死神のウワサ
「しずちゃん、ことちゃん、今日もお手伝いよろしくね!」
「「はい」」
私と言ノ葉はというと二人とも、料理を作れるという事で食堂のお手伝いというちょっとしたボランティアをしていた。
なんだかんだ食堂のおばあちゃん達と仲良くなり、今ではあだ名で呼ばれるレベルにもなった。……初めの方はやはり私が悪魔付きという事で緊張されてたけど。
土日になると食堂のおばちゃん達は交代で休みを取るので、足りない分は生徒達からボランティアを募るみたいだ。ゲームしていた時は知らなかったなぁ。
静香が入寮するのって敵の魔物イベとかに追われて、本当に入学式ギリギリ前だったし。
ちなみにボランティアがよっぽど足りない時はどうするのだろう??
「あの……」
「なに?? しずちゃん」
「ボランティアがよっぽど足りない時はどうするのですか??」
おばちゃんに思い切って聞いてみると、おばちゃんはああという顔をした。
「その時はね。トゥルームーン寮のウルちゃんに最近手伝って貰ってるのよ。前は似たような能力の子が居たんだけどね。その子も卒業しちゃったから」
「ウルちゃん……??」
首を捻っていると、隣の言ノ葉がちょいちょいと服を引っ張られた。
「静乃ちゃんは知らないかと思うけど、同じ一年生のウルティア・フルノーツちゃんだよ。トゥルームーンの死神って呼ばれてるらしいの」
言ノ葉から聞くにはウルティアは魂を物に定着させる事が出来る魂付きらしく、趣味で集めてる等身大の人形にそこそこ料理出来る人の魂を探して定着させて、その人に手伝って貰ってるそうだ。
そしてその手伝った人が自分で料理を作った事に満足して成仏していくから死神と呼ばれてるらしい。
そーいや、トゥルームーン寮の攻略対象の狐付きの二年生の先輩、桐生 颯ルート攻略してたら出てきたな。
でも、ウルティアは結構寮に引きこもり気味だし、この子に対してだけは静乃も結構構ってた気がする。
あんまり人に 関わらない子だから、同情心で構ってたとか桐生先輩ルートで静乃が言ってたな。
「へー。魂付きって結構居るの??」
「うん。かなりいっぱいって訳じゃないけどね。同じような能力だけど、その人の個性によって少し違うって感じかな」
「へー。知らなかった」
そういうことは結構このゲームでは語ってくれないから新鮮だな。
それに私の悪魔付きって今は私、一人しか絶対に存在しないし。
千年経てば、同じ力を持ってる人に出会えるだろうけど、千年後まで生きてないしね。
という事は個人で少し違うという事は、今までの悪魔付きの力の持ち主と私は何の能力差があるのだろう。少し気になるし、悪魔付きなら関する本があった筈だから、入学したら図書館で見てみよう。
「二人とも今日はありがとうね。やっぱりしずちゃんは本当に手際が良いわ。卒業後はうちの食堂で即戦力で働いて欲しいくらい!」
「いえいえ、恐縮です。皆さんの働きっぷりは私的には結構参考になるんで、今後手伝いたいです。それに卒業後は自分のお店持ちたいので色々と資格取る予定なので」
街のギルドで確か色々と資格取れた筈なんだよねぇ。料理や食べ物に関するスキルもそこで取れたし。
「あら、残念。またお願いね。はい。二人とも、約束のデビルコイン」
「「ありがとうございます」」
デビルコインとは各寮事にデビルコイン、ナイトコイン、ムーンコインとある。
その各寮事のコインをいっぱい集め、学期末に一年間どれだけ自分達の寮のコインが一番集まったかを順位付けされる。
一位になった寮には一人ずつ、好きなスキルを一つゲット出来る。
例えば運動神経がないので、そのスキルが欲しい……とか、速読のスキルが欲しいとかそういう感じのやつだ。
他のクソゲーマーからは「普通にこんなスキル要素要らんだろ」ってボロクソ言われてたけど、私的には少し羨ましかった。
ゲームじゃ役に立たないけど、現実世界ではめちゃくちゃ使えるしね。
ちなみに私はゲームやってる時に思ってたんだけど、普通にどんなレシピでも再現出来るスキルが欲しい。
レシピ見たらそれなりに作れるけど、完璧には作れないからね。
「ねぇ、静乃ちゃん。これからどうする??」
「あー。たしかに。お昼を手伝っただけだから結構時間あるよね」
後、あの私に岩塩対応をする女の部屋にまだ帰りたくないし。
「あ、それならウルティアさんに会ってみる?? 今度またお手伝いする時に鉢合わせするかもしれないし」
うむむ。ウルティアに会うのか、でもまー。ウルティアってゲームでも結構無害な生き物だったし、会うだけ会ってみようかなぁ。
どうせ。静香のハーレムルートを阻止しないと行けないし。
ハーレムルートだと静香が各寮の友達候補と仲良くなって、各寮の攻略対象と満遍なく仲良くなってから静乃にデバフかけてる聖と攻略対象皆で、静乃を倒したんだっけ。
いや、今思い出してもめちゃくちゃなシナリオだな。ハーレムルートの最後、多重婚確定みたいだったし。
この世界、多重婚ありだからなぁ。マジでなんでもありのクソゲーだよ。
「そうだね。私もウルティアさんに会ってみたいね」
「決まりだね。行こう。静乃ちゃん」
天使のような笑顔で物理的に悪魔な私を引き連れる言ノ葉。
本当に良い子と友達になってよかったと、私はしみじみ思っていた。