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入寮

「お義母さん。もう私、持っていくものないですよね??」


 カネさん……というかお義母さんに入寮前の最終チェックをしてもらう。もう必要な物は全部もう送ったけど、やっぱり不安というものも流石にあるし。それに……。


「ないですよ。静乃さん。それにそのデビルブラッド寮の制服。似合ってますよ」


 デビルブラッド寮の制服とは、妖付きの学校には三つの寮がある。

 天才や力の優秀な生徒が集まるデビルブラッド寮、努力で優秀な成績を収めている生徒が多いホワイトナイト寮、一般生徒や変人の多いトゥルームーン寮。

 主にこの三つの寮があり、制服も寮ごとに違う。


 デビルブラッド寮の生徒は真っ黒な軍服みたいな制服で、黒いネクタイと黒い軍帽が特徴な制服だ。

 ホワイトナイト寮の制服は真っ白いまるで海軍のような制服で、白いネクタイと真っ白のサーベル(騎士イメージの寮だからだろう)を腰に付けていてまるでデビルブラッド寮の制服と真反対だ。


 トゥルームーン寮の制服は赤い軍服のような制服で赤いネクタイと胸に月のブローチ。ブローチは多分トゥルームーンの寮だからだろう。

 なんとも変わった制服である。


 もちろん、千年に一人の悪魔付きの力を持つ私は天才と力で優秀な生徒の居るデビルブラッド寮だ。

 あー。入寮してまず、ルートの分かれ道があるんだよねぇ。


 入寮して一人部屋だったら、誰かの個別ルートで静香の親友の白雪 聖(しらゆきひじり)と同じ部屋だったら、ハーレムルート。

 ハーレムルートだったら、私、結構不利なんだよね……確か。


 なんだったかな……うーん。肝心な不利になる事が思い出せない。なにか大切な事を忘れているような……。


「静乃さん。お迎えが来ましたよ!」

「あ、はい。お義母さん。いってきます。後、手紙や電話しますね! ……それと、新しいレシピとか思い付いたら是非ともレシピ送ってくださいね」

「はいはい。あなたは本当に相変わらずですねぇ。静乃さん。気をつけて行ってくるんですよ。私もお父さんもあなたの事、心配なんですから。私も連絡しますね」


 ……本当にお義母さん、レシピ送ってくれる????? 私、新しいレシピとかで変わった料理とかもバンバン作っていきたいんだけど。


「ありがとうございます。本当に、ほんと〜に! 教えてくださいねレシピ」


 真っ黒な制服に身を包み私は学校指定の迎えの馬車に乗り込んだ。







 しばらくして、やっと妖付きの学校に着いた私は寮や学校案内をしてくれるという今年の新入生で同じ寮の生徒と出会った。


 その子は先にスっと名乗ってくれた。名前は霧崎言ノ葉(きりさきことのは)さんで、人形みたいに綺麗でどこか儚げな黒髪ツインテの美少女だ。


「こんにちは。あなたが沖田静乃さんですか??」

「ええ。そうですよ。……寮の中や学校案内なんてそんな面倒な事を引き受けてくれて良かったんですか??」


 私の言葉に霧崎さんは目を丸くする。


「……私も一昨日に先輩から案内して貰いましたし、静乃さんは私と同じ寮で一緒に勉強する仲間じゃないですか。めんどくさいなんて事ありませんよ」


 ほぇー。出来た子だなぁ。こんなに優しい美少女が私の事を怖がらずに居てくれるだけでも嬉しいのに。


「あ、すみません。勝手に名前で呼んでしまって……」


 なんて恐縮するものだから、私も慌てて「大丈夫ですよ」と否定する。


「私と同じ名字の双子の妹も居て紛らわしいのでそうやって下の名前で呼んでもらえる方が助かります。それにお互い同じ歳だし、敬語もやめにしませんか??」

「ふふっ。……そうだね。これからよろしくね。静乃ちゃん」


 ふわっと笑う言ノ葉は花のように愛らしい笑顔だった。

 学校案内を言ノ葉にして貰っている最中に私は言ノ葉の事を考えていた。


 確か、言ノ葉はデビルブラッド寮の攻略対象を攻略する時に現れる主人公の友達なのよね。


 ヒロイン静香の幼なじみで親友は白雪 聖なんだけど、静香の攻略相手次第で変わるのが寮事に現れる三人のヒロインの友達。ホワイトナイト寮では「天堂 銀(てんどうぎん)」、デビルブラッド寮では「霧崎言ノ葉」、トゥルームーン寮では「ウルティア・フルノーツ」の三人だ。


 ホワイトナイト寮の銀だけはイケメン女子で同性なのに攻略出来たっけ。

 それに、一番の問題は静香の親友の「白雪 聖」だ。


 彼女、確か静香の事を守りたくて守りたくて、静乃に何かのデバフみたいな能力使うんだけど〜。なんだったっけ〜。全然思い出せない。

 などと考えていると言ノ葉からの呼び掛けで現実から叩き戻される。


「はい。静乃ちゃんが一番見たがってた食堂だよ」


 言ノ葉が紹介する言葉と共に色々な考え事は吹っ飛び、完全に食堂に目を奪われた。


「え? ここ本当に食堂??」

「うん。そうだよ。全部の寮生が集まる場所で朝の六時から夜の九時までご飯が食べられるよ」


 流石妖付きの金持ち学校とはお義母さん達から聞いていたが、ここまで広くて、色んなメニューがあり、食堂で働く人達も楽しそうと、私が開きたいお店の理想の様な場所だ。


「それにご飯を寮で食べたい人とか外に出たくないって人の為に寮の部屋の食堂用のタブレットでデリバリーとか出来るし、そのタブレットで必要な食材頼んだら部屋まで届けてくれるサービスもあるよ」

「え? じゃあ、部屋で料理作るのが趣味って人にも便利ね。そのサービス」

「うん。私もお菓子作りとか好きだから助かるな〜って思ってたんだよ」


 言ノ葉のその言葉を聞いて、私はギュッと言ノ葉の手を握る。


「……今度、一緒にお菓子作りしよう。私も料理が趣味なんだ」


 などと、寮の食堂に大興奮していた私はすっかり忘れていたのだ。

 寮が相部屋なのか一人部屋なのか問題の事を。

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