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スタンピード 3 〜元事務職員、回復される〜

 スタンピードはまず第一波と第二波を俺たちで殲滅させた。


 これから第三波、第四波と続くが、まだ最終的な規模感が見えない。


 だが、聖王国はその強大な規模の国のため何度かスタンピードに見舞われ、それを乗り越えてきた。つまり、スタンピード対応についてのノウハウを持っている。


 初波さえ乗り越えれば、聖王国側の準備は整い戦線は安定する。むしろ、第一波で被害という被害が発生しなかったからこそ、第二波以降を万全をもって対応できる。


 それができるのが、精鋭である聖王国の聖王騎士団。そういう確信を魔王が持っていたからこそ、俺もその策に乗った。片方が全力を尽くし、消耗したらスイッチングして回復に努める、その繰り返し。


「さてと、ご苦労だったねゴロー。お姉さんが癒しのハグしてあげよう」


「既婚者なんで謹んで辞退させてもらうよ」


「お、遂に入籍したのか。おめでとう」


 今回の作戦で斥候を務めるエルフ族の中でも最上級の能力を持つであろう、絶滅危惧種(レッドリスト)のエルリィ。

 エルフ族は建国を快諾された後、事前に交渉のあった魔王からの依頼でその健脚さ、森で培った目の良さを活かした斥候役を担うことになった。これにより戦局を把握して、様々な布石を打ちやすくする。


 エルリィがいるかもと思ったが、本当にいるとは。後方にはアンドリューが控えていて、アークもこちらに向かっている。

 奇しくも立場は違えど絶滅危惧種(レッドリスト)の全員がこの戦場にいることになった。


 エリクサーを使うも極端に魔力を使用したことで疲弊している俺にエルリィは軽口を叩く。本来なら俺も乗りたいが、そんな状況ではない。


「戦況は?」


「さすがに早いね、聖王騎士団の全師団は動いた。また、1師団のみだけど魔王軍も合流して魔法での遠距離攻撃で波を消している。恐らく他国の戦力になる者たちも即席で軍を結成して補助に回るし、そもそも後方には回復のために教会も控えているから、このペースだとまず第四波までは対応可能だろうね」


「何波までありそうだ?」


「最低10。このままだと現戦力たちだけじゃジリ貧で押し切られる。過去のスタンピードの記録を閲覧した限りだと第十波なんて無かったし、前例の踏襲なら現行勢力で制圧可能な筈だった。質も量も、過去に類を見ないスタンピードだ。正直、私は逃げたいよ」


 そう言いながらも面倒見が良いのが彼女の良いところだ。甘えすぎるのも良くないが、この局面では全面的に頼りにさせてもらう。


「しかし、エリクサーを都合2つ使ってなお回復が追いつかないとか、魔力量がとんでもなく増えたものだね。アレは魔力欠乏症にも効果のある万能薬でもあるんだが」


 そうか。単に回復したが精神疲労まで効果がないものと思っていたが、魔力が回復しきっていなかったのか。


「そのために私がいます」


 と、体が光に包まれる。途端に疲労はなくなり、魔力が体に充満するのを感じる。

 万能の回復約とされるエリクサーを遥かに上回る回復効果。正しく神の御業だ。


「ホントに居らっしゃるんですね」


「分霊となると本体と繋がっていても別人のようなものですが、敢えて言いましょう。存外早期の再会となりましたね。私の存在については、管理者が管理の方法を刷新した結果だと思ってください」


 見た目は黒髪のシスターの少女。

 俺たちはその少女の面影を知っている。驚くべきことだが、今そこで驚く余裕はない。


「従来のスタンピード程度でしたらこの世界の皆さんに対応いただくべきですが、エルリィさんの仰ったとおり質も規模も今回は異常です。その以上の原因究明のため本体の降臨こそできないものの、分霊として私が文字通り全身全霊をもって対応します」


 アンドリューから話のあったこのアインスという女神の分霊は回復に特化しており、聖王騎士団とスイッチした後の消耗に消耗を重ねた俺と魔王の回復役を務める。


 しばらくして聖王騎士団が何とか第四波まで凌いだあと、第一波と同じように俺は初級魔法を重ねに重ねて第五波に甚大な損傷を与える。

 魔王も魔王で剣技と魔法の組み合わせで魔獣を倒していく。その間に聖王騎士団は戦線への復帰準備をする。

 魔王と俺の小規模スイッチ。

 更に俺たちと聖王騎士団を中心とした連合軍の大規模スイッチ。

 この繰り返しでスタンピードに対応していく。そういう戦術になった。


 アークはアインスに随伴して前線に来たが、本来戦力とするつもりはなかった。剣術だけだと対大規模戦だと乱戦になってしまい不利になりやすいばかりか、結局は数の暴力に押し切られてしまう。

 が、アークは自らを戦力にしろと提案してきた。魔王と俺とのコンビに差し込む形で。

 意外にも魔王が快諾した。白兵戦では魔王より上。魔王はある程度魔法で補助することになるが、魔王単体で全力を出すよりは戦果を出せると判断したようだった。


 実際、効果は抜群だった。

 魔力を伴わない攻撃だったが、アークの剣術は確かに魔王単体より討伐の成果を出していた。

 近距離をアーク、中・遠距離を魔王、広範囲殲滅を俺が担当することで、魔獣の群れに対応しつつ、疲弊し戦線を退いた各軍の復帰までの時間を稼ぐ。

 各軍が復帰したら俺たちは戦線を退いて回復に専念する。


 スキームは整った。後は行動するのみ。

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