元事務職員、振り返る(黄金郷編 エピローグ3)
元事務職員の黄金郷編、最終話です。
結果論ではあるが、黄金郷での出来事は俺たちにとって大きなプラスとなった。
まずギルドからの評価が上がった。
永らく解決しなかった世界規模の問題について、あくまで俺たちが解決したというよりは成り行きで勝手に解決したという流れで報告したが、上層部はそうは思っていない。
むしろ、本当に成り行きが勝手に解決したのだとしても、解決の遠因は間違いなく俺たちにあると見做し、その功績を評価してパーティランクがB-から最上級のAに飛び上がった。
総合的な強さが評価の指標となる冒険者ランクと違い、パーティランクは功績が評価の指標となる。冒険者ランクA揃いのパーティのランクがAになるわけではない。
報告内容は徹底的にとぼけた。
また、パーティランクがAになることは余程のことが無い限りありえない。
現在、パーティランクAは魔王領の最大戦力と目される魔王のみ。魔王は存在そのものが極めて例外的なため、参考にならない。
にもかかわらず、パーティランクがAに上がったということは「お前達が何かを隠していることは自明だが、追求しないかわりに人材を遊ばせはしないからな」という冒険者ギルドの意向の顕れだろう。前の世界で管理職になるのを避けていたのはそういう立場になるのを避けていたからで、変な面倒ごとに巻き込まれなければ良いのだが。
次に、黄金郷での出来事でパーティメンバー全員の強さが底上げされたということ。
俺の価値観で身も蓋もないことを言うと、黄金郷で得た経験値が膨大で、レベルが上がりに上がったのだろう。
しかも、途中から女神のバフがあった状態で戦ったことから、戦闘に関する感覚が鋭敏化したのだろう。アークに至っては女神様を憑依させた経験すらある訳で。膨大に得た経験値が更に1.x倍化されたようなイメージ。
少し先の話になるが、アークは敵わないと思っていた聖王騎士団長を圧倒して倒せるようになり、エルリィは聖王騎士団に匹敵する武闘派組織である魔王軍の四天王に就任することになり、アンドリューも中央教会の大司祭級として扱われるようになる。
3人はそうだが、俺はどうなのか。
まず呪いの少女・・・もとい土地神と戦ったときに会得した浄化魔法は使えなくなっていた。あれは、あくまでその時限定の奇跡というか、女神様のバフの影響だったのだろう。
かわりにスキル「貫通」を得た。魔法は体系化されていても、スキルなんてものはこの世界には無い。つまり俺が勝手に便宜上「貫通」スキルと見做しているだけだ。
俺の弱点は初級魔法しか使えないこと。限りなくノータイムで放てる利点はあるが、一方で火力不足は否めない。
だが、この「貫通」は「どんな防御魔法や防御壁を展開していたとしても、それを貫通してその魔法本来のダメージを敵に与えることができる」というもの。
端的に言うと、何枚もの魔法障壁を展開されていたとしても意味をなさなくなった。仮に魔法由来の全てを反射させる障壁があったとしても、俺の魔法だけはそれを貫通させることができる。50の攻撃力があれば、必ず50のダメージを与えられる。
相手がどう対策しようが、その攻撃力相当のダメージを与えることができる。
浄化魔法は俺の戦い方にマッチしたスキルへと変容したのだ。魔力の総量が飛躍的に上がったことも併せて、これは今後非常に有用なものになるかもしれない。
最後に。
やはり未練なり心残りなり、そういうものを残していた元の世界にちゃんと区切りをつけることができたのが大きい。
不意の死による転移で別れを告げた元の世界。未練もあるし、帰れるなら帰りたいと思う気持ちが無くもない。
その未練を無理矢理なくすのも少し違うと思うし、何なら一生引きずっても構わないと思うが、ひとまずの区切りをちゃんとつけることができたので、元の世界に想いを馳せつつもこの世界で生きていきたいと更に思うようになった。
パーティの評価が上がった。
俺を含むメンバーの強さが底上げされた。
俺の元の世界のことにちゃんと区切りをつけることができた。
この3点が俺たちの、いや1つは俺個人のことだが、黄金郷での出来事でプラスになったことだ。
うちパーティメンバーの強さの底上げについては、いま里帰りしているアークが戻ってきたらギルドから能力測定をするようにと求められているので、そこで具体化したいと思う。
さようなら。元の世界の、俺によくしてくれた全ての者たち。
俺はこの世界で生きていくよ。
また何かの因縁で機会があるなら、その時は。
黄金郷編、終了です。
お付き合いいただきありがとうございました。




