朝のルーティン
朝、目覚まし時計が鳴ると速攻止めて、ベッドから身体を起こす。入学式から少し経ったけど、前世の頃に戻ったみたいでこのルーティンが懐かしい。
そして朝ご飯は食堂へ食べに行きたい所だが、お昼は普通にウルも言ノ葉もお弁当を食べるという事でどうせお弁当を作るなら朝も作るかと思い、そしてまだまだ全然起きてこない隣の布団で寝てるヤツの事は放っておく。
聖は意外にも朝は苦手な様でいつもギリギリだ。
入学式の時は本当に大変だった。聖は中々起きないし、一生懸命起こした後に人が朝ご飯作ったら間に合わないから食べないって言うし、私の作ったものは信用できないってまだ言うし。
聖の良い所って私にベッド譲ってくれた所くらいしか思い当たらない。
「あー。本当に今、思い出してもムカつくな!!!!」
それにしても、静香とは別のクラスだったので今まで全然会わない。多分同じクラスの聖の仕業だろう。
ちなみにウルと言ノ葉とは同じクラスだった。本当に良かった。本当に良かった。だって私、悪魔付きだから友達なんて多分もう出来ない。何故なら、私が怖がられるから!!
後、今年の入学式の新入生の挨拶が私じゃなくて、静香だったのはちゃんと乙女ゲー通りだったのは安心した。共通ルートが変わってたら流石に焦るし。
確か、静乃的には全然良くないんだけどね。自分がトップだと思ってたら、一点差で負けてるんだから。
ま、私的には早いとこハーレム阻止したいから静香と何とか話す機会が欲しい。問題は確実に聖なんだけどね。そして、そんな事を考えてたらお弁当が出来た。美味しそう。
それに攻略対象の先輩や同級生達には出来るだけ会いたくはないんだけど、静香と話せれば、情報収集してその攻略対象のフラグを阻止しに行くのに。
「朝ご飯もこのお弁当の余りと味噌汁でいいか」
あー。制服にきがえてから、いい加減を聖を起こしに行かなきゃ。マジであの女、全然起きないんだよね。あんだけ目覚ましかけてる癖に起きないって本当になんで?? 私的に有り得ないんだけど。
寝室のカーテンを開けると眩しく、そしてこれでも起きない聖。いい加減にして欲しい。
「聖! いい加減に起きなさいよ!!」
布団を捲って、身体を揺さぶる。うん。この女、これでも起きない癖によくも私に「あなたと一緒の部屋で寝た方が監視しやすいですから」とか言えたものよね。ふざけてんじゃない??
なんて思ってたら、聖に腕をガっと掴まれて抱き締められる。
「んっ……」
そう。この女、このクールそうな面をしている癖に、でっかいクマのぬいぐるみを抱き枕にして寝ているという可愛らしい所がある。聞いたら静香に幼少期に誕生日プレゼントとして貰ったものらしい。
普通の子だったら、クマのぬいぐるみを抱き枕にして寝ているのはギャップがあるとか言って喜びそうだし。
聖って結構中性的だし、顔が良いから今の状況ドキドキしてそうだなぁ。私は聖の事、何とも思ってないから胸の高鳴りとか皆無なんだけど。
「おーい。聖さーん。私は抱き枕じゃないし、早く起きてくれないと私が朝ご飯食べる時間無くなるんですけどー」
ぺちぺちと聖の頬を軽く叩くとぼんやりとしたまま目を覚ます聖。
「……なんであなたが私と一緒に寝ているんですか」
……コイツ、本当に寝起き悪いな。そして誰のせいだと思ってんだよ。
なんて思っていると、聖は私の腕を掴んだままじっと私の手首を見つめる。
「な、なに……」
「いえ、私が掴んだ痕やっと消えましたね」
「ああ、私、色白だから余計に痕とかに残りやすいしね」
まぁ、怪我とかもだけど、身体の生傷も中々消えないんだよね。元々の悪魔付きの力のせいだから仕方ないんだけど。
ただ、お風呂で染みる。マジで染みる。そこだけが凄く難点だ。
私に冷たい癖にそういう所は気にするんだね。なんとなく少し申し訳なかったって顔してるし。私的には、もっと一緒に寝てた事に怒るかと思った。私のせいじゃないんだけど。
「なんですか。その目は」
「いや、なんでも。さ、早く起きないとアンタも朝ご飯食べる時間なくなるわよ」
ま、コイツの朝ご飯って自分で用意した手軽にカロリー取れるゼリーとかそういう食べ物しか食べないんだけど。
そう言うと、私からさっさと離れて起きる聖。
「何してるんですか? 着替えるので早く出て行ってください」
「本当にアンタ、可愛くないわね。……あ、聖はお弁当、本当に要らないの?? 要るなら用意するけど」
「……あなたの用意したものは要りませんよ」
「あっそ」
寝室を出るとため息をついついついてしまう。
静香はお弁当を自分で作るから学食派じゃない、聖は毎回売店で買ってるの知ってるからいつも言ってるけど、ずっとこの調子だ。
「本当に……私には心を開かないな。聖」