白雪 聖
言ノ葉に一通り学校案内とか寮内の説明をして貰い、次は自室へと言ノ葉に案内してもらう。
「というかこの寮、いつでも入れる温泉とかあるんだね」
「うん。自室にもあるけど、この学校の理事長が温泉好きだからって理由であるんだって」
「へー。それはありがたい」
言ノ葉にさっき紹介して貰った寮の温泉はかなりデカくて、ここにお金かけすぎでは??
って顔をしてしまったのは秘密だ。でも、ここの温泉入ってみたいので後で入りに行こうかな。
「あ、ここが私の部屋でその隣が静乃ちゃんと白雪 聖さんの部屋だよ」
……えっ????? 言ノ葉さん。今なんて……。
「相部屋……??」
「うん。静乃ちゃんと聖さんには悪いけど、なんか部屋が足りなくて相部屋なんだって」
「へー。それは仕方ないね。部屋が足りてないんだから」
本当は全然そんなことない。個室が良かった!!!!!! 個室が良かった!!!!!!
「えっと、じゃあここまでで案内終わるね。……静乃ちゃん。困った事があったら聞きに来てね」
何????? この子、天使?? 聖が私に超絶無愛想確定なの知ってるから、困った事がある時に聞く相手居ねぇ〜ってなってたけど、言ノ葉が居るなら大丈夫だね。ありがとう。言ノ葉。
静乃の時は静乃が無愛想で全然仲良くなれなかったみたいだけど、今世では私と仲良くなろうね。
「うん。ありがとう。言ノ葉。じゃあ、また明日ね」
私がそう言うと言ノ葉は「また明日ね」と手を可愛らしく振って、部屋に入って行った。
ふぅ。隣があんな天使なのに何故、私は私にクソ対応する女と同室の部屋に行かなければならないのだろう。
「お邪魔しま〜す」
自室なのに相部屋のせいでなんとなく息抜き出来ないなぁ。
「あ、まだ帰ってきてないみたい」
それならそれで部屋を見て回れるし、ラッキー。
玄関近くの寝室にとりあえず行ってみると、中にはデカいキングサイズのベッドが一つとちょっとした机が置いてあった。
「あー。そっか。元は一人部屋を無理矢理二人使ってるからベッドは一つなのか」
常に私の事を嫌いな女と一緒に寝るとかマジで無理。
……というか、仲良くてもいきなり一緒に寝るの無理でしょ。
このちょっとした押し入れに布団とかないかな??
「あ、あったあった。良かった」
流石にあるよね。いきなり相部屋になったし、そりゃあそうだ。はぁ。それにしてもハーレムルート確定かぁ。
寝室の扉を閉めて、私は物置部屋とお風呂と共通スペースのリビングを見て回る。それに言ノ葉の言っていた通り、食堂へのタブレットもリビングに置かれている。
「へー。やっぱり一人部屋だけどかなり広いわ」
キッチンも結構広めにあるし、これ結構高級マンションぐらいの中身ある。防音完備らしいし。
さて、私の荷物は……と。私の荷物はキッチン用具と……。
「うん。キッチン用具と服とレシピ本くらいだわ」
趣味が完全に料理作る事だから、キッチン用具とレシピ本くらいしか持ってきてないんだよねぇ。
荷物凄く少ない。後は学校に必要な物だけだし。
「聖は荷物の荷解きは終わってるっぽいね。……まぁ、私より早くこの部屋に居たみたいだし当たり前か」
白雪 聖。彼女は確か雪女付きで、氷雪系の力が使える。
そして、前世での記憶でこのゲームやってた時の聖は静香にゲロ甘で静乃には塩対応。
元々顔は双子だから似てるって言いたいけど、悪魔付きになったせいで両親とも双子の妹とも似てない顔になってるからなぁ。
それに私は静香が中等部の頃、わざわざ会いに来てくれた時に、静乃が静香を邪険に扱ったんだよねぇ。
静香が心配で一緒に着いてきていた聖はそれで余計に怒ってるだろうし。
はぁ。本当に会うのが気が重い。
そう思って立ち上がって振り向くと、人が居た。
「やっと帰ってきましたか」
酷く冷たいその声の主の声が聞こえると同時に素早くフローリングの床に身体を押し倒され、私が何も抵抗出来ない様に馬乗りされて、手首を抑えつけられる。
「……白雪……聖っ」
彼女の名前を呼ぶと、聖は不快だったのか私の手首を握る手が強くなる。
「いたっ……」
しかもフローリングに抑えつけられてるから身体中痛いし、いくら死なないからって勢いよく後ろ向きに頭打ったら、流石にめちゃくちゃ痛い。
というか、悪魔付きなせいで怪我とか痛みとか普通の二倍痛いんだっけ。最悪だ……この設定。
「痛い?? 静香はあなたにいつも邪険に扱われてその倍、傷付いていたのですよ」
あー。私じゃないんだよ。それやったのって言いたいけど、今の静乃は私。信じてくれないだろう。
本当に馬乗りされてるし、顔は近いし、聖の顔は美形だし、青白い長い髪はサラサラそう。
……というか、温泉にでも行ってきてたのか。いい匂いだし、タオルを首に掛けてる。
それに普段の聖は長い髪を後ろに束ねてるだけだし、束ねてない聖は新鮮かも。
うーん。聖の顔を改めてまじまじと見てしまうけど、私はこの子をどうせ恋愛的な意味で好きにならないから、とりあえず死ぬことはなさそう。
こんなに好感度最低値で向こうも私の事を雑に扱うだろうし。うんうん。このくらい私に噛み付いて元気なくらいが良い。
「なに、ジロジロ見てるんですか。気持ち悪い」
罵倒セット。そうだった。そうだった。静乃にはめちゃくちゃ口悪いんだった聖って。
敬語なのも私と一線置きたいって理由だった気がするし。
「いや、別に。どうでもいいけど、これから部屋が同室同士、仲良くしましょう。とりあえず、私は寝室にある布団で物置部屋に寝るから。それに、あなたにも静香にも何にもしないから安心して」
常に冷静に話すと、聖はじっと私を見つめる。
「……何もしない?? 信用出来ないですね」
聖がそう言った瞬間、パッと光の鎖が私の身体に巻きついてそのまま、身体の中に消えていった。
「……へ?????」
「何、間抜けな声を出しているんですか。あなたの言うことなんて信用出来ないので、箱庭の呪いをかけさせてもらいました」