一緒の食卓
目覚めるとギュッと私の身体を抱いて寝ている聖。近過ぎて聖の寝息が生々しく聞こえる。
「うん。なんでこうなった」
状況を整理しよう。確か私は看病してて、聖のベッド付近で眠くてそのまま寝てた筈。それがどうして、聖と仲良くベッドの上で寝てんのよ。
しかも、その聖はぐっすり眠ってるし、起こすのが忍びない。
「んっ……」
「ちょっ、」
更にギュッと抱き締めて私の胸に顔を埋めてる。
「……まぁ、いいか。でもここから抜け出して能力を自分に使ってから朝ご飯作んなきゃな」
能力使わなきゃ、地味に痛みもあるし。本当になんでこの能力、他人や物は一回使ったら継続してんのに自分に対してはそれが無効なのか。クソ不便である。
まぁ、これもこの能力が強過ぎるからってのもあるんだろうけど。
聖には少し悪いが抜け出して、いつものでっかいクマのぬいぐるみにすり替える。
「……まぁ、身体の熱っぽさもないし頭の熱も引いたみたいだし、見る限り聖の熱も引いてるっぽいからもう大丈夫でしょう」
それからご飯の準備とか部屋の掃除とかごみ捨てに行ったりしていると珍しく聖が起きてきた。
「……おはようございます」
「おはよう。めずらし、聖が普通に起きてきた」
「なんですか。私が起きてきたら、悪いんですか?」
寝起きでめちゃくちゃ機嫌が悪いのか、目付きが凄く悪い。中性的に整った顔から威圧感を与えてくる。黙ってたら目の保養なのに。
「いや、別に〜。そうだ。聖、ご飯食べる? ……というか食べれる?」
一応、病人だったし聞いとこう。どうせ、私の作ったのは信用出来ないとかだかで食べないって言うだろうけど。
「……食べます」
「そうですよね〜。食べないよね〜……って、は? 食べるの?」
「貴方が聞いてきたんでしょ。食べますよ」
聖は怪訝そうな表情をしながら食卓の長椅子に座る。
「病み上がりだし、お粥とか食べる? 聖は普段から朝はそんなに食べないし」
「そう、ですね。お粥でお願いします」
普段そんなに食べないというかほとんど食べてない様な奴がいきなりしっかりしたものなんて食べられる筈がない。
お昼なんて静香が居るから学食行ったり購買でなんか買ってるくらいなのに。
とりあえず、卵粥でいいかなーと聖と適当な世間話を喋りながら作り机に並べる。
「「いただきます」」
お互い手を合わせて無言で朝ご飯を食べ始める。
聖は前のように疑う素振り等せずに普通に少し塩を入れてお粥を食べてた。なんにも言わないって事は不味いとかじゃないしいいかと特に気に留めない。
どうせ、聖に言ったって感想なんて返ってこないだろうし。
「……美味しかったです」
お互いご馳走様を言ってから、意外にも聖はそう言うから、最初は普通に聞き間違えかと思った。
「へ?」
「美味しかった、って言ったんですよ。変なものも入ってないし、今まで疑ってすみませんでした」
その上、聖が謝るものだから頭の中がフリーズする。
え? あの聖が私に謝ってる??
「……私だって謝る時は謝りますよ」
聖の申し訳なさそうな表情、声に流石にいつものような悪態は付けなかった。
「ふーん。そ、まぁ、美味しかったって言ってくれてありがとう。今までの事は怒ってないから、そんなに謝らないで」
なんて言っては見るけど、私は聖が私と同じ食卓で私の作った料理を一緒に食べるのは悪くはなかったので、今日から出来るだけ聖と一緒にご飯を食べれたらいいなと密かに思った。




