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元事務職員、黄金郷に挑む 4

「黄金郷の呪いは、率直に言って外敵の排除を目的とするものです。私の世界の生物は黄金郷にとって異質なものですから、排除対象となります。神である私、また黄金郷の元の世界の住民であるあなたは排除対象にはならないようです」


 つまり、他の3人は排除対象ということ。


「ですが前準備が良かったようで、基本呪は装備によって受け付けず、黄金郷が生み出す物理的な排除機構・・・黄金獣とでも言いましょうか。それも問題なく対処できているようです」


 みんなの状況を感知できるのか!

 もしかして3人1組で行動しているのか?


「3人ともバラバラに転移させられましたが、エルフの子とオークの子は合流できたようです。が、ゴブリンの子は孤軍奮闘しつつ私たちの目的地に向かって進んでいます。下天前に3人には祝福を与えてバフを施していますが、救援に向かうより私たちが事態を収束させるほうが早いと思います」


 ・・・不安だが、目的地、呪いのコアがある場所とは?


「かの巨大な鉄塔の地下です。ですので、目印としてはわかりやすいですね。あそこまで転移できればいいのですが、下天にあたってその能力は制約対象となっています」


 走るしかないのか・・・あ、自転車や車を拝借して使うのはアリ?


「車などのエンジンを稼働させるのは難しいですが、自転車など人力のものなら使えそうですね」


 おあつらえ、放置自転車があるので使わせてもらおう。2ケツなんて学生のとき以来だ。風魔法で追い風を出すことはできるか?


「可能です」


 よし、全速力で向かう。記憶の限りだと登り坂が多かった気がするが、頑張ろう。冷静に考えて女神様を2ケツしてチャリ走らせる機会なんて今後絶対にありえねぇ。


 という余計なことを考えるくらいの余裕は出てきた。


・・

・・・


 金色に輝く巨大な鉄塔・・・いや、もう包み隠さず言おう。この東京タワーは、その根っこが目に見えるほどの呪いが澱んでいて、黒いモヤがまるで生き物のように蠢いている。


 地下駐車場。

 そこはその黒い呪いモヤが尋常でない大きさの塊になって佇んでいる。

 厳密には細い糸が高速で動いているが、球体のように形を崩さずにいるから、まるで地下駐車場に鎮座しているように見えている。


「浄化を開始します。その間は無防備になりますので、できうる限りの護衛をお願いしま」


 突如、女神の言葉が止まった。

 警戒は怠っていなかった。しかし、いつの間にか黒い剣が女神の腹を貫いていた。感覚的に、あれは呪いの力を集約した非実体剣。


 黄金郷の排除機構は、外敵でないものには作用しない。が、ここに至って黄金郷は俺たちを外敵であると認識したのか。


 まるで繭のような黒いモヤの球体は、次第に糸のようにほつれていく。そこには、ひとりの女の子がいた。まるで、女神を幼くしたかのような。


 だが、見た目からは考えられないプレッシャーを感じる。エルリィが昔に言っていた「覇気」のようなものだろうか。

 同じ人型だが、生物としての格に隔絶した差があるように思えてしまう、そんなプレッシャー。


 少女は容赦なく襲いかかる。接近を許してしまい、一撃でも食らえば戦闘不能は必至のダメージを受けると直感し、風魔法の出力を最大にして飛び退き、間合いを離す。


 女神は剣が腹に刺さったまま微動だにしない。もしかすると、呪いが体を蝕んだり、そうした理由で動けない。もしくは、考えたくはないが死んでしまっているか。


 後者の場合、間違いなく詰みだ。

 この場だけの話じゃない。女神は下天したと言っていたので、アバターではなく本体だろう。本体の死は世界の管理者の死。つまり、遠からず管理者のいなくなった世界は崩壊する。


 ならやることは何か。

 とりあえずは現状維持。これ以上女神に危害を加えられないよう立ち回る。率直に言って超火力を持っているならともかく、俺のような小細工の果てに一点突破で最大限の効果を発揮させるような小火力では、どれだけ工夫しても「守る」という行為に限度がある。


 可能であれば現状を僅かながらでも良いので好転させる。女神の容体を直接確認する、治療する、目の前の「呪いを集約した少女」を退かせる、ないしは倒す。


 そのために、一縷の望みをかけて1つだけ試してみる。


「こう、か?」


 アンドリューから、僧侶の使う魔法はレア属性である「光魔法」を一定の素質がある人間が使えるよう落とし込んだ技術体系であると聞いた。魔法に分類されるが、技術なのだ。


 技術であるからには使える筈。

 魔法は自分の魔力を触媒にイメージを具現させる特殊能力だ。

 浄化のイメージ・・・合っているかどうかわからないが、少なくとも自分の中では仏像の姿が思い浮かんだ。


 試せても検証する余裕はない。

 上手くいけばお慰み。

 確か印相といったか、自分の記憶にある仏像の手の不思議なポーズを真似る。それを浄化のイメージとして、炎を手に発現させる。


 驚いた。

 明らかに通常の魔法と異なるこの感覚。火魔法に浄化の属性を付与させることに成功した。

 時間をかければ他の属性にも付与できるかもしれないが、そんな余裕もない。火魔法を主軸として、他の属性は補佐に回す。


 呪いの少女は、無数の呪いの黒い糸を放つ。とりあえず女神ではなく俺を攻撃目標としているようで、浄化の炎を宿らせた手でそれを払う。


 払えたのであれば防御に関してはこれで問題がなくなる。あとは攻撃にも使えるかどうか。


 俺に攻撃の効果がないことを認識したのか、少女の攻勢が僅かに弱まる。本来であればその隙に攻撃をするのが俺のセオリーだが、決定打になるものがない。攻撃をしない代わりに、浄化のイメージを手だけでなく体全体に行き渡らせ、炎の鎧を纏う。これも上手くいった。


 強弱の判断はつかないが、いま使っている浄化の力はそれなりに使えそうな予感がした。咄嗟に手を振るい、今も動かない女神に浄化の炎を飛ばす。意識を取り戻せば儲け物、少なくとも呪いの力を弱めるくらいはできる筈。


 呪いの少女と交戦する。

 あわよくば、倒して呪いのコアを破壊する。

 やることは決まった。あとは、やるだけだ。

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