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トゥルームーン寮の死神

「ここがトゥルームーンの寮か」

「あ、ウルティアさんの部屋はここだよ」


 そう言って、言ノ葉はウルティア・フルノーツと書かれた表札の所に立ち、テキパキと呼び鈴を鳴らし、少し待つ。


「……はい」

「あの、ウルティアさんですか??」


 言ノ葉が穏やかにウルティアに話しかける。すると、ウルティアはドアを開けようとしていたが、後ろに居た私を見て直ぐにドアを閉めようとした……が、すかさず私はドアの間に指を入れて、こじ開ける。


「ヒィィィ〜!!!!!! あ、悪魔〜!!!!!!」

「だ〜れが悪魔よ!!!!!! 言ノ葉が穏やかに話してんだから、話くらい聞きなさいよ!!!!!!」


 ウルティアは私にビビってドアを閉めようと力いっぱい私を押し返そうとしている。

 そんな必死なウルティアだが、私も指を挟まれまいと必死にこじ開けた。


「静乃ちゃん。まるで悪徳訪問販売の人みたいだよ……」


 言ノ葉が苦笑いでその様子を見ていると、日頃の運動不足なのかウルティアの方が先に根を上げた。


「も、もう無理〜」

「よし!! 今!!!!!!」


 私がドアを開けたと同時にウルティアはへろへろとドアの前でへたり着いた。


「ちょっとウルティアさん、大丈夫??」


 思ったよりゼェゼェ言ってるウルティアに心配して声をかけて、手を差し出す。


「わ、私は殺されるのですか……??」


 ウルティアはフード付きマントのフードを更に深く被り、怯えた子羊の様に震えて半泣きだ。


「いや、なんでよ……。いくら私が悪魔付きだからって初対面の人間殺したらヤバいでしょ」

「じゃ、じゃあもう殺されるのでは……?????」

「ないわよ!!!!!! だいたい。なんで私が人を殺すの前提で話を進めてるのよ!!!!!!」


 失礼にも程がある。だいたい。いくら強い能力でもそんな事しないし、この能力の利点と言えば、例えば自分が「あ、ちょっと腕骨折しちゃった〜」とかなった時にハンドガンで自分の腕を撃てば普通通りに動かせたりする事だけだ。


 アドレナリンが出てる時と同じ感覚で痛みも感じないし、自分の能力が切れるまで痛くないし、結構便利だ。

 なぜ、そんな事を知っているかと言うと前に家の近くの森で捻挫して松葉杖使ってたけど、試しに操る能力を使ってみるかと思い、ハンドガンで撃ってみたら、普通に捻挫が痛くなくなったし、普通に歩ける様になったからだ。


 ただ、ハンドガンで撃った時の痛みは普通に痛い。……最近慣れてきたけど。いや、痛みって慣れで何とかするものじゃないんだけどね。


「ひぇ……で、でも、噂では悪魔付きの怖い人が同級生に居るって聞いて……見た目が冷ややかで怖そうなオーラ纏ってる(まとってる)綺麗な人って言われてたから、直ぐにあなたを見て、分かりました……よ?」


 えぇ〜。私、悪魔付きのオーラみたいなの出してるの??

 というか静乃が見た目がクソクールな女だった事すっかり忘れてたし、中等部の頃の静乃って孤高の存在でよく他人の事、毛嫌いしてたし最悪じゃん。静香や佐藤夫婦にも冷たい態度取ってたしなぁ。否定は出来ない。


「怯えないで。ウルティアさん。静乃ちゃんは噂通りの人じゃないよ?? それに今日はウルティアさんが食堂のお手伝いをよくしているって聞いて、私達も手伝いを最近やってるから、挨拶に来たの」

「あい……さつ??」


 穏やかに話す言ノ葉にウルティアは私に怯えきっていた表情が和らいだ。


「うん。挨拶、だよ。私達と一緒にお手伝いするかもしれないから」


 流石、言ノ葉だね。私よりもすんなり言葉を信じて貰ってる。というか言ノ葉って確か、言霊付きだったっけ。

 話した言葉に説得力を持たせたりとか、言った言葉が力になるから滅多に居ない能力だったっけな。

 だから言ノ葉って一見、ホワイトナイト寮の生徒に見えるけど、力の優秀さでデビルブラッド寮なんだよね。


「そ、そっか。それなら入って……丁度ピザも出来たって言ってるから」

「ん? 誰が言ってるの??」


 私の問いにウルティアは少しまだ私に警戒しながらも答える。


「と、トムさん」

「トム」

「うん。トムさん」

「いや、誰だよ!!!!!!」


 思わず勢いよく突っ込んでしまったが、言ノ葉は私と違って落ち着いているので、冷静にウルティアに聞いていた。


「トムさんはね。私の能力で人形に憑いた人。ピザ職人だったんだって」

「へー。ピザ職人。私、本場のピザって食べたことないなぁ。会わせてもらってもいい??」

「う、うん。いいよ」


 あんまり私に視線を合わせず、ウルティアは言ノ葉の後ろに隠れながら、部屋に招いてくれた。

 いや、それにしても私のダダ漏れオーラでウルティアを怯えさせてるのなんか悪いなぁ。食堂のおばちゃん達やデビルブラッド寮ですれ違う生徒や温泉に行った時の他の寮の生徒も初め、なんで私に怯えていたのかなんとなく分かったよ。


 ……でも、原因分かっても地味にショックだな。これ。

 初対面で私に怯えずに普通に接してくれた言ノ葉ってマジで天使なのでは……。

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