第48話 戦終われば宴が定番 最盛編
こんばんは。
今回は短めの箸休め回な宴のお話です。
何卒宜しくお願い致します。
宴会が始まってから誇太郎が注目の的となるのは時間がかからなかった。
魔王軍の陣頭指揮を執った人間。
魔人達から見たら興味の対象になるのは無理もない。この島にも多かれ少なかれ人間がいるが、それでも魔人の根本的な実力と比較すると圧倒的に魔人の方が格上だ。
にもかかわらず、魔王フェリシアから戦闘部隊の隊長という役職を与えられ、しっかりとその役目を貫き通した。魔人達から見た誇太郎の印象は、そういう印象を強く受けていた。
故に誇太郎の元には、龍人族の勢力の魔人達が大勢囲んで話を聞こうと集まっていた。
「へぇぇぇ、俺たちを翻弄した魔王軍の指揮を執ったのが……」
「こんな人間の男だったとはね」
「でも本当にお前人間か?」
「外見だけ人間って魔人も大勢いるだろうしね~、どうなの?」
思い思いの意見を口にする魔人達に、誇太郎は一言「人間ですよ、ただのね」と答える。
「いやいやいや、ただの人間じゃねーから!」
「しかも聞けばこの世界じゃない、異世界から来た人間だって言うんだろ!?」
「やっぱ信じられねーわ……」
ツッコミ交じりに驚く魔人達に苦笑しながらも、誇太郎は一瞬「ん?」と疑問に感じる一言を聞き逃さなかった。
「あれ……俺が異世界の人間って、どうして知ってるんで?」
「……俺が聞いてきたんだ、魔王軍のお医者さんからね」
ダウナーな声色と共に魔人の集まりをかき分けて姿を現したのは、人狼族のリーダーであるウルガだ。
「頭ぁ!!」
「すんません、来てるの気付かなくて!」
「ああ、大丈夫。気にしないでいいよ」
動揺する部下に穏やかにそう言うと、ウルガは骨付き肉を食べながら誇太郎と向き合うように対面側に座る。
「君が……エルさんが称賛してた人間、コタロウか」
「そういうあなたは……バレンティアが言ってた人狼族の族長、ウルガ殿……ですか?」
「その通りだよ、コタさん」
「コタさんって……」
急に自身の名を略されたことに思わず控えめに突っ込んでしまう誇太郎だが、ウルガはあまり気にせず会話を続ける。
「俺の癖だよ。名前が少し長いと略してしまうんだ」
「そ、そうなんですね……」
「ところでコタさん、音頭の時も思ったけど……もうちょっと堂々としたらどうかな? 皆をまとめる存在にしては、どこか自信なさげに見えるよ」
「え、そう……ですかね?」
「それだよ、それ」
誇太郎が丁寧語で返したのを、ウルガは鋭い爪で指差して指摘する。
「その敬語、上に立つ者が自信なさげに使うもんじゃないよ。前に誰かに言われなかった?」
「……よく、言われま……言われる」
「まあ、いきなり無理に直そうとしなくていいけど。自覚はあったみたいだね、なら少しずつでもいいから心がけていきなよ。少なくともエルさんはもっと堂々としてるよ」
「ご指摘感謝するよ、ウルガ」
苦笑交じりに自省しながら、誇太郎は言った。すると――。
「でも、それがコタロウのいいところなのよ。私としては素直に誠実な所を見せてくれるコタロウの方がいいわ」
「スミレ!」
誇太郎達の元に入ってきたのはスミレだった。彼女もまた、串に刺された鶏肉を頬張りながら誇太郎の近くに座る。
「この人はとにかく素直なのよ、良くも悪くも。この間だって……ふふっ、魔王軍の皆が見ている所で性癖を暴露した位だもの」
「ちょっ、待ってスミレさん? それ言っちゃうの、ねえ!?」
慌てる誇太郎と思い出し笑いするスミレだったが、ウルガは首を傾げて尋ねる。
「性癖? それがそんなに恥ずかしい話なのか、コタさん?」
「いや、食いついてこないで! あの時は弁明しなきゃいけないから暴露したけど、これ普通にめっちゃ恥ずかしいから。言ってすぐに後悔した奴だから!」
「でも、満更でもなかったでしょ? さっきだってバレンティアと二人で楽しんでたんじゃないの?」
「いや、それは……まあ……否定はでき……ないけど」
声を震わせながら目をそらす誇太郎に、スミレは益々面白がる様子を見せる。一方のウルガは誇太郎の「性癖」とやらにやや興味を示しながら話の続きを待っていた。
「へぇ……バレンティアと、か。スカンクの獣人ということもあってか、龍人族の中じゃ結構鼻つまみ扱いされてたけど……コタさんの性癖を刺激するとはね。彼女の何に惹かれたんだい、コタさん?」
「いや、だから食いついてこないでって!」
手を激しく振りながら必死に答えを拒もうとする誇太郎だったが、その行動は彼らの間に入ってきたもう一人の影によって水泡に帰してしまうこととなる。
「……屁だそうだ、ウルガ。コイツはバレンティアの屁に興奮するんだとよ」
「エルさん。ん……ちょっと待って、屁?」
ぐびぐびと天然の果物ジュースを飲みながら現れたエルネストの発言を前に、ウルガは一瞬呆然となった。
「ああ、屁だ。ケツから出るあの臭ェ奴」
もう一度エルネストから告げられ、ウルガは何回か誇太郎と遠くで孤児達と美味しく食事を再開しているバレンティアを見る。
そして暫し考え込む様子を見せた後――。
「本当なの、コタさん……」
「……はい、事実です」
顔を真っ赤にしながら恥ずかし気に答える誇太郎に対し、ウルガはドン引きと呆れた様子を見せる他なかった。
そんな二人を見ているスミレは今にも吹き出しそうな勢いで失笑していた。
「ごめん、ウルガ……食事中にこんなこと言うべきじゃなかったよね……」
「いや、まあ……気になった俺も悪かったよ。ただ……人間の性癖ってそういう感じ、なんだね」
「俺が特殊なだけ! 普通の人は胸とかお尻とかそういうのが好きなんじゃないかな!」
「いや、アンタ何言ってんの!?」
「ホントだよ! 何てこと言ってんだ、俺!?」
パトリシアに突っ込まれ、自身もノリツッコミしてしまう誇太郎。
それがトリガーとなったのか、スミレの失笑は限界を迎えとうとうテーブルを叩きながら爆笑してしまうのだった。
やがてその爆笑は誇太郎はもちろん、周囲にも伝播しより一層宴を盛り上げる。
ただ一人、エルネストを除いて。
しばらくして笑いの渦が収まる頃を見計らい、エルネストが誇太郎に話しかけてきた。
「……ところでコタロウ、テメェ気になってんじゃねーか?」
「あ?」
「俺たち龍人族がこうして一緒に宴の席にいるの、違和感を感じなかったか?」
「……ああっ! そうだった、忘れてた! お前に聞きたいことがあったんだ、ごめんエルネスト!」
宴の陽気な波と爆笑の渦に思わず大事なことを忘れかけ、誇太郎は思い出させてくれたエルネストに礼を言いながら詰め寄る。一方のエルネストは、ため息交じりに誇太郎を少し押しのけた。
「忘れてんじゃねーよ、クソが。まあいい。テメェにいい報せと悪い報せを伝えるよう、フェリシアから頼まれてたからな」
「わ……悪い報せって……?」
「教えてやるよ、テメェが気絶してた時に……何があったのかをよ」
*
宴の盛り上がりが最高潮になっているその頃。
酔いを醒ますように静寂な空間が広がる森の中、ライムンドは一人静かに近づいてくる影を待っていた。
「……こんな所に呼び出して何の用だ、アルバ?」
「すみません……師匠、ちょっと……大事な話がありまして」
「大事な話だと?」
そう言いながら姿を現したのは、暗がりからでも分かる真っ赤な瞳を持つ警備隊隊長のバンシー、アルバだった。両手には黄金の髑髏、カラヴェラの頭部があった。
互いに向き合う体制が整ったのを見計らい、アルバは訥々と口を開き始める。
「私の部下である……カラヴェラを、これからどうするか……についてです」
いかがでしたでしょうか?
第三章は後二話ほどで終わらせたい所です。
何卒宜しくお願い致します。




