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年末年始なんて滅んでしまえ!  作者: いろはにほへと
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若干の不倫表現が出てきます。

苦手な方はご遠慮ください。




「保護者って誰よ!」


と私が言うのと


「もう来ている。」


と低くて艶のある男の声がしたのは同時だった。


慌てて振り向くと、そこには頭に2本の山羊の角を生やし、漆黒の豪奢なマントを纏った美丈夫が立っていた。



「やあ、魔王ソルト。久しぶりだね。君も毎回ご苦労様。」


「いや、マサユキこそ、5年毎とはいえ災害から王都を守るのは大変だな。『殺戮の大天使降臨祭』だったか……」


災害って……


元々は勇者と魔王で敵対していたくせに、今や親友とでも呼べそうな仲の二人を見てげんなりする。保護者ってソルトのことかぁ…


二人の馴れ初めは、勇者マサユキがあちらの世界から召喚され、私の祖母含む数名のパーティで魔王城に乗り込んだあと、傲慢な人間の王に辟易していた二人が意気投合した事から始まる。お互いの親睦を深める為、と魔族達と一晩飲み明かしてその勢いで魔王&勇者コンビで王城を襲撃、王族をサクッと粛清してマサユキが王になった。因みに王妃はその時のパーティメンバーだった聖女様だ。


以来、もともと温和で平和に暮らしていた魔族と人族は良き隣人として暮らしている。魔獣の森の魔獣達は知恵を持たない者達で、魔族とは別物だから、私が『ちょっと』暴れても怒られたりしない。


そんな事をぼんやり考えていたら、麗しの魔王陛下に覗き込まれた。


「どうした、ヨーコ。さすがに魔力が切れたか?今回はまた派手にやった様だな。」


腰まで届く長い黒髪がさらっと肩から落ちて、端正な顔の中で存在感を放つ金色の瞳はは笑っている。私にとっては一年ぶりに見るその妖艶な微笑みに赤くなる頬を押さえながら、挨拶する。


「…… 久しぶりねソルト。貴方の被保護者になった覚えはないけど、迎えに来てくれてありがとう。でも、ごめんなさい。今回こそはエクスカリバーを引っこ抜いて貴方と互角で殺り合えると思ったのに……」


「こらこら、うちの神剣をチャンバラの武器扱いするのやめてくれる?あと、『殺り合う』の文字、物騒!」


すかさず突っ込んでくれる優しい国王様。好きだ…


「神剣なんてなくても大丈夫だよ、ヨーコ。どうせ君は私のベッドでヘロヘロになるんだから。」


「………っつ!」


魔王様の蕩けるような甘い声と瞳に耳どころか全身まで真っ赤になって、まともに言葉が出てこない。


「そういう訳だからマサユキ。ヨーコは回収していくぞ。」


「はいは〜い。 んじゃ後はいつも通りよろしく。ヨーコ、5年毎でなくてもいいから気が向いた時にまたおいで。たまにはゆっくりお茶でもしよう。なんなら旦那捨ててこっちに来ちゃえばいいのに。」


「ありがとう、マサユキ。その気になった時はよろしくね!」


荒らすだけ荒らして、私は魔王様に抱き抱えられて魔王城に転移した。

いつ来ても大らかで優しいここの人達に感謝しながら。








魔王城のソルトの私室に直接転移して、二人でソファーに座る。


「取り敢えず飲むか。」


テーブルいっぱいに用意されたお酒とつまみを見て、二人で微笑み合い、「勇者ころし」の酒を酌み交わす。これからは私の愚痴大会がはじまるのだ。だって魔王様何げに聞き上手なんだもの。お酒の勢いも手伝ってついつい心の内を曝け出してしまう。

面白がる様でいて、私を心配してくれる瞳のせいだ。


「マサユキも言っていたが、いい加減そんな旦那なんか捨ててこちらに来たらどうだ。私と一緒に暮らそう。」


すっかり酔っ払ったところで、私の手を取り彼が真剣な瞳で言ってくる。


「毎回言ってるけど、子供が独り立ちするまでは無理だよ。旦那はアレだけど、子供は可愛いからね。私が産んだ子だし、責任もある。でも、ありがとう。ソルトやマサユキがそうやって私を甘やかしてくれるから、まだ頑張れるよ。」


「まぁ、お前の言う事もわかるが…… 今回もダメだったか…」


苦笑いをしながらグラスの酒を煽ると、前座は終わりとばかりに彼を包む雰囲気がガラリと変わった。

細身だけれどしなやかで強靭な筋肉の付いた体から、むせ返る様な色気を漂わせ、金色の瞳の奥に熱が灯る。


「じゃあ、またあちらの世界で一年頑張れる様に、溶けるまで甘やかしてやろう。」



そう言って私は魔王に抱き上げられてベッドに運ばれ、ヘロヘロになるまで可愛がられてしまうのだった。




これでまた一年頑張るよ〜

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