文明の利器
あれから、部屋に戻り休んだ分の授業振り返るかと学校から支給されているタブレット端末を取り出す。
というのもこの学校、不登校の生徒や怪我や入院で授業に出られないという生徒の為に学校から支給されたタブレット端末の中に「本日の授業の振り返りプログラム」というのがある。
そのプログラムはリアルタイムで受けられるし、後からでも受けられる。
リアルタイムで受ける場合は自分の学年のクラスの授業の先生と黒板がタブレットに映し出され、一緒に授業を受ける事が出来る。
リアルタイムで受けない場合はタブレットで「今日の授業の振り返り」という所で自分のクラスの授業の必要な部分を優秀なAIが考えて、勝手に必要なポイントを纏めてくれるので必要な授業の単位も容易に取れる。
正直、授業に出てる時間が無駄だと思うタイプの人間は時間短縮で良いと思うし、優秀過ぎる生徒は不登校気味で自分のやりたい事を学校でやっているので、それで済ませている。
正直ゲームでの静乃はこのプログラム使ってたみたいだし。人とのやり取りが嫌だからだろうけど。
ちなみにウルもコミュ障過ぎてこのプログラムを使ってるって話をよく聞いてたから、部屋に戻って惰眠を貪ろうとベッドに入ろうと思ったら、ウルのこの話を思い出したんだけどね。
「というか本当にこのプログラム、優秀だな。デビルブラッドの生徒の多くがよく授業サボったり、不登校の生徒がこのままで良いやって学校に行かない気持ちもわかるな」
このプログラムリピートしちゃったら、私、マジで学校に行かずに新しいレシピ考えたり試してるなー。
「いや、まぁでも学校行かないとそのレシピを色んな人に試せないし、感想も反応もわかんないよねぇ」
そこがこのプログラムの盲点だ。
聖とか静香が居なかったらこのプログラム使ってそうだよねー。アイツ、私以外に外面は良いけどあんまり人付き合い好きじゃないっぽいし。
「はーっ。お腹減った。自分で作れないし、食堂用のタブレット端末で頼むかー」
そういえばこの食堂からデリバリーしてもらえるサービスまだ使った事ないんだよねぇー。
何の料理があるんだろうかとわくわくしながら、タブレットを覗くと和洋中と色んな料理が全部揃っていた。
「おお、凄い……これは味や見た目の勉強になるぞ」
流石、食堂のおばちゃん達。やっぱり改めてメニューを見ると腕利きの人達が集められている。
真面目に考えて私はこんなレベルの高い食堂の手伝い出来て幸せだ。後、自作料理も試せるし、本当にこの環境……ありがたい。
「……へー。あんかけチャーハンセット美味しそー。たーのも」
あんかけチャーハンセットの内容としてはあんかけチャーハンと卵スープとサラダに杏仁豆腐。本当に美味しそう。
「ん、待てよ……しばらくこの状況だから、自分で作らなくても他人の料理が色々楽しめるのか……それも良いな」
今まで自分でも作って料理の勉強してたけど、こうやって他人の作った味をゆっくり楽しむのもいいね。これからしばらくの楽しみができたなー。
なんてウキウキしてお昼食べたり、振り返りプログラムをやったりしてたら、聖が帰ってくる時間帯になってきた。
「……何やってるんですか。あなたは」
「んー? デリバリーサービスって本当に便利だなって色んなの見てた。夕飯、何にしようかなって」
結構種類があると本当に悩む。後、絶対に全部美味しいんだろうなと分かっていたら尚更だ。
お昼のあんかけチャーハンセット凄い美味しかったんだよね……リピートしたくなりそう。
なんて車椅子の膝の上に乗っけて見ているタブレット端末を聖は私から取り上げ、ため息をついた。
「あなた、本当に料理が大好きですね」
「まぁねって……って早く返してくれる?」
左しか使えないから、左利きじゃないし、ちょっと不便だけどスプーンとフォークで大概の料理食べられるし、そこまでストレスないし。
「って! あっ!!!!」
聖は勝手に注文を決めて、タブレット端末を机の上に置いた。
「私は今日食べたい物があるのであなたのもそれを頼んでおきました」
「いや、なんでも美味しいから良いけど、夜はサイコロステーキとか食べたかったのに!!」
「残念でしたね。明日頼んでください」
そう言って聖は制服から私服に着替えに行ってしまった。
「……って、聖がちゃんとした料理をデリバリーサービスするの珍しい。いつもは夜はおにぎりとかカロリーが取れる固形物とか頼んで終わりなのに」
本当に聖は晩御飯、何を頼んだんだろうか……。ちょっと気になるな。なんてどうでもいい事を考えていた。