幽霊の正体
幽霊騒ぎの一件でとりあえず次の日の休みに食堂へ皆で集合した。
「確かこの辺で幽霊が出るらしいけど……」
なんて言いつつ、食堂の近くの薄暗い場所に足を進める。
「こ、ここら辺」
「ここら辺ってここら辺に出るの?? ……うわぁ。定番的に暗い場所」
ウルの指さした方向はな〜んか薄気味悪い。そしてチラッと横見ると、言ノ葉に至ってはずっと黙ったままだ。
「言ノ葉、ひょっとして具合い悪いの?」
私の言葉に言ノ葉は首をフルフルと軽く振った。
正直今日の朝からずっと言ノ葉は顔色が悪かった。もしかしたら、調子が悪いのに私達の為に無理して来てくれたのかもしれない。それか、それとも……。
「それとも、この幽霊騒ぎに心当たりあるんじゃないの?」
「えっ……」
びっくりした様に言ノ葉は私の方を向く。そして、私の会話を聞いていたウルも「ご、ごめん……なんとなく」と何処か様子のおかしい言ノ葉の事に気付いていた様だった。
「実は……実は、ね?」
言いにくそうだけど、頑張って言ノ葉が言葉にしようとしていた時だった。誰かの足音がした。
「……誰?」
「ふっ……ふふふっ」
私の問いにも答えずに、薄気味悪く笑いながらその足音の主は私達の方へと歩いてくる。
「久しぶり。言ノ葉」
「み……美純ちゃん」
その美純と呼ばれた少女は白い制服に身を包まれ、ホワイトナイツ寮を主張する白いサーベルを手に現れた。
だが、様子も少しおかしい。そのサーベルや白い制服には明らかに誰かの血が付いていた。
ウルは血にびっくりして私の後ろに隠れて震えているし、言ノ葉はまるで金縛りにあったように動けない。
「誰かをやったの?? あなたの名前は?」
ホワイトナイツ寮の生徒はこんな非道な事はしない。むしろこんな事をやりそうなのはデビルブラッド寮の生徒の方だ。……というか自分で言うのもなんだけど、むしろ私辺りがやってそう。
「そこで倒れてる軟派な人だよ。……私の名前?? 私の名前ならそこの言ノ葉の方が詳しいんじゃない??」
「軟派な人……??」
美純がサーベルを向けた先に壁に背を持たれる形で血だらけで倒れている黒髪ポニーテールで長身のイケメン女子……天堂 銀が居た。慌てて駆け付ける。
「ちょっ……アンタ、大丈夫なの??」
よく見ると両腕を何回も刺されている。でも、鬼付きで日本刀で居合切りなどを得意としている銀にしては不用心な刺され方だった。
「ぐっ……、ふふっ……私とした事が、彼女をしつこくナンパしてたら刺されるとはね……。君も美しい人だね……」
「……それはアンタが悪い。後、黙れ」
私の顔をじっと見て減らず口。そりゃあ、刺されるわ。そして、コイツ、アホなのか。こんな状況でナンパとは。
私は銀に呆れながらも自分の頭にハンドガンを突きつける。そして、撃ち抜くと凄まじい痛みに顔を歪め、そして銀の両腕にハンドガンで撃った。
「ぐっ……って、痛く……ない??」
「今、あなたの両腕を私の力で操ってるから痛くないの。でも傷を負ってるのは治ってないから、さっさと治したら? 怪我してる所に手を当てる様に操るから」
「なんだか知らないけど、助かったよ。美しい人。……後、鬼付きは治癒能力も使えるってよく知ってたね」
「はぁ……あなたは有名だからね」
銀の顔を見てまたため息をついた。女子には絶対手をあげないって本当だったのか、この軟派女。
「それにしても、あの子マジで誰なの……??」
「……梶 美純ちゃん。私の親友」
言ノ葉は少し肩を震わせてこう続けて言った。「私の代わりに死んだ人」と。