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第17話 振り返ると見えていなかった部分が見えてくることもある

二週間ぶりです。

今回は振り返り回です、仲間の能力も改めてどんなものか振り返っていただければ幸いです。

何卒よろしくお願いいたします。

 図書室から飛び出して、誇太郎が先ず探そうと思った相手はライオンの獣人であるライガだった。個人的に一番話しかけやすい存在として、何より課題を始めた最中で一番初めに自身に話しかけてきてくれたライガのことをもっともっと知りたいという一心で誇太郎は向かっていた。


 近くにいる獣人や通行人に話を聞き、ライガは食堂にいるという情報を手に入れた誇太郎は真っ直ぐそこへ向かっていく。するとそこには、豪勢な料理を前にガツガツと食事に無我夢中になっているライガの姿があった。


「何じゃこりゃああああああああああああああああああああ!!??」


 一方誇太郎は、ライガそっちのけで彼が食べている料理の数を前に驚いていた。その数は少なくとも五十皿はあり、その大半は成人男性の身長ほどの盛り付けが施されている。そんなボリュームマシマシの料理を、ライガは次々と平らげていたのだ。


「んぉ? おぉー、コタロウー!」


 ライガも誇太郎がリアクションを見せたことにより、ようやく気付いた。


「何だ何だー、今から朝飯なのかー?」

「近い近い近い、それにモノ食いながらしゃべるな! 食べかす飛んでくるから!! それよりもお前……その料理、どしたの?」

「んぁ? ああー、あれだー! 『体力保存』のエネルギー補給だぜー!」

「え……あ、ああ! そっか! 身体術フィジカルスキルの!」


 自身のことで手いっぱいになっていたこともあり、ライガの身体術フィジカルスキルのことを忘れかけていた。


 ライガの身体術フィジカルスキルは「体力保存」、三日に一度大量に食糧を取ることにより体力を保存し、三日間食事をとる必要がなくなるだけでなく疲れることもなく活動できるという身体術フィジカルスキルである。


 最初にライガの食事を取る様子を見たのは、スミレと共にホーンラビットの討伐課題を達成するときのみ。しばらくの間があったとはいえ、共に戦う仲間の能力を忘れかけてしまったことに誇太郎は何とも言えない気持ちに包まれていた。


「で、俺様に何か用かー?」


 うつむく誇太郎を気遣うように、食べかすを口周りに付けたライガが様子を伺ってきた。


「あ、いや……実はね」


 気遣ってきたライガに対し、誇太郎は訪れた理由をライガに説明した。


「なるほどなー! ライムンドさんに言われて俺様達のことを確認しろってか!」

「そういう事なんだ」

「つってもよ、コタロウー。俺様のことはもう大体分かってるだろー? 今更確認なんて必要かー?」

「あ、ああ! もちろん大事だよ!」


――さっきまで本当に自分のことで手いっぱいすぎて、ライガの能力のことまで忘れかけてたもんな……これじゃ駄目だ。


 ライガに悟られぬよう、誇太郎は胸の内で反省し発言を続ける。


「戦闘部隊の隊長となった以上、もう一度自分たちの部隊を確認して……何ができるのか、何ができないのかとかを分析していかないといけないからさ」

「ほー、なるほどなー」


 上の空のような声色で相槌を打ちながら、ライガは目の前にある料理に再びがっつく。そんなライガに、誇太郎はあることを尋ねた。


「なあ、ライガ。『体力保存』の弱みとかって、ある?」

「あ? 弱みだぁ? 心当たりねーなー」

「弱み……じゃなくても、さっき言った能力以外に気付いたこととかあったら教えてほしい。もしかしたら、俺がこの間聞いたこと以外の力もあるかもしれないし」

「気付いたこと……あ、そういや前にこんなことあったなー」

「何かあったのか!」


 興味津々に誇太郎は食いつく。


「おー、あったあった。コタロウが来る半年前かなー、たまたまその時よー。いつもより多めに飯が食いたくなってなー、ガーっと多めにー」

「いつもより……っていうと、今食っている量と同じくらい?」


 ライガが食している料理を指さして、誇太郎は尋ねる。


「そうそう、そしたら次の日からよー。爆発的にスタミナがあふれてなー、いつもは三日に一度のペースだったのが……この時だけ三週間くらい飯を取らなくても疲れなかったんだよー!」

「三週間!? いくら何でもぶっ飛びすぎじゃね!?」

「そーなんだよ、ぶっ飛びすぎだろー! でもよ、事実そんなことがあったんだぜー!」

「すごすぎない……それ?」


 明るくさらりと告げたライガの話だが、誇太郎はそれを流し聞きできるような内容ではないと判断した。三日に一度と三週間に一度では、余りにも桁が違い過ぎる。一体どういう仕掛けがあるのかと気になっていたが、誇太郎はライガが「いつもより多めに飯が食いたくなった」と言っていたことに気付いた。それについて詳しく聞くべく、誇太郎は早速言及する。


「ちなみにさ、さっきいつもより多く飯が食いたくなったって言ってたよな?」

「おー」

「で、今もそれと同じくらい……って言ってたよな?」

「おー。んで、何が言いてーんだ?」


 勿体ぶる誇太郎にしびれを切らし、ライガが尋ね返す。そんな彼に対し、誇太郎は彼の能力を自分なりに推理して告げた。


「もしかしてさ……食べる量と料理の種類によって、お前の体力保存の持続期間が変わるってことなんじゃ?」


 最初に知り合った数日間はホーンラビットのソテーを山ほど食べていた、だが今は見ての通り豪勢な料理をたくさん食べている。それはつまり、食べる量と料理の種類によってハイパフォーマンスで動ける期間が異なるのではないかという結論だ。


 そうなのではないかとライガの返答を待つ誇太郎だったが、彼は料理を山のように頬張り喋れる状況じゃなかった。やがてそれら全てを一気に飲みこみ、数秒の後ライガは誇太郎に詰め寄ってきた。


「そうだったのかああああああああああああ!!??」

「いや、知らなかったのか、お前ええええええ!!」


 まさかの自身の能力について把握しきれていなかったことに、誇太郎は反射的に突っ込んでしまった。


――そういやコイツ、初めて会話した時も……自分の能力について俺が突っ込まなかったら上手く説明できなかったよな。


 そんな不安が誇太郎の脳裏によぎるが、とにかくライガも自身の能力の一部に気付けた様子でよかったと安堵した。


「と、とにかく……振り返ってみてよかったろ?」

「おー! ありがとな、コタロウー!」

「他には何か気付いたこととかある?」

「んー、そうだなー。あっ!」


 もう一つあるという様子を見せ、ライガは嬉々として言った。


「おやつ程度にエナジーバナナを持ってるんだがよー、それをたまに食べていても三日以上持ったことあったぜー!」

「間食でも効果あるんだ……別腹みたいな感じなのかな?」

「別腹……かどうかはわからねーがよー、エナジーバナナの効果かもなー!」

「そのエナジーバナナっていうのは? というか、ライガはライオンの獣人だよね? バナナも食べるのか?」


 畳みかける誇太郎の質問に対し、ライガは最後の「バナナも食べるのか」という質問に対し激しく首を縦に振って肯定の姿勢を見せた。


「そーなんだよ、このエナジーバナナってのはただのバナナなじゃなくてなー! 一本食べるだけで一気に体力が回復する、すげえ食いもんなんだよー!」

「一本だけで!? いや、確かにすごいけど……本当にそれ食っても大丈夫なの?」

「問題ねーぜー ! 現に、アロンゾさんも危険な毒性とかはねーって言ってるから安全性もしっかりしてる。それに俺たち肉食メインの獣人でも難なく食える旨さでなー! 戦闘部隊にも各自一人ずつ持たせてるんだー!」

「なるほど……」


――これも大事な情報だな、しっかりと覚えておこう。


 ライガの身体術フィジカルスキルの情報、そして彼の口から語られたエナジーバナナなる特別なバナナ。それらの情報を全てメモに移し、誇太郎は一言「ありがとう!」と元気良く告げてその場を後にした。



「……それで、次は私のことを振り返ろうってわけなのね?」

「そうなんだよね、時間を割いてすまないが」


 次に訪れたのは、城内の中庭で鍛錬を積んでいた鬼娘オーガのスミレの元だった。


 彼女が持つ能力は、特有ペキュリアスキルは人間の倍以上の筋力を生まれながらにして持つ「金剛の加護」。そして身体術フィジカルスキルは、敵意を察知して警告する索敵に長けた「人面瘡じんめんそう」がスミレの右腕に宿っている。


 ここまでの情報は、誇太郎がスミレの元に訪れてすぐに彼女がもう一度説明してくれた情報である。


『久々だな、コタロウ。昨日までのバトル、しっかり見せてもらったが……だいぶ成長してきてんじゃねーのよ』

人面瘡じんめんそう殿、お久しぶりです。まだまだですよ……戦闘部隊の隊長として皆をまとめる以上、もっと頑張らなくては」


 にゅっとスミレの右腕から話しかけてきた人面瘡じんめんそうに、誇太郎はへりくだった態度で接した。そんな彼を見て、スミレは前に出かけた人面瘡じんめんそうを左手で押さえながら誇太郎に迫ってきた。


「な……何だよ?」

「前々から思ってたけど、畏まりすぎ。戦闘部隊の隊長になったのに、いつまでそんな控えめに接してるの?」

「そんなことは……あっ」


 スミレにたしなめられ、誇太郎は先ほどライムンドに言われたことを思い出した。


――部隊を率いる以上、及び腰な態度はやめろ。


 その言葉が脳裏によぎった瞬間、誇太郎は控えめになりかけた態度を何とか振り払ってスミレに向き直る。


「そうだね。皆を率いるわけだから、態度変えなきゃな」

「そうよ。大勢を背負うんだから、それでいいのよ」


 「やれやれ」という呆れの色はあるものの、スミレの表情はどこか穏やかだった。


「……それで、私のことだけでいいの? 部隊の詳しい情報とかはいらない?」

「いかん……、さっきライガにそれ聞いとけばよかった……。ごめんスミレ、教えてもらえるか?」


 うっかり忘れていた誇太郎に、スミレは快くうなずいた。


「いいわ、教えてあげる。先ずは……私が率いる悪鬼部隊デモーニオから説明するわ。所属人数は四千四百五十七人、種族はオーク、トロール、そして……私と同じオーガといった力自慢の種族で構成されてる。だから数で押し切ろうと思えば行ける部隊だけど、一方で単純すぎるのが玉に瑕ね」

「なるほど……そんな力自慢をまとめられるスミレもすごいな」

「ありがと……」


 照れくさそうにしながら、スミレは説明を続行する。


「次はライガが率いる百獣部隊ベスティア。その名の通り、ライオンの獣人・ライガを筆頭とした獣人の部隊で、所属人数は二千五百五人。こっちは悪鬼部隊デモーニオと違って力自慢は多くないけれど、獣人の特有ペキュリアスキルを活かして動物特有の戦い方や戦場の環境に合わせて戦う部隊ね」

「……意外にも知的な部隊なんだな」

「ライガが単純なだけで、部隊そのものは私の所と比べると結構頭脳派な所なの。それに戦い方も力で押し切る悪鬼部隊デモーニオと違って、百獣部隊ベスティアは技術を活かした戦い方が得意……と聞いてるわ」

「技術を活かした……」


 「技術」という単語を耳にし、誇太郎はライガがスライム達との課題で披露した武術を思い出した。


「それって、ライガの場合で言うと……『獅子武術レオナマーシャルアーツ』って奴?」

「その通りよ。獣人の特有ペキュリアスキルは、モデルとなった獣の力を色濃く受け継ぐものなの。ライガの場合ならライオン、象の獣人なら象の力を生まれながらにして持つ……みたいにね。そして、その獣の力を活かして編み出した獣人独自の武術が……」

「『武術(マーシャルアーツ』ってわけか、なるほどな」

「正確には『獣武術ベスティアマーシャルアーツ』って言うんだけど、長いから『武術マーシャルアーツ』でも十分通じるわ」


 獣人の詳細な情報も明らかになった所を、誇太郎は透かさずメモに書き起こしていく。そして、まとめた情報を反芻していくうちに誇太郎はふとした疑問が浮かんだ。


「スミレ……ちょっとした疑問なんだけど、いいか?」

「どうしたの?」

「ライガの……ライオンの特徴って、何だ……?」

「……はい?」


 文字通り、素朴な疑問だった。スミレの説明から出てきた獣人の特有ペキュリアスキルを前に納得しようとした誇太郎だったが、改めてライガのことを思い返すとライオンの特徴とはいったい何なのか全くイメージできなかった。


 それを踏まえて尋ねたが、スミレは――。


「そういうのはコタロウが知ってるものだと思ったけれど、分からない?」

「分からないから聞いてんだよおお! えっ、待って! ライオンの特徴って一体何だ!?」


 今まで考えてもいなかったことだったが故に、誇太郎は思わず狼狽する他なかった。戦闘部隊の隊長としても、同じ釜の飯を食い合う仲間としてももっと知るべきだったのに何で分からなかったのだろう。そう思えば思うほど、誇太郎の狼狽は強くなるばかりだった。


 そんな彼にスミレは――。


「落ち着け!」


 普段冷静な印象のスミレにしては珍しく、中庭に響き渡るような大きな声で誇太郎を諫めた。


「今のそれって、そんなに重要じゃないでしょ? 大事なのは、私たちの軍勢とか……じゃない?」

「あ……」


 冷静になった誇太郎は、ざわめく心を鎮めるべく顔を叩いて無理やり落ち着かせた。


「……ごめん、そうだった。でも教えてくれてありがとう、スミレ」

「いいのよ。ちなみに、他に知っておきたいことって何かある? 私にも協力できそうなことがあったら手伝わせてほしいのだけど」

「いいのか? それじゃあ――」


 次の現場に向かう直前、誇太郎はちょっとしたことをスミレに頼みその場を離脱した。

いかがでしたでしょうか?

次話も近日中に投稿する予定で執筆してまいります。

何卒よろしくお願いいたします。

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