第20話 苦手な相手でも見方を変えて接すると違う魅力が見えてくる
こんにちは。
今回もちょこっとだけ牛歩なお話です。
何卒よろしくお願いいたします。
翌日の午前九時半。
ライムンドと誇太郎は図書室からいくつかの書物を借り、会議室にて早速作戦会議に入っていた。机に座った誇太郎は、先ずは自軍の軍勢をもう一度確認していた。
「こちらから攻め込む軍勢は……警備隊と合わせて、七千二百十二人……くらいか。次は、敵勢の方も確認してみよう」
今度はスミレから預かった三年前の龍人族の軍勢の資料に手を付けた。ぺらぺらとめくりながら、誇太郎は資料の文章を呟きながら確認していく。
「野良ゴブリン……六千九百人、人狼族……二百八十人、その他の部族で三百六十人ぐらい……か。肝心の龍人族は……え!?」
手に取っていたある資料の記載に、誇太郎は思わず目を疑い立ち上がった。というのも――。
「向こうにいる龍人族って……たった二人しかいないの!? たった二人でこちらと同じくらいの軍勢を仕切ってんのか!?」
「ああ。その通りなのだよ」
「一体なんでまた……?」
「……理由は一つ、龍人族は自分たちこそが最強種だと自負するあまり同族同士では群れたりしないのだよ。今回の場合は兄妹という関係で二人いるだけで、基本的に龍人族は単独か少数で頂点に立ち、それ以外の魔人や魔物たちをまとめるような存在だ」
「自分たちこそが最強って……結構自信家なんですね、龍人族って」
「無論だ。そもそも龍人族は、魔人の中でも上位種を超える最上位種に位置する強さだ。人間とドラゴンの間に生まれたその種族は、人間と同等の知能を持ち……ドラゴンが持つ強靭な肉体を受け継いだ特有スキルも持っている。つまり……何が言いたいか分かるか、コタロウよ?」
「……まさか、万が一俺が会敵したら……勝ち目がないから戦うなと?」
「そうだ」
迷うことなく、ライムンドは断言した。
「奴らはお前が相手取ってきた上位スライムや暴君ゴブリンとは格が遥かに違う。いくらお前が強くなったとしても、まともに相手取っていい存在ではない」
「そう……ですか、そんなに強いのですか……」
「ああ。故に、龍人族とはできる限り戦わずに済むような策を練っていかねばいかん。いいな?」
「……分かりました」
つまるところ、龍人族に自然と降伏を促すような策にしていかねばならない。ライムンドはそう言いたいのだろうと、誇太郎は解釈した。
大将或いは指揮官に降伏を促し、余計な被害を出すことなく戦を終わらせる。孫子の兵法にも書かれていた一番理想的な戦の終わらせ方ではあるが、実践するとなるとやはりそう簡単にはいかない。しかも、スミレが確保した軍勢の情報はあくまで三年前のもの。そこから軍勢の総数が微動だにしていないという事はまずありえない、多かれ少なかれ増減は起きているはずだ。
「やっぱり……今の敵勢の情報が欲しいところだな」
「む?」
語りかけるようにつぶやいた誇太郎の独り言に、ライムンドは反応した。
「やっぱり……三年前の情報じゃ、当てにできないですよ。少なくともこの人数がいる……と言う最低限の情報は分かっても、ここからどう変化があったのか。今分かるような情報がないと作戦が立てにくいです」
「……やはり、そうか」
顎部分を細い指で覆いながら、ライムンドはしばし考える様子を見せる。
「ちなみにコタロウ、お前だったら……どう攻める? 敵の軍勢は置いといて、先ずは自軍のみを動かすとしたら……だ」
「自軍のみ……ですか。そういう括りでしたら、乱暴な作戦ではありますが……一つありますね」
「乱暴……お前がそういう言葉を発するとはな、具体的にはどういうものだ?」
「それは……」
と一言入れて、誇太郎はライムンドに自身が思う「乱暴な作戦」の概要を告げた。その作戦概要を全て聞き終えたライムンドは、長いため息を付いた。
「……確かにお前にしては『乱暴な作戦』と言うのも頷けるな、かなり危険な作戦だ」
「でも、これが上手くいけば……一気に本陣である砦に攻め込めます。そして、これを実行するなら……メインはライガとアンデッド兵士たちが適任かと」
「ほぉ……、ライガはともかくなぜアンデッド兵士が適任と見た?」
「それは……何となくですが、不死と言うからには……一度死んだ者が何らかの形で蘇っているんですよね?
それならば、生前とは違い疲れ知らずのような能力があるのでは……と考えました。もし、その見立てが正しければ……ライガの『体力保存』と凄まじく相性がよく連携も取りやすい。そう踏みましたが、いかがでしょうか?」
誇太郎の質問に、ライムンドは満足気に瞳を光らせた。
「その通りだ、よく見抜いたな。お前の言う通り、アンデッド共の特有スキルは一度死んだ身であるがゆえの……身体の疲労は一切なく、物理的なダメージもほとんど効かない力を持つ。その特有スキルを活かした作戦ならば……奴らが一番向いていよう。ライガ同様疲れ知らずが強みだ、相性としては申し分ない」
「それなら……!」
「とはいえ……ライガがアンデッド共を受け入れてくれるかどうかだが」
「難しいのですか?」
「……今にわかるさ。他には何かあるか?」
ライムンドの質問に、自軍のみの軍勢を動かすという条件下では「今言った『乱暴な作戦』のみ」と誇太郎は伝えた。一方で「現在の敵勢の情報も把握できて余裕があれば、『回りくどいが被害を抑えて勝てる作戦』も立てられる」という旨もライムンドへと伝えた。
「……言ってみろ、どんな作戦だ」
「ただ……こればかりは、本当に今の龍人族の軍勢の情報次第なので……現時点では何もできてません」
「……それならば致し方ないな。一先ずは最初に出た『乱暴な作戦』を念頭に組み上げていこう」
「承知しました、ちなみにこの『乱暴な作戦』の概要。ライガやスミレに伝えたいのですが、ここに連れてきてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ、連れてこい」
ライムンドの確認を得て、誇太郎は「乱暴な作戦」の概要を伝えるべく会議室を後にした。
*
「……と言うわけなんだけど、二人はどう思う?」
誇太郎は会議室にライガとスミレを呼び出し、二人が揃ったのを見計らって誇太郎は自身が考える「乱暴な作戦」の概要を説明した。
誇太郎の言う「乱暴な作戦」、それはライガやアンデッド兵士たちに囮役として戦わせ、できる限りの敵勢を誘引し手薄になった本陣を残るメンバーで攻め込む……というもの。
条件が整えば疲れ知らずの力を発揮できるライガの身体術である体力保存と、原理は違えどもライガとほぼ同じ力を持つアンデッド兵士たちの特有スキルが非常に相性が良かったため、彼らこそ「乱暴な作戦」の要となると誇太郎は睨んだ。
その一方で誇太郎が「乱暴」と言っていたのは単純な話、敵の軍勢を可能な限り誘引させる策である以上ライガ達に危険な役目を押し付けてしまう形になってしまうのだ。
それを踏まえ、誇太郎は説明するうえで「危険な作戦ではある」という前置きを入れてライガ達に説明した。対してライガ達は――。
「すっげえ燃える作戦じゃねーのー!」
「ええ、手薄になってしまえば……攻め込むのも楽になりそうね」
意外にも危険という考えはなく、むしろ肯定的な返事を返してきた。すんなり受け入れた返答に驚くも、誇太郎はほっと安堵した。が、それも一瞬だった。続けて誇太郎がその作戦で進めていくと話そうとしたその時――。
「あー、でもよー。俺様アンデッドとは一緒に組みたくねーなー」
「……え?」
まさかのライガがアンデッド兵士とは組みたくないと言い出した。
「え……と、ライガ。組みたくないって言ったけど……何でまた?」
「理由はねーなー、とにかく組みたくねーものは組みたくねーんだ。んじゃ、とりあえず百獣部隊にこのこと伝えてくるわー。じゃーなー!」
「あっ、ライガ! まだ話は……」
誇太郎が呼び止めるも、ライガは一切聞くことなく飛び出していってしまった。呆然とする中、誇太郎をフォローするようにスミレが口を開く。
「ごめん、コタロウ。ライガにはもう一度話してみるから、気を悪くしないで」
「いや、こちらこそ……。というか、何か嫌いな理由とかあるの?」
「これに関しては……アイツは理由がないなんて言ってるけど、そんなわけない。本当の理由は……単純に死体が動くのが気持ち悪いから一緒に組みたくない、これ一つよ」
「それだけ!?」
「ええ。それともう一つ、コタロウはライガの過去のこと……知らなかったかしら。アイツが父親の元にいるのが嫌だったからここにいる……って話」
「……知ってる、俺がスライム達の討伐課題に入った時に……教えてくれた」
誇太郎にとっては忘れるわけがない話であった。
まだ異世界に来て間もない時、ライガは自身の過去を語った上で「王になりたいわけじゃない、ただ自由に楽しみながら生きたい」と言っていた。自由に楽しみたいからこそ、自分が嫌だと思うことだけはやりたくないという気持ちが勝り、アンデッド兵士を迎えたくないということを伝えたかったのだろうか。
誇太郎はそう解釈した。しかし、大事な作戦の要となる以上、ただ「好き嫌い」という括りで無下に断ってもいい話ではない。
その一方で、スミレ自体はこの作戦そのものはどう思っているか誇太郎は尋ねた。気になる答えは――。
「私は全然いいと思う。むしろ、仲良くなれると私は思うわ。だって、アンデッドっていう割に明るいでしょ? コタロウも出会ってみてそれを感じたんじゃない?」
「……それはもう十分な程に」
短い間とはいえ、物静かなアルバを含む警備隊の独特の濃い雰囲気を誇太郎は胸焼けするほどに覚えていた。
「うん、やっぱり勿体ないと思う。とりあえずライガの方は私が何とかするから、コタロウは警備隊にこのこと伝えてもらえる?」
「分かった。苦労をかけてすまないな、スミレ」
「気にしないで」
最後にそういうと、スミレは会議室を後にした。そして誇太郎もまた、ライムンドに先の旨を伝えて警備隊に「乱暴な作戦」の概要を伝えるべく会議室を後にした。
*
「ライガさんと? もちろん組めるなら組んでみてえもんだわ!!」
「そっか、そう言ってもらえると嬉しいよ」
警備指令室に向かう途中、誇太郎は定時報告の為同じく向かっていた黄金装飾の髑髏兵士であるカラヴェラとばったり出会った。そして、出会い頭に誇太郎はライガとチームアップできないか尋ねたところ、カラヴェラは豪快な声色で肯定的な返事を返した。
「むしろ、俺としてもライガさんとはお友達になりてぇって思ってたとこでね。でも、向こうがどうも避けてんだよなあ。何でっすかね?」
「それは……」
と、誇太郎が思わず口にしようと思ったがすぐに取りやめた。「死体が動くのが気持ち悪いから組みたくない」など、当のアンデッド兵士であるカラヴェラを前に言うなどまかり間違ってもできるわけがなかった。
カラヴェラの心を傷つけたくない、そう思うと誇太郎はやるせない気持ちになった。そんな心情を知ってか知らずか、カラヴェラは変わらず明るい態度で話しかけてきた。
「しかし、コタロウ隊長さんも物好きなこって。初対面から思ってたんすけど、俺たちみたいな死体が動くのとか怖かったりしないの?」
「怖い……と言うよりも、『実際にアンデッドを見れた!』っていう感動の方が強いかな。俺の世界じゃ、娯楽作品でしか取り上げられない架空の存在でしかなかったからね」
「ギャッハハハ、感動って!」
「いや、真面目に感動してんだよ俺!」
「サーセンサーセン! でも、そうなると……コタロウ隊長さんの世界は想像力の豊かな世界だったってことだよな。コタロウ隊長さんの世界……生前にアンタと出会えてたら行ってみたかったすわ」
ケタケタと歯を鳴らしながら、カラヴェラは嬉しそうに言った。そんな彼の明るい人柄に、誇太郎は居ても立っても居られなかった。
「……カラヴェラ」
「ん、どうしたんだい?」
「君にはちょっと……怖くて言えなかったことがあるんだけど、言ってもいいか?」
怖くもあったが、ここまで明るく接してくれている彼に隠し事をするのは申し訳ない。誇太郎は意を決し、ライガがアンデッド兵士と組みたくない理由をカラヴェラに伝えた。すると、カラヴェラは分かり切っていたかのように再び豪快に笑うのだった。
「なーんだ、怖くて言えなかったことっていうから何かと思ったら……そんなことか! 大丈夫、それが普通の反応だから!」
「でも、嫌じゃないの? そんな一方的に『気持ち悪い』って理由だけで組みたくないって……」
「まあ確かに、ショックがないわけじゃないっすわ。でも、さっきも言ったっしょ? それが普通の反応だって。あらかじめ予想ができてるようなものなら、特別嫌な気持ちにはならないもんだわ」
「カラヴェラ……」
「ちなみに、そういうコタロウ隊長さんは……拒否するライガさんのこと、どう思ってんの?」
「俺は……」
唐突に質問返しされ、一瞬返答に詰まるも誇太郎は素直に自らの胸中を明かす。
「この異世界に来て、一番最初に俺のことを気にかけてくれた仲間だと俺は思ってる。フェリシア様以外では、アイツが初めてだ。君と同じくらいにテンションが高く明るいところは、やっぱり話していても楽しい。だから……」
「作戦の囮役としてだけじゃなく、友としても仲間としても一緒に接してほしい。ってとこっすかい?」
その問いに対し、誇太郎は頷いた上で「それともう一つ」と付け加えた。
「相手を一方的に『嫌い』という一括りで終わらせるのは、すごく勿体ないと思う」
「勿体ねえ……っつーと、どんな風に?」
カラヴェラの問い返しに、誇太郎は苦笑を時折交ぜながら思い出すようにしながら訥々と語り始める。
「前の世界はさ、俺……自分の心に嘘付きながら生きてたのさ。だから……色々職場の先輩とかにうるさく言われたり、ネチネチと言葉責めされたこともあってね。それはもう嫌なことばっかりで……、何度殴ってやろうかと思いながらも歯を食いしばって踏みとどまったことか……」
「俺ならもうその時点で『うるせぇ、黙れ!』って言っちゃうね~! でも、よく耐えられたね? それは何でまた?」
「理由は簡単だよ、どれだけ嫌な奴だったとしても……見て学べる所や共通の話題があったから」
「シンプルだな~!」
「そう、シンプル! シンプルなんだよ、カラヴェラ! 普段の口うるさいところ一つだけ見ていても……その人の全ては見えてこない。だから俺は、悪戯に拒絶するんじゃない。正面から真摯に向き合って、嫌な所以外の部分も見て学び……積極的に話し合うことにしたんだ。そうしたら……」
「そうしたら?」
「意外にもこちらに波長を合わせて、しっかりと相手が向き合ってくれたんだ。普段口うるさく言う人がだぜ? だから俺はこの時実感したんだ、『苦手だと思う相手でも、先ずはしっかりと向き合って話し合うことが大事なんだ』って。だから俺は、ライガにもそれを提唱したい。俺がかつてそうだったように、ライガもカラヴェラ達のようなアンデッド兵士とも仲良くなれる……と思うんだけど、どう……かな?」
しっかりと自分の想いを伝える中、最後の最後で再び自信なさげにカラヴェラに尋ねた誇太郎。そんな彼にカラヴェラはしばしポカンとしていたが、一瞬にかっと笑う様子を見せて盛大な拍手を送った。
「ブラボー、ブラボー! 素晴らしい考え方だ……コタロウ隊長さん! 単なるニッチな性癖趣味の隊長さんじゃなかったんだな!」
「え……やっぱそういう認識なの、俺!?」
「そりゃそうっしょ、大勢の前であんなカミングアウトする人いないって~! じゃなくって、本題に戻すぞ! そういう相手を許せるような幅広い見方ができるからこそ、アンタは俺たちのような髑髏の兵士にも普通に接せられるんだな。もしも俺だったら、仮に俺たちの存在がいくら娯楽の存在とは言え……真正面から出会ったら逃げちまうわ。
でも、アンタは逃げねぇでくれた。それどころか、部下にもかかわらず対等に話しかけてくれた。これだけでもアンタは十分、素晴らしい人間だと俺は思う」
「カラヴェラ……ありがとう」
「だからよ、コタロウ隊長さん。アンタはアンタで、もうちっと胸を張ってくれや。ライムンド軍師にもそう言われてんじゃねーの?」
「……そうだね、善処するよ」
恐らく控えめな態度を指摘されたのはこれで三度目だろう、流石に誇太郎の心の中でも「どうにかしなくては」という罪悪感が生まれた。故にこれ以上部下の前では「ごめん」という言葉は面に出さず、「何とかしよう」という前向きな発言でその場をごまかすよう誇太郎は心がけるほかなかった。
「さて、と。俺はライガさんに会ったら、とりあえず話してみるけど……都合よくそんな機会が来るかねえ。どう思う、コタロウ隊長さん?」
「まあ、そう簡単には来ないだろう……」
と、誇太郎が返した次の瞬間。
『警備隊より戦闘部隊に通達……!』
「な、何だ!?」
廊下に配備されている拡声機から、アルバの声が辺り全体に響き渡った。その声は誇太郎たちがいる廊下だけでなく、城内全体に響き渡っていく。
『エナジーバナナ栽培所にて盗難発生……! 犯人の特徴は、黒白模様の尻尾を持つ獣人……! 現在一部警備隊が応戦中、戦闘部隊は至急応援に向かってください! 繰り返します、戦闘部隊は……』
「また!? 昨日の今日じゃねーか、しかも黒白模様の尻尾ってまさか……」
「考察してる場合じゃねえ、コタロウ隊長さん! 俺たちも!!」
「分かってる、急ごう!!」
お互いに目を合わせ、誇太郎とカラヴェラは現場へと急行した。
*
カラヴェラと誇太郎が話し合っていた時と同時刻。
エナジーバナナ栽培所に、先日襲撃した獣人のバレンティアがフラフラとした足取りで訪れていた。
あれから結局、孤児たちにエナジーバナナを分け自分の分の食糧は取らなかった。自分よりも、一緒にいる孤児たちの方の身が大事だったから。家族同然の子供たちが笑顔になってくれるだけで、自身の活力になる。バレンティアはその一心で、龍人族から不当な扱いを受けても耐えていた。
だが、それでも身体は正直だった。ここしばらく、子供たちを優先するあまり自身の食事は数日間ほとんど取っていない。最後にエナジーバナナ栽培所から盗んだ時も、かなり無理をしていたのだ。
そして気付けば、ふら付いた足取りで盗みを働いたエナジーバナナ栽培所に足を運んでいた。一切れ食べるだけでも一気に力が付くそれを少しでもいい、バレンティアは生きるためにそれが欲しい。最早、彼女は手段を選ぶ余裕などなかった。
「……んっ!」
ぶぼっ! ぶぶうううううううっ!!
バレンティアはか細く力むような声を漏らし、スカートがめくれる程の勢いのおならを周囲に解き放った。一瞬にして周囲は凄まじい悪臭と黄色い煙に包まれ、大混乱に陥った。
それでも、バレンティアは構うことなかった。孤児たちを支え続けるためにも生きねばならない、その一心でバレンティアは必死にエナジーバナナを取るべく行動を開始するのだった。
いかがでしたでしょうか?
またもや執筆ペースが落ちかけておりますが、何卒よろしくお願いいたします。




