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鍋焼きうどんと悪夢と。

 デビルブラッド寮に戻るなり、私はとりあえず聖に薬を飲ませ、その後に鍋焼きうどんの具材をタブレットで注文する。


 なんとなく、私が作った方が聖の母親みたいな感じに出来そうだからだ。

 絶対余る量を作るので、余りは全部私が食べればいいんだし。


 具材待ってる間にあの悪魔付きの本の続きを読もう。

 ふむ。なになに〜。えーと、悪魔付きが他人を操る時は相手の頭にハンドガンの弾を当てれば脳に直接命令を出して操れます。


「……は?」


 え、それ完全に私の操り人形みたいに出来るって事??

 分かってた事だけど、改めて文字で見ると危ない能力だな。悪魔付きの能力。


 ちなみに自分が怪我や頭痛、身体の不調を直したい時は能力を使う時に頭を撃ち抜いて、自分の頭に手をかざして「全ての痛みよ消えよ」と念じれば能力を使っている間は実際のダメージの痛みを感じません。【注】悪魔付きの能力が消えるとまた痛みは感じるので、切れる前に対処法(痛み止めの薬等)を自分で用意してください。


「わざわざ、手とか足に撃ってた私って……」


 いや、まぁ手でも能力使えるってのは知ってたけど、脳天撃ってからじゃないと能力使えないし、あんまり手で能力を出さないようにしよう……って思った私だけど。


 うん。人が見てない時はこれ使おう。だって普通に撃つの痛いし、これからそうしよう。それに、……というか完全に便利な痛み止めみたいな説明入ってたけど。


 悪魔付きって憑き物の回復は効かないってだけで治るの凄く遅いけど、薬とかで何とかなる辺りは本当に良かった。

 それもダメだったら、悪魔付きってドMの人専用能力かな?? って思ってたし。なんて思ってたら、チャイムが鳴って具材が届いた。


「とりあえず、ちゃっちゃと作って食べれるか聖に聞いてみよ」


 えーと。聖のお母さんが作ってた鍋焼きうどんって野菜がいっぱい入ってるんだっけ。

 ……まぁ、余ったら私が食べるし別に良いんだけど。


 しばらくして鍋焼きうどんが出来て、聖の所に持っていくと聖はぼーっとしつつもタブレットで今日の授業の振り返りを見ていた。


「あ、起きてたんだ」

「はい。もう熱は微熱程度には下がったので」

「あんまり無理しないでよ。……ところでご飯は食べれそう? 鍋焼きうどんを作って来たんだけど」

「……食べれそうですが、少量でお願いします」

「流石に分かってるわよ。小分けにするし、余ったら私が食べるから気にしないで。食べれる分だけ、お椀に入れて食べたらいいじゃない」

「……そうですね」


 なんて鍋焼きうどんを見つめる聖。というか、聖が食べるってのにじっとここに居るのも急かされてる感じがして嫌かもしれないし、出て行こうかな。


「食べ終わったら、そこに置いてればいいからね」


 と、元々寝室にあった小さいちゃぶ台を指差すと聖は静かに頷いた。






 しばらく私も今日の授業の振り返りをタブレットで見たりして時間を潰し、また寝室に入ると、聖は鍋焼きうどんを半分くらい食べてまた眠っていた。


「えーと、薬は……っと、うん。飲んでるみたいで良かった」


 後、冷却シートが剥がれかかっていたので貼り替えてあげてから私は寝室を出た。


「ぐっすり眠れてるし、薬も飲めてたし、うどんも半分も食べれたならだいたいは大丈夫そうね」

「ふむ。そうか。それなら良かった」


 私の足元から、声がする。


「……ゼパル。いくら聖が寝てるからって堂々と入ってき過ぎない??」

「まぁ、そう言うでない。聖のお見舞いにアーサーの林檎をやろうと思ってな。これを食べれば憑き物の力も多少回復するだろうし、体調もマシになるだろう」


 ゼパルは前脚を床にとんと叩き、何もない宙からふわふわと林檎が出て来て、浮かんだまま私の手の中にすぽりと落ちる。


「悪魔の力って便利ね」

「便利だが、お主の力を使うがな」

「知ってる。ちょっとこの鍋焼きうどん食べるし、リビングで話そうか」

「……ふむ。そうだな」


 ゼパルからもらった林檎は後で寝室に切ってタッパーに入れて置いとこう。


「で、林檎だけじゃないんでしょ?」

「まぁな。お主、最近夢を見てるか?」

「夢、ね。見てるわよ。毎晩、懲りずに悪夢を」


 ここで転生してからずっと悪夢を見る。これも悪魔憑きの力を使うせいでなる呪いなのだろうとは思うのだけれど。


「だろうな。悪魔付きの力のせいだが」

「どんな夢を見たかって聞きたいの?」

「話が早いな」


 なんでゼパルが知りたいのかは知らないけど、話してみようかなとうどんをすする。


「目覚めて初めの頃は民衆が「殺せ!!」ってコールしてる中に私は処刑台のギロチンで首チョンパとかかな」


 まぁ、悪魔付きはそれじゃあ死なないんだけど夢だとそれで死ぬ。でも首チョンパされても痛くないし、まぁいいかと思ってたんだけどね。


「ほう、それで?」

「それで、それからしばらく処刑台で色んな殺され方の夢見てたから、どうせ本当に死なないし、夢だから痛くもないしと思って、処刑される前に一言聞かれるんだけどその時に民衆と処刑人に「今日の夕ご飯は何がいい〜??」って聞いてたんだよね。最近はやっと何がいいか皆、答えてくれるからそれから多数決を取って夕飯決めてた」


 最近はって言うかここの寮に来てからだけど。


「……ふむ」

「その露骨に何してんだコイツって顔、辞めてよ。私だって毎日何がいいか悩むのよ。人の知恵だって欲しいし」


 ゼパルはこちらを見て凄いデカいため息を吐いた。


「お主、夢魔泣かせだな」

「え? 夢魔??」

「お主の所に配属された夢魔が言ってたぞ、普通の悪魔付きの人間ってこれで精神的にやられてたって聞いてたのに沖田静乃はめちゃくちゃポジティブだから話が違う、と」


「えー、そうかな〜?? まぁ、殺せコールよりは夕飯を答えてくれた方がいいと思ってさ、昨日はチーズINハンバーグがいいってコールされたからそれにしたし」

「そうか……。うん。まぁ、程々にしてあげろ。泣きながら、昨日我の夢にも出て来て飲み屋で愚痴を聞かされた」


 ゼパルも凄い……うん。その夢魔に同情してるみたいだ。


「そっか……あの処刑人の人かな。民衆が答え初めてから私に死ぬ気でツッコミしてきてたけど」


 なんか普通に「いや、処刑台で言い残した事はあるかって聞かれて、夕飯を民衆に聞くヤツがあるか!!」って毎回一生懸命ツッコミしてくれるんだけども。


「……そうか。あやつ、お主が死ぬまでにストレス溜めなきゃいいけどな」

「そうだね。今度あったら、ストレスに気を付けてねって言っとくよ」

「いや、そのストレスがお主なんじゃが……悪魔付きの力の呪いで夢は悪夢になるという呪いで、お主の心が壊れないように本当は我が適度に夢魔を説得して夢を見させないとかするべきなんじゃけど、自力で解決してるし、まぁいいか」


 なんて、ゼパルはブツブツ言ってたけど、個人的には夕飯に悩まなくて済むから便利なんだけどなぁ。

 地味に色々豊富な答え返ってくるし、と思いつつも私はゼパルとそのまま世間話をしながらうどんをすすっていた。

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