クソゲーに転生しました
双子の妹は家族に愛され、私は悪魔の子と呼ばれ、家族には愛されず、町外れの森の中の家で老夫婦と暮らしていた。
家族から愛されず、実の親ではない老夫婦と一緒に暮らす羽目になったのは私の力が問題だったからだ。
千年に一度生まれるという悪魔の力が使える子。それが私、沖田静乃だった。
悪魔の力は凶悪とされ、その力で何をされるか恐ろしい。そんな力の使える娘などさっさと殺してしまえと思うだろうがそうはいかない。
この悪魔の力を使える者はただでは死なない。その者を殺すにはその者が本当に愛し、添い遂げたいと心から想った人だけが殺せるという大変皮肉なモノだ。
だが、愛情を注がれなかった子が誰かを愛すというのは難しい話だろう。
そして、だいたい静乃は妹の攻略相手を好きになるから攻略相手に殺されてたなぁ。
それになんだその設定とも思ってしまう。そう。実は私は転生者だ。
生前は下町の定食屋で働いていて、休日は三度の飯よりクソゲーをやるいわゆるクソゲーマーで、日頃の不摂生が致命的だったのか、ほぼ寝ずにエナドリぶち込んでゲームしてたら、ぽっくり病気で逝ってしまった。
そして、私が転生してきたこの世界は私が生前プレイしていた乙女ゲーでクソゲーと名高かったゲーム「愛と光の聖女」というゲームだ。私はいわゆる、悪役令嬢みたいな立ち位置。
もちろん、ヒロインは妹の沖田静香だ。聖女の力を使え、人を癒したり、回復する力を持っている。私の持つ悪魔の力は他人を攻撃したり、操ったり、殺したりとかどう考えても禍々しい闇の力で愛される妹とは正反対。
後、この世界の住人の名前は漢字だったりカタカナだったり色々と統一感がない。
それに私、悪魔の力が使えるせいで銀髪で金色の瞳と赤い瞳のオッドアイだし。お陰で双子の妹とは容姿が全く似ていない(悪魔の力を持つ子はこの容姿)
和製の名前のクセに和製感ゼロの容姿。私は鏡に映る自分をじっくり見つめた。
というかめちゃくちゃ美少女だな。将来かなりの美人になるぞ。この顔。
そーいえば、静乃はあんまり笑わないし、かなりクールな性格だったな。
「顔だけはマジで良いんだよね。この子」
顔以外は本当にクールに虎視眈々と憎しみから攻略対象達を操って妹を殺そうとしたり、陥れたりしようとする事に全力注いでたなぁ。
殺される時も妹を憎みながらだし。まぁ、長年の憎悪ってそう簡単に消えるものでもないだろうけど。妹よりも早々に捨てた両親の方に問題あるでしょとは思うけどね。私。
この乙女ゲームの良いところって声優の演技とイラストレーターの超美麗なイラストだけだったな。
そこに金掛けて、二ヶ月後くらいにこのゲーム出した会社倒産したっけ。
バグとかフリーズとかロードがくそ長いとか立ち絵とスチル絵と声優の演技以外全てクソとか色々言われてたなこのゲーム。ハーレムルート出すのも死ぬほど大変で苦労したなぁ。
ちなみに私が転生者だと思い出したのは今日の朝の話だ。
寝て起きたら、この姿だったという。
で、静乃の記憶的に今の時点は妖付きの学校に入る前だということだ。
妖付きというのは妹だったら、聖女の力が使える。私だったら、悪魔とそんな感じに使える力に何か付いているから妖付きという。
ま、その事はどうでも良い。とにかく私は記憶的に性格が破綻している最悪の悪女みたいな立ち位置な所だ。
引き取ってくれた老夫婦の佐藤夫妻は私の事を何処か怖がっているし。
いや、まぁ仕方ないよ。性格破綻している上に妹を殺す事で精一杯だったんだから。それに自分達も殺されるかもしれないしね。
まぁ、それにしてもそうだったらさっさと佐藤夫妻を殺して家だけ乗っ取れば良かったものの。それをしなかったって事は何処か恩義でも感じてたのかな?? この子は。
「……ああ。そーいえば、静乃の救済というか過去話あったよね。公式のゲームの特典冊子で」
確か静乃は幼少期は天使の様に可愛い子で育ててくれた老夫婦に恩義を感じていた。
一人でいつもの森の遊び場に行き一通り遊んだ後、町の方にも行ってみたいと黙って町の様子を見に行った時に、静香が自分の両親が見てる傍で同じくらいの男の子や女の子と幸せそうに遊んでいる姿を見る。
それを見た静乃は幼少期から聡くて自分の立場も理解していたので、自分もああなる筈だったのにと静香に強烈な嫉妬を覚える。
だけど、よその子の自分をここまで育ててくれた佐藤夫妻の事は嫌いになれずにその場を離れ、いつも通り森の遊び場は楽しかったと佐藤夫妻に報告してたっけ。
で、成長するにつれてクールで何を考えているかよく分からなくなってきて静乃も昔みたいにあんまりコミュニケーション取れなくなってる所だよね。確か。
「素直じゃないけど、佐藤夫妻の事はちゃんと好きなんだろうな。静乃……っていうか私」
あの特典冊子見た時はただ家族に愛されたかった可哀想な子って感じだったな。
結局自分が好きな人に殺されるんだけど。
「不器用なんだろうなぁ。私も死にたくないし、静乃もやっぱり不器用なだけで根は良い子なんだから、まずは佐藤夫妻と元の関係になる所からはじめるかー」
そうして私は早速、朝食を食べに部屋から出る事にしたのだ。