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本文追加しました。
「こっちでは5年ぶりだけどね。今回もまた大掃除でキレて暴れにきたのかい?」
元勇者で現国王のマサユキは呆れたように笑う。
あっちの世界とこちらの世界では時間の流れが違うのか、実は毎年大晦日にブチ切れてこちらの世界に来ている私は、5年毎にこちらに来ている事になる。
「私にだって色々あるのよ。 それにしてもこのエクスカリバー頑固ね。今回こそはいけると思ったのに。貴方からも少しは妥協するように言ってよ。」
首をすくめて肯定すると、神剣の所有者に注文する。
「エクスカリバーにだって持ち主を選ぶ権利はあるよ。君みたいな無法者に身を許せば何をされるかわからない、と怯えているのさ。」
「失礼ね。ちょっと切れ味を試すだけじゃない。」
「その為に大陸を真っ二つにされては困るよ。今日だって君が無茶をしない様に僕がここで見張りをする様、王妃に言い付けられたんだから。」
「あら、相変わらず尻に引かれてるのね。」
先程、極大魔法で王都ごと宝物殿を壊滅させようとした犯人と、それを阻止した国王の会話にしてはのほほんとしている。現に宝物殿の入り口には沢山の騎士や魔法師たちがこちらを警戒する様に詰めかけていた。
「今年は随分と観客が多いわね。」
チラリとギャラリーを見て言えば、
「何言ってるんだい。5年毎の君の襲撃は『殺戮の大天使降臨祭』として前々回辺りから我が国の名物になっているよ。毎回来る日は5年毎の同じ日、同じ場所だから今日だって魔獣の森には魔術師たちが待機して、大広場に設置した巨大スクリーンに君の活躍を遠視の魔法で映してるよ。流星群は花火みたいで人気があるしね。」
と、もう40才にはとうになった筈の国王は言ってくる。
「ちょっと待って。いろいろ突っ込みたい事満載なんだけど!まず、『殺戮の大天使降臨祭』って何よ。『殺戮の』は百歩譲って分かるとしても、『大天使降臨祭』ってのは何よっ?」
なんだその恥ずかしい名称。確かに魔獣の森で暴れまくってるから『殺戮の』は否定できないところがつらい。
「だって君、こっちの世界では天使みたいな姿じゃない。銀色の髪にアクアマリンの瞳。年だって若返って10代後半にしか見えないよ?それが微笑みながら人々の脅威である魔獣を粛清してくれるんだもの、ピッタリでしょ。ちなみに考えたのは王妃だよ。さすがアリアだよね〜」
さりげなく惚気てくるな……
確かにあちらの世界とこちらの世界の時空を越えると姿形がこちらの世界の物になって、私は見た目18、9才の清楚系美少女になる。外見だけね。
「実際、魔獣を定期的に刈り取ってくれるから助かってるんだよね〜。騎士団も取り敢えず5年、森の外に出さなければいいと思ってるし、今日は君の取りこぼしを駆逐しに行ってるよ。」
私は年末の害虫駆除業者じゃないぞ!金取ったろかい!
「魔術師も結界魔法の修練に丁度いいってさ。今回は渾身の5重結界で絶対の自信作だって言ってたのにあっさり破られたね。これは修練の仕直しだね。僕直々に相手をしてあげようかな?」
入口に詰めていた高位魔術師たちが真っ青になったのが見えた。
それにしてもいい様に使ってくれちゃってますね?
ジロリと睨みつければ、マズイと思ったのかヨイショしてきましたよ、元勇者様。
「いやぁ〜 それにしても又腕を上げたね〜。 今回の流星群は随分時間も威力も伸びたし、地の極大魔法なんて前回は使えなかったでしょ。魔素もなくて魔法は使えないあちらの世界でどうやって修行してるの?」
よくぞ聞いてくれました!
「あちらでは魔法使えないから、ストレス溜まる度に脳内でぶっ放してるのよ。言わばイメージトレーニングね!」
そう、職場や旦那からストレス受ける度に、頭の中でボコボコにして発散している。
「それは、それは…… 今回のも強烈だったし、早めに保護者を呼んだ方がいいね。」
乾いた笑みを浮かべて言うな!