夜行列車
「(人数が多い方が良いと言ったけど、あの聖女も一緒ではないか!?)」
「(しょうがないでしょ。皆行くのに、静香を置いて行くのは可哀想でしょ)」
なんて最近悪魔付きの本で知った思念通話をゼパルとやっている。
ちなみに今の状況はゼパルの言ってた魔物のアーサーに会いに行く前日の深夜だ。
この話をチラッとゼパルが指定していたメンバーにしてみたら、静香も行きたいと申し出た。私としては特に断る理由もないしいいかと思っていた。その上、更に意外にも桐生先輩も静香が行くのなら、行くと言ってきてゼパルも人が欲しいって言ってたから丁度いいやと思ったから快く良いですよとも返事をした。
そして学校には泊まりがけになるからと申請したら、ボランティア扱いにしてくれるらしいので各寮のコインも貰えるらしくてお得な気分になった。
それに、聖にも言ったら箱庭の呪いの範囲の効果を緩めてくれるらしくてラッキーだったが、この女も静香が行くのなら行くと言ってきて渋々オッケーはした。人数は欲しかったし。
で、私は前日になってゼパルに言ってなかった事を思い出したから報告した。美純もゼパルに言うのを忘れてたのか冒頭の反応だった。
「(ふむ。それにしても、お主は今から行くのか?)」
多分それはこんな夜更けに暇つぶしにゼパルと思念通話しているからだと思うし、人目も少ない夜更けに一人で先に行く理由もゼパルには気付かれてる。
まぁ、他の皆には何にも伝えてないけどゼパルが美純に伝えるだろうし、問題も特にないと思う。それに皆、優しいから気を使わせてしまうかもしれないし。
「(悪魔付きは見た目で直ぐにバレるでしょ)」
そう。悪魔付きは人々に忌み嫌われている存在。災いだと思われている。
学校は聖女付きが居るからと私の入学も認めてくれたらしいし、静香とも仲は良好なので問題はない。(後、問題も起こしてないし)
ちなみに悪魔付きの力を使って、私の姿を見た人を洗脳して見てなかったり、惚けさせたり、記憶をそこだけ消したり出来るけど、それを使ったらなんだか私が本当に悪に染まりそうでやりたくない。
私がこの能力をずっと使うのは仕方ないけど、使ってていつ悪の道に堕ちて本当の悪女になるかもしれないから。
最悪、そうなってしまったら理性がある内に静香か静香に浄化して貰った武器を持ってる攻略対象の奴らに綺麗さっぱりと殺してもらおうとは思ってるけど。(私が悪に心変わりしないとは言いきれないから)
そんな事にならない事に限るし、私も今世は自分の店持ちたいし、私の料理を食べてる人が喜んでる姿が見たいから。
「(まぁ、そうだな。わざわざ佐藤夫婦が森の中に住んでるのもそれが理由だったしな)」
「(そうだろうね。……ま、という事だからこの事は美純に伝えといとね!)」
「(はぁ……わかった。好きにしろ)」
ゼパルとの思念通話を終了させ、荷物を持って部屋をこっそりと出て、予め学校にも理由を話して手配してもらった夜行列車の切符を持って駅までのんびりと歩く。
学校周りは森だが、少し歩けば近くに人気がさっぱりない少し寂れた駅があった。この駅は学校から近いと言う事でホワイトナイト寮の生徒が善意で毎日掃除している、と以前言ノ葉から聞いた。
まぁ、人気が少ないのは本当に助かる。この容姿、目立つからローブを深く被って顔を見づらくしてるけどね。
制服で憑き物の学校の生徒だと分かるけど。あの学校の名前、セイブリット学園って言うんだっけと少し思い出す。正式名称はもっと長かった気がするせいであんまりフルネームで言えないが。
なんて思いながら、丁度タイミング良く夜行列車が来たので、誰も居ない車両を選んで一息ついた。人がくつろいで居ると、わざわざ私の正面にドカッと足を組んで座る態度の悪い奴が来た。
「私に黙って一人で行くつもりだったんですか?」
この声は……。まさか……。
「げっ、聖」




