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異世界転職戦記~マイノリティが集った人生逆転物語~  作者: 定光
第4章 ラッフィナート交流編
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第66話 リオーネ解放会議 前編

こんにちは。

三日連続投稿、何とか果たせました。

ここからまた不定期になるかもしれませんが、何卒宜しくお願い致します。

「どないやったん、コタロウ君?」


 誇太郎がミーティングルームに戻るや否や、フィガロが尋ねてきた。対する誇太郎は、思わぬ援軍の情報を土産ににこやかに答える。


「思った以上の援軍が見込めます。少なくとも数の劣勢は補えますよ」

「本当にか!? よかった、おおきにね♪」


 朗報を前にフィガロは心が弾んだ。


 しかし、それは表情に出さずすぐさま誇太郎を連れてある扉の前へと案内した。その扉の前にはエナジーバナナを頬張るレベッカの姿もある。


「お待ちしてましたよ、コッコデー」

「どうもね、レベッカ。時忘れの門の調子はどう?」

「魔力の感度良好、いつでも行けますよ~」

「お疲れ様やで。さてコタロウ君、くぐる前に話しとくよ。時忘れの門のこと」


 一言そう添えて、フィガロは説明を始める。


「この門は、時間の流れがほぼ止まってる特殊な部屋に繋がってるんよ。そこでどれだけの日数年数を過ごそうとも、現実の世界じゃ一分と経たずに戻ってこれる仕様や」

「凄すぎませんか、それ!?」

「作戦会議が終わった後は修練場としても使えるし、食糧も仰山備蓄されとる。もちろん時間の流れが止まってるから食べ物が腐る心配もあらへんよ」

「ガチのマジで凄すぎませんか、その部屋!?」

「んでこの部屋を作ったのが何を隠そう、特殊な門を作ることに秀でたレベッカなんよ」

「ふっはっはー、何てったってウチは時空転移学の成績トップで納めてますからね! すごいだろ、コッコデー!」

「……え?」


 チートレベルの部屋の制作者がまさかのレベッカということを知り、誇太郎は放心した声をあげてしまうのだった。


「あー、信じてないですね! いいですよ、実際に入って腰ぬかしちゃえばいいんだ! ねえ、若様!」

「せやね。実際に入って見た方が早いかもしれへんね、早速やけど準備はええかな?」

「いつでも大丈夫です、よろしくお願いします」


 そう言って二人はレベッカの見送りの元、時忘れの門の中へと入っていくのだった。



 いざ飛び込んだ時忘れの門の内部は、大理石に覆われた大広間へと繋がっていた。大きさとしては広めのオフィスルームに近しいが、窓は供えられておらずイメージとしては地下室に近い。


 壁には更にいくつかの扉があり、それぞれを開くとトイレや温泉、厨房にキッチンと文字通りの贅沢空間となっていた。


「どうかな、コタロウ君。レベッカが作った時忘れの門の贅沢っぷり」

「至れり尽くせりすぎません、ホントに!?」

「ホントにねえ、あの()普段はポンコツやけどこういう所は気合入っちゃうもんでね。まあその甲斐あってか、使い道沢山出来てるからありがたいわけやけどね♪」


 そう言いながら、フィガロは大広間の中央にある机に資料の束をドサッと置く。


「ほな早速始めようか、作戦会議♪」

「ええ、そうさせていただきたい所なのですが……」

「どしたの、まだ何か?」


 作戦会議を始められると踏んでいたフィガロは、出鼻をくじかれた様子で首をかしげる。


 対して誇太郎は、先ほど感じたある疑問を払拭すべくフィガロに尋ねる。


「いや、この時忘れの門のことではなく。さっき俺がノエミ陛下への相談を尋ねた時の答えで、一瞬だけ言い淀んだような気がしましたけど……気のせいでしょうか?」

「何のことかさっぱり……」

「でしたら、その時エミリー殿の羽が光ったのはなぜです? 彼女の魔法術(マジックスキル)は嘘を見破るものでしたよね?」


 席に座るフィガロに、誇太郎は問い詰める。


「ねえ王子様、まだ何か俺たちに隠し事とかしてるんじゃありませんか? 今朝言いましたよね、納得できない状態で『はい、そうですか』と受け入れられないって。これからの信頼関係の為にも何かあるんなら説明してもらわないと……」

「……母上に言えへん野望がある言うても、そないなこと言えるんか?」

「どういうことですか、それは……」


 食い気味に返したフィガロの質問返しに、誇太郎は真意を問おうと更に詰め寄る。


「僕かて全部を話したいわけやない、どうしても他人には言えへん……理解してもらうには時間がかかる計画があるんなら尚更ね」

「……何を企んでおいでだ、王子様」

「今はまだ言えへん。でも、これだけは覚えといて」


 一息ついて、フィガロは毅然とした態度で告げる。


魔王軍(君ら)ともラッフィナートとも敵対する気はない、これだけははっきり断言する」

「真意を伺えてもいないのにどう信じろと?」

「今やらなあかんのは僕の真意を聞くことやない、リオーネ解放の作戦を立てることやろ。優先順位を間違えんといて、コタロウ君」


 真意を問いただそうとした誇太郎だったが、逆にフィガロに釘を刺されてしまいぐうの音が出なくなってしまった。


 しかし彼の言うことも尤もだ、ため息を付いて誇太郎は従った。


「そうですね、優先事項を見誤ってました。ご無礼をお許しください」

「ええよ、気にせんといて。なら終わった後に少し話そか、ここには僕ら二人しかおらへんし丁度ええやろ?」

「分かりました」


 誇太郎のその一言を最後に、リオーネ解放の作戦会議が始まった。



 誇太郎とフィガロの作戦会議は、時忘れの門の中で五時間近く侃々諤々(かんかんがくがく)と意見をぶつけ合う形になった。しかし、所々落としどころを見つけて何とかうまくまとまり完結する。


 そうして二人が時忘れの門から出てきた時、現実の時間はフィガロが言っていた通り殆ど経過していなかった。


 とはいえ、五時間過ごした体感は抜けずそれが明確な疲労となって二人の表情にまざまざと現れた。


 そのままフィガロと誇太郎は、レベッカ達アルフレードファミリーの構成員に支えられながら寝室で泥のように眠ることになった。


 その際誇太郎は眠る直前に、フェリシアから預かった指令をレベッカに伝えて床についた。


 ベッドに潜り安堵できるかと思った誇太郎だったが、不思議と気が安らぐことはなかった。


 なぜならば、作戦会議終了後にフィガロから聞いた内に秘める野望を聞いてしまったからだ。


 フィガロが言うには「魔王軍ともラッフィナートとも敵対する気はない」とのこと。しかしその内容は、場合によっては敵対する可能性も考えられるリスキーな考えだった。。


 ――王子様、あんなこと言ってたけど……本当にそれでいいのだろうか。


 ベッドに潜りながらそう誇太郎は懸念するも、程なくしてやってきた睡魔に吸い込まれていった。



 翌朝の午前九時。


 誇太郎は転移門の前で援軍の到着を待っていた。


 すると、程なくしてアジトに正面にある転移門が開く。そして、誇太郎が要請した魔王軍の援軍が続々と姿を現す。


 開口一番で姿を現したのは、魔王軍側からの援軍――魔女のシャロンとその弟子数人だった。


「お忙しい所お出でいただきありがとうございます、シャロン先生」

「気にしないでくーださい、コタロウさーん! 来たからにはどんどん使っちゃって大丈夫でーすよ!」

「承知しました。お弟子さん達もお久しぶりです」


 過去に誇太郎はシャロンの弟子たちのある検査に協力したことがあったのだが、それはまた別の話。


 続いて現れた兵隊(アーミー)ゴブリンのウリセスとタデオに誇太郎は歩み寄る。


「君たちとは初めまして……になるかな? ウリセス殿とタデオ殿」

「おう、龍人族(ドラゴニュート)の時はしてやられたぜ!」

「君にはエルネストの圧力から解放してくれた恩を返したかったんだ。喜んで今回の作戦、協力させてほしい」


 エルネストの報告にはなかったが、タデオは十人程腕利きのゴブリンも連れてきてくれた。


 更に彼らは食糧と武器も持ってきてくれたため、兵站の不足に関しても心配する必要がなくなった。サポートにも徹してくれたゴブリンの二人に敬意を表し、誇太郎は握手を交わした。


 そして最後に現れたのは、誇太郎を支持するスカンクの獣人――バレンティアと龍人族(ドラゴニュート)の兄妹――エルネストとパトリシアだ。


「リーダー!」


 誇太郎の姿を見るなり、バレンティアが早速飛びついてきた。


「バレンティア、来てくれてありがとうな。でも、どうしてお前だけこっちに来れたんだ? ライガが来れないんなら百獣部隊(ベスティア)も忙しいんじゃ……?」

「それなんだけどね、実はライガとスミレさんから伝言預かってきたんだ」

「ライガ達が? 一体なんて言ってた?」


 参加させられなかったことで不満があったのではないかと不安になる誇太郎だったが、その不安はすぐさま消えることなる。


「『手を貸せなくてごめん、俺たちの代わりにバレンティア向かわせるから存分に暴れさせてやってくれ』ってね。というわけでリーダー、アタシ頑張るからじゃんじゃん指示出してね!」

「それは頼もしい。むしろ、今回の作戦は是非ともお前に来てほしかったからちょうどよかったよ」

「ホント? 嬉しいな、えへへ」


 はにかむバレンティアを脇に寄せ、今度はエルネストが誇太郎の前に出張る。


「よぉ、待たせたな。首長くして待ってたか?」

「もちろんだとも。遠路はるばる……いや、転移門通ってくるのって遠路はるばるなのか?」

「どーでもいいでしょ、そんなの!」


 挨拶に悩む誇太郎をパトリシアがぴしゃりと突っ込んだ。


「エルネスト兄様が魔獣季(まじゅうき)の準備で忙しい中、わざわざ力を貸してくれたのよ! もっと光栄に思いなさい、下等種ぞ……」

「うるせえ、パト。俺らの方は兵站だけしときゃ十分だろが」

「でもでも兄様ぁ~!」

「ウルガに後任せてんだ、ああいう(こま)けーことはアイツに任せればいいんだよ」

「うぬぬぬぅ……」


 歯ぎしりするパトリシアを尻目に、エルネストは誇太郎に尋ねる。


 すると誇太郎は――。


「ここだよ、この青空ミーティングルーム」


 そう言いながらスタンバイ完了しているレベッカ、エミリー、セルソ、イサーク、そしてロッサーナとダヴィデ達が囲んでいるテーブルを指さした。


 まさかの青空会議に一時目を丸くする魔王軍陣営だが、特に気にすることもなく荷物を置いてきた後それぞれ空席へと着席していく。


 やがて全員が着席したタイミングを見計らい、誇太郎は司会役を買って出て高らかに声を張り上げた。


「皆様、お忙しい所おいでいただき誠にありがとうございます。これより、ラッフィナート王子――フィガロ・マリアーノ殿より要請を受けました、リオーネ解放の作戦会議を行わせていただきます!」

いかがでしたでしょうか?

遅くて後二話ほどでバトルに入れたらと思います。

何卒宜しくお願い致します。

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