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第168話 カジミアVSクーノ

こんばんは。

一週間ぶりの最新話投稿です。

今回からバトルパート多くなります、何卒よろしくお願いいたします。

 鉄製の盾で突撃するクーノと、手甲で殴りかかるカジミアの攻撃がぶつかり合う。


 互いの得物が交差した瞬間、耳を(つんざ)く金属音が轟く。


「うひょおおおっ! 痺れるねええええっ!!」

「爆弾魔の鉄拳、舐めちゃ駄目なんだなああああああっ!!!」


 両者共々、想定以上の力を前に喜悦の声を上げる。


 そのまま鍔迫り合いになるかと思いきや――。


「ふんぬぁっ!!」


 カジミアの力が急速に膨れ上がる。


 直後、カジミアのパワーがクーノを押し飛ばす。


「んぬぁああああっ!!!」

「マジでえええええっ!!??」


 カジミアに比べ、体重もパワーも圧倒的に足りていないクーノは盾ごと吹き飛ばされた。


 更に畳みかけるように――。


「プレゼントなんだな、どうぞ!」


 追撃の爆弾をカジミアが投げる。既に導火線も着火されており、爆発寸前の状態だ。


 だが盾を構えているクーノは動じない。


「そんなんで、クーノさんの盾は壊せませえええんっ!!」


 カジミアの投げた爆弾は、盾を構えたクーノの眼前で炸裂。


 凄まじい破壊力を誇るカジミアの爆弾だが、クーノは見事凌ぎきった。


「ほら見たことかああ!」


 ドヤ顔を決めるクーノ。


 だが、カジミアの手数はまだあった。


「一発防いだくらいで安心するなよ」


 張り付けた笑みで更に二発の爆弾を投げる。


「うおおおい、息つく暇なしかあああい!!」


 クーノが叫ぶと同時、火力の上がった爆発が二人の間に発生する。


 爆弾を増やした分、威力はそれなりのものとなった。


「さーて、これで倒せたら苦労はしないんだな」


 クスクス笑いながらも、カジミアは硝煙の先にいるであろうクーノの様子を警戒する。


 相手は曲がりなりにも武闘派マフィアの一人、簡単にやられはしないことは明白だ。


 すると案の定、煙の中からクーノの盾が勢いよく顔を出す。


 爆発を二度も食らったにもかかわらず、その勢いは衰え知らずだ。


「今度はこっちの番ですぜえええ!!」

「そう来なくっちゃ面白くないんだな!!!」


 次の瞬間、頑丈な鉄塊がカジミアの巨体に炸裂する。


「起死回生の鋼鉄盾突撃(シュタールアングリフ)ううううっ!!」

「おおおおおっ!!!」


 勢い付いた鋼鉄の盾は現世界(げんせかい)の自家用車の体当たりそのもの、常人が受け止めることなど本来ならば不可能。


 だが、武闘派傭兵の一人でもあるカジミアは――。


「いい、タックルなんだなあああああああっ!!」


 何と真正面から受け止めてみせた。


 同時――。


「あ、零しちゃったんだな」


 素っ頓狂な声色で、カジミアは胸元から小型の爆弾を落とす。


「いや、マジかよオイ!!」


 このままでは巻き込まれる、クーノはやむを得ず後退を選択した。


 程なくして、カジミアの足元で小型爆弾が炸裂する。


 後退したクーノとは正反対に、カジミアはまともに爆風を食らった。


「あ……あっははは、自爆してやんの! ウケるー!」


 見事なまでに自爆したカジミアを見て、クーノは腹を抱えて爆笑する。


 だが、その笑いは即座に反転することとなる。


 何故なら――。


「おー、いてて。思ったよりも勘のいい奴なんだな、おかげで左足痛めちゃったじゃないか」


 爆傷を負いつつも平然と向き直る、カジミアの姿が現れたからだ。


 左足が黒焦げになっているも、仕込み甲冑を壊した程度にとどまっており、「痛めた」と言えどカジミアにとってはまだ動けるように見える。


 その異様なタフネスさにクーノは動揺を禁じ得ない。


「うーわ、マジで? ここまで耐える武闘派さん、エージェント人生史上初だよ……」

「お褒めに預かるんだな!」

「褒めてねーよ! 驚いてんの!」


 即座に突っ込みつつ、数度の応酬で見たカジミアの戦闘をクーノは分析する。


 開口一番で受け止めた鉄拳は、外見に違わぬ強烈な威力を誇っていた。薄い鉄板くらいなら容易に風穴を開けられることだろう。


 次に自身の盾で突っ込んだ一撃をも受け止める防御力、胸元から落とした爆弾に耐えきる耐久性。いずれも常人越えしており、侮れるものではない。


 そして何より脅威なのは、戦狂いの猫(クリークス・カッツェ)の爆弾魔という二つ名にもある通りの爆弾の使い方だ。


 カジミアは追撃のタイミングが的確だった。吹き飛ばした直後の隙に投げるタイミング、力比べを避けるべく自傷覚悟で距離を取らせた判断力。


 以上の点を踏まえ、クーノは確信する。


 ――まいったな。思った以上に強いぞ、これ。伊達に有名な傭兵団の一人じゃないってわけね。


 眼前の相手は、手加減して勝てる相手ではないと。


「いやあ、強いなアンタ。流石は戦狂いの猫(クリークス・カッツェ)の一員ってとこかな」

「それ以上褒めても何も出ないんだな。あ、爆弾ならいくらでもプレゼントするけど」


 調子よく笑うカジミアに同調するように、クーノも口角を吊り上げる。


「折角だけど遠慮しておくよ。これ以上押されてたら、リカードさんのエージェント失格だもんね。というわけでぇ……」


 低い声音でクーノは告げる。


「ちょこーっとばかし、本気出しちゃうよ」


 目の色が変わったクーノの雰囲気に、カジミアも笑みを消す。


 ――来る。


 カジミアが警戒態勢を強めた瞬間、クーノが盾を持って再スタートを切る。


 そのスピードは先ほどとは明らかに一線を画していた。


 ――見てて思うけど、鉄の盾持ってる割りにとんでもない速さだな。頑丈だけど軽い鉄……ライトメタル製と見たんだな。


 そう分析しつつ、カジミアはクーノの突進を食い止める。


 するとクーノは一瞬後退し、盾で殴りつけてくる。


 一度では終わらない。正面、左右、上下とあらゆる角度から鉄盾の打撃を繰り出す。


 カジミアはクーノの打撃を捌き続ける。だが、それは――。


 ――速い……爆弾を出す暇なんか作らせない気だな。


 反撃に移れないことを意味していた。


 それでもカジミアは伺っていた。クーノの怒涛の連撃を捌きつつ、ほんの一瞬生まれるであろうコンマ一秒の隙を。


 幾度かの攻防を続け、クーノの突き上げをいなしたその時。


 ――ここだな!


 ようやくクーノの隙が生まれた。


 間髪入れずカジミアは左手に爆弾を持ち――。


「隙ありだなあああっ!!」


 がら空きとなったクーノに叩き込もうとした。


 だが――。


「……そう来ると思ったぁ♪」


 カジミアの手口は読まれていた。


 相対するクーノが右手に握るは、何とショットガン。


「うお……!」


 ショットガンの照準は既にカジミアの右腹部に向けられていた。


 ――しくじった。これは躱せない……!


 カジミアが肚を括ると同時――。


「動けるおデブを(しゃ)()ああああああああああああああつっ!!」


 ドガァンンッ!!


 天を(つんざ)く爆音と共に、クーノのショットガンが火を噴いた。


 それは容赦なく――。


「ごあっ……!」


 カジミアの腹部を穿ち抜いた。


 カジミアとて無防備ではない、無論衣服の下に防具は仕込んである。


 だが相手はショットガン、防具を完全に破壊したわけではないにせよ、飛んだ散弾の数発は明らかにカジミアの腹を抉り抜いた。


 豊満な脂肪の盾と防具がなければ確実に死んでいた。


「中々……ごぶっ、やるんだな……君」


 吐血交じりにカジミアは言葉を絞る。


 対してクーノは、隠すことなく己の得物を見せびらかす。


「無骨に盾を振り回す脳筋だと思った? 残念、クーノさんはショットガンと盾を使いこなすエージェントなのです!」


 左手に構える鋼鉄の盾と、右に構えるシャープなデザインのショットガン。これこそがクーノが見せる真の戦闘スタイルだ。


 相手に深手を負わせたことで、戦局は一気にクーノへと傾いた。


 だが――。


「なるほど、盾使いかと思ったら……シールドガンナーだったんだな。オッケーオッケーなんだな」


 腹部を抉られているにもかかわらず、カジミアは得心がいった反応を見せていた。


 そして、心底嬉しそうな笑顔をクーノに向ける。


「もう大体分かったから、完膚なきまでに叩き潰すんだな!」


 カジミアの向けた笑顔は、クーノの背筋を凍らせるには充分だった。


「えーっと……あれ? アンタ、状況分かってる? 風穴開いてんだけど!?」

「よくあることなんだな、気にするな!」

「あるわけねーだろ!」


 反射的にツッコミを返すも、クーノの動悸は止まらない。


 確かに深手は浴びせた、常人なら耐えられるわけなどない一撃だ。


 それを眼前の爆弾魔は、食らって尚も笑っている。


 カジミアの常軌を逸した笑顔が、クーノの動揺を煽る。


 そんなクーノの心情など露知らず――。


「それよりも、一つ聞きたいんだな」


 カジミアはクーノに一つの問いを投げる。


 両手に爆弾を持った状態で。


「残してほしい五感を言ってほしいんだな! 視覚? 聴覚? 嗅覚……は放屁爆弾で駄目になったか。まあとにかく、好きに選んでいいんだな!」


 無邪気に問うカジミアの言葉は余裕故か、はたまたハッタリか。


 真意は笑みに隠れて現れない。


 対してクーノは思考を張り巡らせる。


 ――カジミア・フェット……クーノリサーチによれば確か、元曲芸師の爆弾魔……だったっけ。


 クーノは己の諜報力を基に、カジミアの情報を洗い出す。


 ――――――


 カジミアはかつてフリーの曲芸師だった。爆弾を作れる魔法術(マジックスキル)であらゆる爆弾を作り、パフォーマンスに用いることで生計を立てていた。


 だがある日のこと、爆弾の調整を誤り、観客を巻き込んだ大事故を引き起こしてしまった。


 奇跡に死者は出なかったものの、多くの負傷者を出した以上、曲芸師で食べる道は絶たざるを得ない。曲芸師を引退したカジミアは、流れるように傭兵として生きることを余儀なくされた。


 だが、結果としてカジミアは大成することとなる。


 曲芸師時代に培った爆弾作りのスキルは、あらゆる戦況で活かされた。


 閃光弾に煙玉、小型爆弾に属性攻撃の爆弾と作れるジャンルは幅広い。


 加えて肉弾戦の腕も経つ。カジミア本人は意識してなかったが、傭兵として名を轟かせるのは必然だった。


 そして良識派の戦闘狂で名を馳せる、戦狂いの猫(クリークス・カッツェ)へと加入したのだった。


 ――――――


 改めてカジミアの略歴を振り返れば、彼の手玉に取るような言動は曲芸師由来のものだったとクーノは理解する。


 振り返った末に出した結論は――。


 ――まともに乗っかれば、手玉に取られてやられる。


 これだった。


「残してほしい五感……ね」


 ため息を付くように口を開くと同時――。


「どれもこれも譲れないねええええっ!!!」


 鉄盾とショットガンを手に突撃する。


 クーノが正面突破を選択した理由は実にシンプル、怒涛の勢いでゴリ押せばいいと至ったからだ。


 カジミアの腹部に深手を負わせた事実は覆らない。ならば、勢い任せで何度もショットガンを叩き込めば勝てる。これが、クーノが見出した勝利への方程式だ。


 一方、カジミアは――。


「まあ、そう来るしかないよなああ!」


 まるで予想していたかのような言葉を飛ばす。


 同時、右手に握る物体を投げる。


 ――爆弾!


 クーノは飛んでくる物体を爆弾と見なし、防御陣形に入る。


 だがその予想は外れることとなる。


 物体が盾に触れた瞬間――。


 ゴキィィンッッ!!!


 爆弾らしからぬ金属音が上がる。


「て、鉄球!?」


 そう、爆弾かと思っていた物体は何と鉄球だった。


 その威力は盾をめり込ますほどの威力を誇っていた。


 重量のある鉄球が故にではない。それに加えてカジミアの投擲力が合わさることで、並々ならぬ破壊力へと昇華していたのだ。


「君の!」


 ガキィンッ!


「盾が壊れるまでっ!!」


 ギィンッ!!


「投げるのを止めないんだなあああああっ!!!」


 ゴギイイイインンンッ!!!


 カジミアの鉄球は留まることを知らない。


 立て続けに投げつけられる鉄球は、さながら砲弾の雨そのもの。


「ちいいっ!」


 クーノは盾で防御するも、それも徐々に削られていく。鉄球がヒットする度、その陥没度は深くなる一方。自慢の盾が破壊されるのも時間の問題だ。


「やべぇ……このままじゃ、盾が死ぬ……!!」


 額に汗を滲ませたクーノは腹を決める。


「なら、ワンチャン逆転狙うしかないっしょおおおおっ!!!」


 盾を捨て、ショットガンを手に突撃を敢行する。


 カジミアに深手は負わせている、もう一撃ショットガンを浴びせれば確実に死ぬ。


 ならば先手必勝、これ以上攻撃させずに速さで潰す。そのつもりでクーノは攻めに転じた。


 だが、その目論見はあっけなく崩れることとなる。


「そう来ると思ったんだなっ♪」

「んなっ……!?」


 クーノが飛び出すタイミングを見計らうように、カジミアは二つの爆弾を投げていた。


 直後――。


 ビギィィィィイイイイインンンッッ!!!


 クーノの両サイドでガラスをたたき割ったような轟音が轟いた。


 同時、クーノの鼓膜が破壊される。


「ぎっ……!?」


 カジミアの投げた爆弾は轟音爆弾撃(ドフュネンデ・ボンベ)、爆風と爆炎がない代わりに爆音に特化した爆弾だ。


 炸裂した瞬間、爆発圏内にいた者の三半規管と聴力は破壊される。


 それをクーノは至近距離で二つも食らったのだ、最早立ってなどいられない。


「あ……がぁ……」


 ――まずい、意識が……!


 平衡感覚を失ったクーノは、力無く膝を付く。


 意識を混濁させるクーノの眼前に、カジミアは不敵な笑みを浮かべて立つ。


「オイラのことを、ただ単に頑丈で動けるデブな爆弾魔だと思ったんだな?」

「お……ぁ……」


 カジミアが問うも、クーノは答えることが出来ない。


 無理もない、鼓膜を破壊された彼に応答などできるはずもない。


 だが、相手は里を乗っ取ろうとしたマフィアの一員。情け容赦など必要ない。


 カジミアは右拳を握って続ける。


「でも、残念だったな!」


 そして、無情な鉄拳がクーノの顔面に振り下ろされる。


「カジミアさんは駆け引き上手な爆弾魔さんでもあるんだなあああああああああああっ!!!!」

「ごっ……!」


 その一撃は、僅かに残ったクーノの意識を完全に刈り取った。


 白目を剥き、クーノは寝そべるようにうつぶせに倒れ込んだ。


「……命までは取らない。けど、これに懲りたら大人しく退くんだな……って、どの道聞こえちゃいないか」


 腹部の深手を庇いつつ、カジミアはクーノに背を向ける。


 暴王の嘲笑(タイフリッシュ)陣営の一角は、確かに削った。


 だが、カジミアも無傷で勝ったわけではない。


「ぐぶっ……久々に深手もらっちまったんだな。ポーションで回復……しきれるかな、これ」


 懐からポーションを取り出し、カジミアはぐいっと飲み込む。


 そして空き地から離れ、坂道の道中の壁際に背を預けて腰を下ろした。


「スミレ達は……無事、辿り着いたかな。フリーデも……大丈夫かな。ちょっと休んだら、オイラも増援に行かないとだな」


 荒い息遣いで、カジミアは静かにスミレ達の健闘を祈った。


 だが、奪還戦はまだ始まったばかり。


 激闘の苛烈さはここから更に増していく。

いかがでしたでしょうか?

次回はより一層臨場感を上げられたらと思います。

何卒よろしくお願いいたします。

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