桐生先輩の行方
全然会えない桐生先輩に会うためにとりあえずの情報集め。
まずは図書館に行ってみようかな。あの先輩基本的には図書館によく居る人みたいだし。
「どこに行くんですか?」
なんて教室を出たタイミングで珍しく聖に絡まれる……もとい、場所を訊ねられた。
「ちょっと、図書館に……」
「図書館……ですか。それなら静香も行きたがってたし、一緒に行きましょうか」
「静香も? まぁ、別にいいけど。私はただ、桐生先輩を捜しに行くだけだから直ぐに学校の図書館出ちゃうかもよ?」
「それでもいいですよ」
あっけからんと答える聖。まぁ、それでもいいなら良いか。
「うわぁ……ひろっ」
図書室ではなく図書館と言われる訳だ。ちゃんと、校舎とは別になんか大きい建物ある。
中はレトロな感じで、二階もある。
「……こんなに広いと桐生先輩なんて見つけられそうにないな」
言ノ葉が全然見つからないって言ってた理由がわかる。こんなに広いといつ桐生先輩とすれ違っても分からないし、出て行かれたらもっと分からない。
「……私達も桐生先輩を見つけたら、連絡入れましょうか?」
「ありがとう。静香。お願いするわ」
「静香がそう言うなら、私もそうします」
聖は静香の方をチラッと見て、心なしか柔らかい笑みを見せていた。
……聖もそんな顔をするんだ。意外。っていうか私の前では絶対に見せない顔だわ。
「じゃあ、私は捜しに行くから」
「じゃあ、私達はここで課題の調べ物してますね。見かけたら連絡します」
ああ。なるほど。静香達のクラスは課題出されてたんだ。
私のクラスはそんなに調べ物するタイプの課題は今日出されなかったな。
とりあえず、あのめんどくさい先輩捜すかぁ。
あれからしばらく捜してみるが、桐生先輩は全然見つからない。
うーん。これは司書の人にも聞いてみるかな。
「すみません。黒髪短髪で灰色の瞳の桐生颯って言う二年生のよくここに来る先輩を見ませんでしたか?」
「桐生くんかね? ふむ。少し待ってくれ」
初老のおじいちゃんって感じの司書さんがそう言って、桐生先輩が借りた本の記録を調べてくれた。
待ってる間、ぼーっとしているのも何なのでテキトーに本を取ってパラパラと見始める。
えっ!!!!!! これ、もしかしてこの世界のレシピ本??????
盲点だった……。レシピ本……そりゃあこの世界にも有るよね。
「なんで、思い付かなかったんだろう」
いや、まぁ私はこういうレシピ本読むのも好きだけど、やっぱり食堂で手伝ってる時の方が好きなんだよねぇ。
好きというか身体で覚える方が得意というか。
「悪魔付きのお嬢さん、桐生くんは二日前に本を借りてからここには来てないみたいだね」
「なるほど。二日前ですか……って、私、悪魔付きって司書さんに言いましたっけ?」
「いいや、君は有名だからね。皆、知ってると思うよ」
「そうでしたか」
いや、まぁそうだよね。悪魔付きって有名だよね。変なオーラも出てるらしいし。
「そうそう。沖田くんは食堂の手伝いもしてるみたいだね」
「そうですが……??」
「桐生くん、最近食堂でハマった料理があるってレシピ本借りて行ったから、自室か家庭科室に居るんじゃないのかな??」
「へー。それはどんな料理って言ってましたか?」
「うーん。確か食堂で土日だけに出てた唐揚げ定食に付いてる豚汁が凄く美味しかったから気に入ったって言ってたね。それに唐揚げも普段と一味違うから美味しいって。でも、最近は担当してた生徒が怪我してて飲めないからって自分で作りたくなったんだって言ってたよ」
豚汁……あ! それ、もしかして。
「あ、それ、担当してたの私です」
「ほうほう。それなら、桐生くんも喜んでくれるかもね! 沖田くんの唐揚げ定食が好きみたいだから」
ほー。こう……面と向かって褒められると嬉しいな。まぁ、基本的には皆、味噌汁付けてたもんなぁ。私は豚汁の方が好きだから付けてたんだけど、桐生先輩。そんなに豚汁気に入ってくれてたのかぁ。
「わかりました。ちょっと家庭科室と先輩の部屋も訪ねてみますね」
今日は来て良かった。図書館に来たのは無駄足じゃなかったみたいだ。
先輩の部屋……は言ノ葉が中々会えなかったらしいし、先に家庭科室に行ってみよう。




