い難い道を登りつつ、シアユンは山麓や竜種にまつわる説明をしてくれる。


 険しい山道の移動は冒険者時代に慣れている。急な段差、一歩進めば断崖絶壁だった、そういうのを警戒しつつ、目視や足の感覚を頼りに進む。


 俺からしてみれば風魔法で飛べばいいだけの話ではあるが、可能な限り魔力消費は避けておきたい。何があるのか分からない。有事の際に使うよう温存しておいたほうが良い。


「狼と樹と鬼、いずれも単純な戦闘能力であれば私より上、リャンより下という見立てです」


「あれ?今でも勝てない?腕試しをしたのって結構前だよね?」


「さて、どうでしょう」


 強さ談義より、狼以外の眷属が気になった。


 樹と鬼。この世界では俺は聞いたことがない。樹はトレントのようなものだろうか。また、鬼人族には会ったことはあるが、鬼というものがそもそもいるのか、この世界ではどういうものなのか知らなかった。


「樹とは樹木が擬似生命を得たものだと言われています。文献で語られることは少なく、実物はほぼ見ることがないですが、肉体はまさしく樹木そのもの。炎に燃えず、冷気に強く、頑強な表皮、ポテンシャルは竜人族に匹敵するとされています」


「鬼は鬼人族の元になっている種とされていますね。全身が赤ないしは青色で染まり、頭の角も鬼人族に比べ隆起して、凶器の一部となるほど強固ですね。帝国領地の離島でしか生息せず、その鬼と人間族が交わって産まれたのが鬼人族と言われています」


 成程。

 で、眷属化によって強化されたのがその3人?匹?なのかな。

 竜種に会うにはそいつらと戦わないといけない感じなのか?


「ですね。私が会った時の見立てでは、1人で帝国の近衛師団に相当する感じです。が、今のシアなら勝てるとは思いますけど」


「善処します」


「というか、昨日レストランでステーキ食べた時に鬼はいたよ。人化してたけど。まぁゴローさんがいたから特に言及していなかったけど」


「えええ、そうなんですか。気が付かなかった」


 和気藹々と情報共有しながら藪の中を進んでいく。

 当然だが、山道以外の警戒をしていないわけじゃない。どこから魔獣や野生の動物が襲ってくるかわからない。それこそ、毒蛇が突如地面から飛びかかってくるとも限らない。


 正直、山道に忌避感がなくはない。

 転移した直後にいたのが山中だった。そこから藪の中を歩いて移動して、アンドリューと出会い、そしてデスベアーと交戦して瀕死になったのだ。


 だからこそ、油断はしない。

 リャンとシアユンは山道での移動を心得ているのだろう。軽装ではあるが肌の露出をさせず、足元への対処を怠らない装備をしていて、手袋をした手で草木を分け入っている。


「さて、ここまで来ればあとはちゃんとした道があります。ここを進めば竜種の棲家があります。遠くに棲家が見えますよね?」


 藪の中から出て、踏まれてそれなりに舗装された格好になる道の遥か先を見ると、神殿のようなものがあった。


「かつて帝国に高名な建築家であり土魔法使いがいまして、帝国が竜種への献上品として彼があの棲家を造りました。もう何百年も前かという話ですが、私が訪れた時には痛んでいる様子はありませんでした」


 凄いな。

 土魔法も極めれば建物を造れるようになるのか。

 とはいえ、極めるのは土魔法だけじゃなくて建物に関する知識もだろうな。多分俺が造れるにしても巨大なかまくらが精一杯。それも、住むには適さないだろう。

 ここらはいずれ調べてみてもいいかもしれない。あぁ、ここというのは竜種の棲家というより土魔法で建物を作るのに必要な知識や技術のことだが。


 と思案していたら、神殿の前に竜種の眷属らしき3体を視認した。


 狼。

 植物と人間の要素を足して2で割ったような樹。

 前の世界の創作物然とした、赤色の鬼。


 明らかに只者ではない気配がする。

 向こうも俺たちを視認しているようだ。

 リャンが俺たちより一歩前に出て彼らに向かって歩いているので、俺たちはその後ろを歩く。


「お久しぶりですね、竜種の眷属の御三方。竜種に御目通り願いたく参上しましたが、また腕試しが必要でしょうかね?」


 リャンが好戦的に声をかける。

 というか、すぐにでも戦いたいかのような口ぶりではある。年頃の子がそんな喧嘩っ早いの、ちょっと怖いんだが。


 とはいえ、こういうものは守護者と一戦交えないといけないのが様式美な気がする。

 既に面識があるリャンとシアユンはともかく、初対面の俺はそうだろう。

 なので、俺は構えた。


「待て待て待て、我らは貴様らと対峙するつもりはない。用件はともあれ、竜種の元へ案内するよう仰せつかっている」


 俺が構えたのを見て慌てて鬼が静止するようにそう言う。


「私は昨日、貴様らが麓の村のレストランで刃傷沙汰を起こした現場付近に居た。そこの男の力量も概算で理解した。我々で敵わないことはわかっている。貴様らが我々を殲滅させるのではない限り、敵対する気はない」


 おっと。

 確かに目的は敵対ではないから良いのだが、こうまで物分かりが良いと肩透かしされた感じがしなくもない。


 とりあえず、眷属の案内で神殿の中に入ることになった。

結末は書けていますが、経緯の書き溜めが尽きたのでどうしようか思案中です

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