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第15話 ⅠとⅡの総評、そして最終課題Ⅲという名の総力戦

お久しぶりです。

またもや投稿期間が開きすぎてしまいました。


今回は久々に情報量の多いお話となります。

何卒よろしくお願いいたします。

 最終課題Ⅱの翌日。


 誇太郎は魔王城内の大広間の壇上に立たされていた。そこには今までの最終課題を観戦していた魔王城内のメンバーや幹部たち全員が集っており、壇上に立つ誇太郎に視線が集中していた。


 なぜ、こんなことになったのか。


 事の経緯としては、昨日の暴走についてフェリシアから直々に説明をすることになったため、心力型の魔法術マジックスキルの保持者でもある誇太郎本人の口からも説明する必要があった。その為、現在誇太郎は皆の視線が集中する壇上に直立不動の姿勢で立っていた。


――やばい……流石に緊張する。


 誇太郎は針のむしろに立たされた気分になっていた。暴走してしまった申し訳なさに加えて、前々回、そして前回と誇太郎は両方の最終課題で気絶して終わってしまっていたからだ。勝ちを収めたとはいっても、自身がしっかりと「勝った!」というアピールを示せたかというとお世辞にも言えないと誇太郎は考えていた。しかし、フェリシアは――。


「達成してんだから素直に喜べ!」


 と一言。それに加えて、最終課題Ⅲについて城内全員に伝えなければいけないことがあるとも言っていた。とにもかくにも、魔王城内全員に通達される大事なことが自身の魔法術マジックスキル含めいくつかあるという事を誇太郎は把握した。


「さて……それじゃあ、始めっか」


 壇上に座るフェリシアがそういうと、彼女の傍らにいるライムンドは静かに頷き高らかに告げた。


「これより、樋口誇太郎ヒグチコタロウの総評並びに最終課題Ⅲについて重大告知を始める! 者ども、一言一句しかと聞き届けよ!!」


 厳格な口調で告げられたライムンドの発言に、城内は一同ピリッとした静寂に包まれた。その静寂が誇太郎の緊張の鼓動を上げていく。


――そんな緊張感上げないでくださいよ……!


 そんな切実な思いにライムンドが気付くはずもなく、淡々と彼は次の発言に移る。


「それでは初めに、コタロウの総評について行う。概要については……フェリシア、頼むぞ」


 ライムンドに呼ばれ、フェリシアはスッと立ち上がり入れ替わるように壇上の先頭に歩を進めた。


「今日もよく集まってくれた、お前ら! 名乗る必要はねーと思うが、あらかじめ言っておく! 魔王のフェリシア・グランデ・アロガンシアだ!」

「分かってる。いいから早く本題行け」


 冷淡にぼやくライムンドの発言にむくれながらも、フェリシアは一旦咳ばらいを入れて続ける。


「総評に入るその前に……改めて、最終課題の概要について話してくぞ。今回……『最終課題』と称して上位アークスライム、暴君タイラントゴブリンの討伐任務を与えた。理由としては、コタロウが『戦闘部隊隊長』として相応しいかどうか実力を見極めるためだ。残る最後の最終課題の龍人族ドラゴニュートの砦に立ち向かうためにもな」


 改めて最終課題の概要について述べたフェリシアの言葉に、ロッサーナ含め城内の面々は相槌を打ちながら頷く。


「ただ……コタロウの能力についてまだ伝えてない情報もある、先ずはそれについて話そうと思う」


 ついに明かされる、誇太郎の能力についての全容。大事な情報を前に、城内の視線は全員フェリシアに釘付けになった。全員の視線がしっかりと向けられたのをざっと確認し、フェリシアはニッと一瞬笑んで続ける。


「先ずは身体術フィジカルスキルからだ。コイツに与えた身体術フィジカルスキルは、『柔軟な肉体(フレキシビリティ)』。イメージした動きを自動的に反映させる身体術フィジカルスキルだ。最終課題ⅠとⅡで見たから分かるかもしれんが、既にコイツには戦うイメージができている。『戦式せんしき』と称した戦い方みたいだが、これについてはコタロウ。お前の口から伝えな」


 発言の権限を誇太郎に移して、フェリシアはいったん下がる。


「えーと……変わりました、樋口誇太郎ヒグチコタロウです。『戦式せんしき』というのは、俺が愛読している本である『二大剣豪列伝』の二人の主人公の戦い方です。それぞれ技術専門の『黒鉄自由彦くろがねみゆひこ』、パワー専門の『志久間義衛門しくまぎえもん』といった風に差別化しております。簡潔な説明になりますが、以上……です」


 誇太郎が説明を終えると、入れ替わるようにして再びフェリシアが前へと出てくる。


「次に、魔法術マジックスキルについてだ。先ず魔法術マジックスキルの種類についてだが、与えたのは『心力型』だ」


 「心力型」の名がフェリシアの口から出た瞬間、城内は一気にざわめき始めた。


「心力型!?」

「嘘だろ……あの!?」

「道理であんな強力なわけだ」

「でも、心力型って……島内でフェリシア様以外にいた?」

「いや、いなかったはず。そもそも心力型を持つ奴がいること自体すごいことだ」

「じゃあ、まさか……フェリシア様が自ら心力型を作って……与えたってこと!?」

「そんなことできるのか!?」


 周囲の様子を見る限り、「信じられない」という印象が伝わってくる。一体何が信じられないのかと誇太郎が思ったその時、スミレが挙手交じりに起立する。


「お姐様……、コタロウに心力型を与えられたって……本当なのですか?」

「まあな、ニッヒヒ」


 明るい笑みと共にあっさり返すフェリシアだったが、スミレの質問はまだ終わらなかった。


「お体の方は大丈夫なんですか!?」

「……流石にちっとばかし疲れたわな。でもそれは、お前らとコタロウを初顔合わせさせた時に見ていたろうから……分かっていたと思ってたんだが」

「確かに……誰かに能力を与えるなんてほとんどなかったものでしたから、それなりに体力や魔力を消費なさっていたとは思ったけれど……まさか心力型まで与えていたなんて想像できませんわ。今は何ともありませんの?」

「全然、問題ねえ! とはいえ、心力型与えんのは初めてだったから上手くいくか分からなかったが……意外にもできたからよかったわ。とりあえず本題に戻すぞ、お前ら!」


 そこまで言うと、パンパンと手を叩いて一旦話を元に戻してフェリシアは続ける。


「コタロウに与えた心力型魔法術マジックスキルの名は、『感情色(エモーション・カラー)』。どんなことができるかというと、大きく二つの特徴がある。

 一つは『戦闘時において感情を爆発させて発動することにより、心力の種類ごとに様々な付与を得られる』って力、もう一つは『主に戦闘時において強い感情を爆発させた時、その強く抱いた感情が新たな心力として所有者に宿る』力だ」

「それってつまり……、属性攻撃型みたいに心力の種類によってさまざまな力が発動するってことと、昨日みたいに瞬間的に爆発させた強い感情がそのまま新たな心力として手に入る……ってことですか!?」

「その通りだ、コタロウ。流石目ざといな、ニッヒヒヒ。だがな……得られるのは強いメリットだけじゃない、代償がでかいデメリットもある」


 苦い顔をしながらフェリシアはさらに続ける。


「メリットは今伝えた通り、心力の種類ごとに多様な戦い方ができるってのがある。シャロンの講座で学んだと思うが、心力は絶やさなければ半永久的に持続する魔力代わりの魔法術マジックスキルの原動力だ。上手く扱えれば、不利を覆すのも楽勝になるだろうな」


 「半永久的」という言葉を耳にし、誇太郎はシャロンの元で教わった心力型の強さを思い出す。そう考えると相当な強さの魔法術マジックスキルを与えられたんだと自覚するが、フェリシアは「だが」と一言おいてデメリットについての説明に移る。


「その一方でデメリットは、自身の肉体以上の心力が爆発したら暴走する危険性がある。例えば、昨日の暴君タイラントゴブリンの時が分かりやすい具体例だ。それでだ、コタロウ。いくつかお前に聞きたいことがある」

「聞きたいこと……ですか?」

「ああ、そうだ。お前の感じた通りの、素直な感情で答えてくれ。いいか?」

「承知しました」

「じゃあ、先ず一つ。暴君タイラントゴブリンに屁をぶちかまされた時、どう思った?」

「……と、申しますと?」


 と、誇太郎が質問を返した瞬間、フェリシアは彼の眼前にグイっと迫り低いトーンで告げる。


「聞き返さなくていい。率直にお前の思ったことを言え、どう思った?」

「え……えーと、まあ……腹が立ちました。己の性癖が冒涜された感じがして」

「そん時、どんな感じだった? これもお前が感じた範囲で答えろ」

「感じた範囲……」


 誇太郎は明確に覚えていた。あの時、怒りの感情が全身に満ちて破壊的な衝動に駆られてしまったことを。最終的にスミレが止めなければ、暴君タイラントゴブリンに対し更に苛烈で過激な攻撃を続けてしまっていただろうことを。


「……あの時は、怒りに支配されて……コントロールが効かなくなっていたのを……覚えてます。そうだ、ああ……フェリシア様の仰る通り、あの時俺は強い怒りに呑まれて……完全に暴走していた……。今の俺には、とても扱いきれる代物じゃない……」


 当時の様子を思い返し、誇太郎は自分の暴走に対し悪寒が走る感覚を覚えた。結果よりも、自身が暴走して歯止めが効かなくなっていたその事実に、誇太郎は渡された魔法術マジックスキルに恐れを抱いてしまったのだ。そんな彼に、フェリシアは自身の考えを迷うことなく伝えた。


「それは仕方ねえ。突然新たに生まれた『怒り』の心力をいきなりコントロールしようったって、逆に振り回されるのは当然だろ? 何せ、使い慣れてない新しい心力が宿ったんだから」

「そういうものなんですか……って待って、フェリシア様! まさかそうなること分かっていたんですか!?」

「まあまあまあ、落ち着け! あたしもここまで強力な心力をお前が宿していたとは知らなかったし、ましてや暴走するとはあの時思ってなかったんだ。それに関しては……すまなかった、許せ」


 自身の非を潔く認め、フェリシアは魔王の身でありながらも謙虚に誇太郎に向け謝罪した。そして、すぐに顔色を変えて先の態度とは打って変わった様子で続ける。


「とは言え、暴走した状態であの強さだったんだ。なら、次からはそれをどうコントロールして戦うか。それを考えていこう。その暴走を我が物にした時、お前の力は完成するだけじゃなく……状況に応じて無限大の発展を得ることにも繋がるはずだ」

「なるほど……。また、新たな自己課題ができましたね……」


 苦笑と共に納得する誇太郎を前に、フェリシアは期待を込めた眼差しで微笑む。そして、くるりと城内のオーディエンスに視線を移す。そこには、フェリシアの説明を聞き終えた面々が侃々諤々と議論を広げている様子があった。


「以上がコタロウの能力の全容だ。他に何か聞きたいことはあるか?」


 フェリシアの説明が終わり、誇太郎に与えられた心力型の魔法術マジックスキルの強さがより顕著に伝わり、城内の面々は各々それぞれの反応を示す。


「感情によって強さが変わる……か」

「それなら、あの時の『怒り』の説明も付くね」

「でも……そうなると、有利にも不利にもなりかねないか?気分によって戦況が変わる……ってことなんだろ?」

「確かにそれもあり得るな……、そう考えると不安定な部分も強そうだな」


 暴君タイラントゴブリンとのバトルが終わった時と同様、魔法術マジックスキルの強さについて賛否両論が広がっていた。すると――。


「……いくつか、質問をしてもよろしいか……だゾ」


 侃々諤々と議論が広がる中、エルフのロッサーナが挙手する。それをフェリシアは即座に発見し、「いいぜ」と彼女に質問を促せた。


「先ず……コタロウが糧とする心力は一体何なのか、教えてほしいのだゾ」

「おう、いいぜ。先ず元々宿していた心力は、『素直』、『忍耐』、『根性』の三つだ」

「なっ……!? 三つも!?」


 驚きを隠せないロッサーナに、フェリシアは矢継ぎ早に続ける。


「これに加え、最終課題のⅠとⅡで『覚悟』と『激怒』の二つを習得した。今ん所は合計五つの心力を宿していることになるな」

「信じられないのだゾ……。心力は宿せるにしてもせいぜい一つのはずが、今のコタロウは五つも宿しているというのか……!?」

「信じられねえだろうが、事実だ。もちろん最初は何の能力もなかったが、今までずっと心を押し殺してきた人生の中で……コタロウは異世界の人間ながら最初に告げた三つの強力な心力を宿していた。こんな逸材を腐らせるのは勿体ねえと思ったからこそ、あたしは心力の種類ごとに様々な強さを引き出せる『感情色(エモーション・カラー)』を与えたのさ」

「だからと言って……『心術士しんじゅつし』はそうそうお目にかかれるものではないはずだゾ。いくら何でも……いや、一先ずは理解できたのだゾ……」


 ここで誇太郎は、先ほど「心力型」の名を聞いた瞬間に周囲がざわめいた理由について理解した。どうやら話によると、心力型の使い手である「心術士しんじゅつし」は、非常に珍しい存在であることに加えて心力を宿せるのは一人につき一つだけという事らしい。如何に自分に特別な力を頂いたのだと、誇太郎はプレッシャーを感じ身震いする。


 そんな彼を尻目に、ロッサーナは眼鏡をかけ直し次の質問を投げる。


「では、次の質問だゾ。これは、コタロウに直接聞きたい」

「俺……ですか?」


 自身を指さしキョトンとする誇太郎に対し、ロッサーナは短く頷いて続ける。


「あの時……暴君タイラントゴブリンに放屁攻撃を浴びせられた時、お前は激怒した……と言っていたな」

「はい」

「それはなぜだ?」

「……え?」


 「なぜ?」という問いに、誇太郎は一瞬硬直する。


「いや、素直に答えてくれていいのだゾ。少し小耳に挟んだのだが、お前は……その、フェリシア殿の放屁が好みだと聞いた。最初聞いた時は思わず怖気が立ってしまったが、それならば昨日のような攻撃はむしろご褒美なのではと思っていた。

 だが、お前はあの時激怒した。その理由はなぜなのか、気になったのだゾ」

「おーう、そいつぁオイラも気になってたとこだぜィ。フェリシア様の屁が好きってんならよぉ、オメーさん自体屁が好きってことだと思ってたんだが……違うのかィ?」


 ロッサーナの質問に、オークのアロンゾも加わり誇太郎の返答を待った。皆が気になる答えに、誇太郎ははっきりと断言するように口を開いた。


「はい、違います。俺は別におならが好きってわけじゃないです」

「えっ、違うのか……だゾ!?」

「オイ、待てィ! それじゃあ、フェリシア様の屁が好きって話はどうなんだィ?」

「え? あ、ああ……なるほど。そういう意味での質問でしたか」


 誇太郎は最初、ロッサーナ達の質問の意味を理解できていなかった。しかし、アロンゾが発した質問の「単純におならが好きなのか?」と問いを前にようやく内容を理解できたのだった。


 誇太郎にとって、単なるおならは好きではない。なぜならば――。


「俺は、可愛い女性の方が顔に似合わない豪快なおならをすることに興奮を覚えるんです。それに羞恥する姿もあれば、尚のこと……」


 瞳を爛々と輝かせながら、誇太郎の熱弁は続く。


「『何を言っているんだ』とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、こう考えていただきたい。思春期で胸の大きな女性を好む男子がいると思いますが、その興奮の対象が俺は『おなら』ってだけの話です。

 よって、俺は『異性のおならに興奮する』というだけであって、決して『おならそのものに興奮する』というわけではありません! 増してや、昨日みたいに(野郎)の屁を嗅がされるなど……言語道断極まりない! ただ、それだけのことであります!!」


 引き続き煌々と目を輝かせながら、荒い息交じりに誇太郎は自身の性癖熱弁を終えた。そして、終えたことにより彼は気付くこととなる。


 周囲が完全に沈黙し、白い目で見ている現状を。


――や……やっちまったあああああああああああああああああああああ!!!!



 誇太郎は自身の発言を後悔した。いくら素直になることに躊躇う必要がなくなったとはいえ、皆が見つめる大事な場面で自身の性癖を声高に暴露したのだ。しかも、普通であれば「理解できるかどうか不明」な性癖の為、尚のこと周囲のドン引きを促してしまった。


――やっちまった……何で大勢の前で性癖暴露しちゃったかな、俺ええええ! やばいって、視線が痛いって。これ絶対気持ち悪がられてるって!!


 羞恥心に苛みながら、誇太郎はゆっくりと魔王城内のメンツに目を向ける。


 反応はやはり、呆気に取られている者たちが大半だった。特にエルフのロッサーナのジト目で睨みつける視線が鋭かった。


 その状態を目の当たりにして、再び誇太郎が頭を抱えて狼狽するリアクションを取ろうとしたその時。


「……ぷふっ」


 誰かが吹き出し笑いをする声が上がった。声の主が誰か気になり、誇太郎は思わず視線を向ける。その先には、昨日暴走を止めてくれたオーガの少女・スミレの姿があった。


 スミレは吹き出した直後、何とか笑いをこらえている様子だった。が、誇太郎が視線を向けて目と目があった瞬間、堰を切ったように彼女は笑い出した。しかも、爆笑。お腹を押さえながら、スミレは「アハハハ!」と大声で笑っていた。


 やがて、誇太郎の初顔合わせに付き合ったライオン獣人のライガや技術顧問のドワーフ族のバスコ、そして今回の最終課題で彼を知ったオークのアロンゾやエリック、ローブを纏った少女のアルバや彼女が率いるアンデッド兵士たちもスミレの笑い声につられて順々に笑い出すのだった。


「ハハハ! コタロウ、お前やっぱ変わんねーなー! よかったわー! な、バスコ爺ー!」

「そうだわな。俺もちょっと安心したよ、初対面の時からコタロウちゃんは変わんなかったって」

「しっかし、どんだけ素直なんだィ! オイラだったら恥ずかしくて言えねーよィ!」

「いや、アロンゾ殿。案外おならって馬鹿にできないんだぜ? 何せ健康のバロメーターだからな、臭いの強さによって相手の健康状態を測れたりするんだしな」

「マジかよ、エリック先生!?」


 驚愕するアロンゾに続き、エリックの話を聞いた数体のアンデッド兵士が白骨化した右手を挙げて割り込んでくる。


「じゃあ、これから体調不良かどうか知りたいときはコタロウさんに頼むってのどうすか?」

「ばっか、お前! さっき野郎の屁には興味ない発言したばっかだろ!?」

「それどころか、怒り買ってお前の脳天ぶち壊されるぞ!」

「いや、そもそも俺たちアンデッドだから脳みそないだろ! ギャッハハハハハハハハハハ!!」


 皆それぞれ特徴的な観点を持った笑いだったが、いずれもその笑いは嘲笑や侮辱と言った見下すような笑い方ではなかった。


 一方の誇太郎は、城内の全員が嫌われる・ドン引きされるという反応を予想していた。事実、ロッサーナの部隊はそういう反応をしていた。それがまさか、爆笑で返されるとは思っていなかった。


「えっと……皆さん、そんなにおかしいですか……?」

「そりゃ……そうでしょ、コタロウ。こんな大勢の前であなたの性癖を暴露するなんて……素直にも程があるでしょ、ふふっ」


 クスクスと笑いながら、スミレが答えた。更に彼女に続き、今度はライガが誇太郎の前に出てくる。


「何だよー、コタロウー! お前俺たちがその程度で嫌うとでも思ったのかー?」

「え……そ、それは……」

「ばっかだなー! んなわけねーだろー? 俺たちはもう仲間なんだからよー!」

「……そうよ、ホントに。まあ、その性癖は……私にとっては恥ずかしいけど……」


 その他の面子の大半も次々に誇太郎に対し、朗らかな表情で向き合ってきた。今までこういう体験を長らくしてこなかった誇太郎にとっては、とてつもなく感慨深い体験だった。そんな彼に思わず浮かんだ言葉はただ一つ――。


「こんな俺だけど、ありがとう……皆」


 しみじみと感じる誇太郎に、フェリシアもまた遠目で「ニヒっ」と顔をほころばせた。その時である。


「……質疑応答如きでいつまで戯れているのだよ、凡愚共」


 ライムンドの静かな声色が城内に響き渡った。その声色からまだ総評が終わっていないという事と、面には出していない苛立ちを帯びていることに一同は即座に察知して押し黙った。


「……ロッサーナの他に質疑のある者はいるか」


 そのライムンドの問いかけに対し、反応は一切なかった。やがて五秒ほど経過した後、一切の質疑応答がないことを確認してライムンドは告げた。


「それでは、これより樋口誇太郎ヒグチコタロウの総評に移る。最終課題Ⅰ及びⅡの活躍に加え、先のフェリシアから告げられた身体術フィジカルスキル魔法術マジックスキルの詳細を踏まえた上で……コタロウの戦闘部隊隊長にふさわしいかどうかを多数決で判断する。ふさわしいと思うものは正直に手を上げるのだ、良いな?」


 城内一同はもちろん、誇太郎やフェリシアの賛同も確認した上でライムンドが高らかに声を張り上げる。


「総評! 樋口誇太郎ヒグチコタロウが戦闘部隊隊長にふさわしいか、良しと思うものは手を挙げよ!!」


 ライムンドの声が大広間に響き渡り、城内は再び一瞬の静寂に包まれる。程なくして最初の挙手が上がった。


 その人物はスミレだった。次にライガが続き、バスコ、シャロン達と続々と手を上げていく魔人とモンスター達が増えていく。やがて、一部を除いて城内の面子の大半が誇太郎の戦闘部隊隊長への賛成を認める挙手が上がるのだった。


 それ以上の挙手が上がる様子がないことを見計らって、ライムンドは反対意見の挙手を促した。すると、予想通りとみるべきかロッサーナの部隊のみが迷うことなく手を上げるのだった。


「……認められないか、ロッサーナ?」

「無論だゾ」


 フェリシアに尋ねられたロッサーナは、席から起立して即答した。


「その理由を聞いてもいいか?」

「……そんなの決まっているだろう。コントロールできない力がある以上、安心して背を任せられないからだゾ。心力型の……『感情色(エモーション・カラー)』と言ったか? フェリシア殿の言う通り強力な心力型だとは思うが、昨日のように感情的になりすぎて暴走するようでは……同盟相手としては素直に背を任せられるとはとても言えないのだゾ」


 痛いところを突かれ、誇太郎は再び申し訳ない様子を見せる。だが、ロッサーナの主張はまだ終わっておらず今度は先の内容とは打って変わった肯定的な意見で続ける。


「ただ……身体術フィジカルスキルの強さに至っては、とりあえずは安心できるものだとは思っている。上位アークスライムの時も、暴君タイラントゴブリンの時も中々の動きを見せてくれた。余程いい戦闘のイメージができているのだな、コタロウ」

「あ、ありがとうございます」

「だからこそ、心力型の魔法術マジックスキルをもっと調整できるよう尽力してほしいゾ。少なくとも今の君では、私は背を任せることはできない。反対意見は以上だゾ」


 そう言いながらロッサーナは一礼して着席した。


 ロッサーナは否定的な意見はもちろんだが、それを含めた上で肯定的な意見も出してくれた。ならば、より精進して認められるようにならねばならない。誇太郎は彼女の発言を胸に刻みながら、目を閉じて心力型の研鑽に励むよう誓うのだった。その時である。


「よっし、それじゃコタロウ。最後の最終課題について全員に説明すっから、一旦席に戻ってくれ」

「承知しました」


 にゅっと隣から現れたフェリシアに自身の席に戻るよう促され、誇太郎は素直にその指示に応じた。壇上から降りた先には、既にライガとスミレが空席を用意していたようで誇太郎はそこに着席することとなった。


 誇太郎が席に座ったのをフェリシアは確認し、ライムンドに目配せした。


「総評はこれにて以上となる。では最後に、残る最終課題Ⅲについてフェリシアから重大告知がある。フェリシア、後はお前の口から告げろ」

「ああ、わーかってる」


 手をひらひらと振りながら、フェリシアは壇上の中央へと歩を進めた。皆の視線が今度はフェリシアに集まり、彼女の発言を待った。


 対するフェリシアは、深呼吸して高らかに告げた。


「単刀直入に言おう! 最終課題Ⅲは、戦闘部隊隊長・樋口誇太郎ヒグチコタロウを筆頭として龍人族ドラゴニュートの砦に攻め込む攻城戦だ!!」



「こ、攻城戦んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!????」


 フェリシアから告げられた最終課題Ⅲの内容に、誇太郎はもちろん一同全員が驚きの表情を隠せなかった。再び城内が慌ただしくなっていったその時――。


「静まれ、凡愚共!」


 再びライムンドが声を張り上げて、一同を静めさせた。今度は明らかに声色に怒りがこもっており、苛立ちがとうとう表に出てしまったように見えた。が、「コホン」と咳ばらいを一度入れて、ライムンドはすぐに落ち着いた態度に切り替えフェリシアに発言権を移した。


「まあ、お前らが戸惑うのも無理はねえ。何せ、攻城戦を仕掛けるなんて……初めてだもんな」

「あの……お姐様、攻城戦と仰いましたが……一体どういうことですの?」

「課題にはよー! 『仲間と共に協力しろ』って書いてたからよー、俺様はてっきり少数で挑むと思ってたんだよー! 違うのかー!?」


 ライガとスミレから出た疑問に、フェリシアはすぐさま答えた。


「違わねーよ、仲間=戦闘部隊全員って解釈で考えりゃ説明がつくだろ?」

「にしても規模がでかすぎますって!! っていうか、攻城戦って仰いましたけど……一体どうすれば!? そもそも龍人族ドラゴニュートの戦力自体もどの位なのか詳しく!!」

「ああ、今から詳しく話すから。焦んなって」


 グイグイと食いつく誇太郎を落ち着かせて、フェリシアは続ける。


「コタロウは初めて知ると思うが、この嫌われ者の秘島の北部は……龍人族ドラゴニュートが治めてんだ。奴らとは対立関係にあり、何度もにらみ合っててな。しかも、戦力もこちらに匹敵するほどの軍勢を持ってる」

「匹敵するほど……ですか。そうだ、フェリシア様。今こちらにいる戦闘部隊の人数って……どれくらいなのですか?」


 誇太郎からの質問に、フェリシアは得意げな表情で答える。


「そうだな……戦闘部隊単体で見るなら、六千九百六十二人だな。そこに警備隊のアンデッド兵士も含めて、七千二百人弱……と言った感じだな」

「七千二百人……そんなに……!」


 思ったよりもいる人数をまとめねばならないという事実を前に、誇太郎は震えた声でオウム返しする。だが、これから来るフェリシアの発言に誇太郎は更に驚愕することとなる。


「だが、龍人族ドラゴニュート達の軍勢も負けてねえ。最後にあたしが確認した三年前の時でも、既に六千人強の軍勢があった。もしかしたら今はそれ以上に増えてるかもしれないな」

「三年前で六千人強!? 待って……じゃあ確実に軍勢増えてるじゃないですか……」

「おいおい、今からそんな弱気でどうする、戦闘部隊隊長! その攻城戦の指揮を握るのは、お前なんだぞ?」

「あっ……そうか、そうだよな……。申し訳ありません、フェリシア様」


 フェリシアに諭され、誇太郎はハッと我に返った。自身が指揮を執るという事を改めて意識し、再びフェリシアの話に耳を傾ける。


「話の続きに戻るが、すぐに砦に攻め込めっていうわけじゃない。それ相応の準備がなきゃ、勝てる訳ねーもんな。だからコタロウ、これからお前に与える最終課題は……戦闘部隊の隊長として初めての任務にもなる!」

「任務……と申しますと?」


 聞き返した誇太郎に、フェリシアはニッといつもの笑顔を浮かべて告げた。


「今から二か月の間! 龍人族ドラゴニュートの砦に攻め込む準備を整えろ! 作戦や諸々の計画はお前の判断に任せる!」

「お、俺にですか!? お待ちください! いくら何でも初めての任務で七千人近くの大部隊を動かすのは、流石に無茶がありませんか!?」

「なに、心配すんな! サポート役としてライムンドを付けてやる、いいよな!?」

「……致し方ないな、よかろう」


 呼びかけられたライムンドは、「やれやれ」とため息交じりに答えを返す。ライムンドの了承を得られたことを確認したフェリシアは、この場をしめるようにパンっと手を叩いて声を張り上げた。


「さあ! そうとなったら、明日から戦闘部隊は攻城戦に向けて備えろ!! いいな!?」


 フェリシアのその宣言を前に、スミレ等含む戦闘部隊は意気揚々と声を張り上げて意気込みを見せるのだった。


 ただ一人、浮足立つ誇太郎を除いて。



 自身の総評と、最終課題Ⅲもとい龍人族ドラゴニュートの砦への攻城戦の説明が終わり、大広間に集まっていた魔人たちの面々は次々と帰還していく。フェリシアも最後の発言が終わるや否や、あっという間に自室へと帰還していった。


 その中で、誇太郎はただ一人激しいプレッシャーの中茫然と佇んでいた。誰もいない大広間の中、誇太郎はこれから自身が七千人もの軍勢を動かす立場になったという事実を少しでも受け止めようとしつつも受け切れない自分の心と板挟みになっていた。


――俺が……大部隊の、隊長……。できるのだろうか、ただイメージした戦い方を見せることができるだけの人間が……。ましてや、魔人じゃないただの人間が……それもこの世界じゃない、異世界の人間の……俺にそんな大それたことができるのか!?


 思えば思うほど、プレッシャーは肥大し心を追い詰めていく。煩悶しながら声にならないかすれた声を上げていると――。


「……腹でも痛いなら便所に行ったらどうだ」


 ライムンドが誇太郎の元に近寄り、気にかけるような声色で声をかけてきたのだった。


「いえ……お腹は、大丈夫です。ただちょっと……不安だっただけで」

「そんな心持ちでどうする、先もフェリシアに言われたばかりであろう」

「それでも……やはり不安ですよ。俺は、元の世界では人を動かす立場には立っていなかった。いつも人に動かされる立場でしかなかった、そんな存在がいきなり大勢を動かすなんて……」

「下らん御託を抜かすな、凡愚が」


 弱気になりがちな誇太郎を、先ほどとは違う悪寒を感じさせるほどの冷たい声色でライムンドはたしなめた。


「我らが魔王のフェリシアが、『お前なら戦闘部隊として任せられる』と言ったのだ。任せられた以上は、自信がなかろうが己の過去がどうであろうが……今は全て忘れろ。与えられた責務に対し、全身全霊で臨め」

「しかし……お言葉ですが、ライムンド殿は俺でよかったと思っておりますか?」

「正直、思ってはいない」

「即答!?」

「当たり前だ。色々と未熟で不安要素が多いお前に、いきなり大それた役職を与えるなど……フェリシアから最初聞かされた時は思わず呆れたのだよ」


 ぐうの音も出ないライムンドの意見に、誇太郎はダンマリと聞くほかなかった。が、そんな彼の様子を察してライムンドは翡翠の瞳を一瞬閉じて続ける。


「だが……部隊をまとめるという点のみで言うならば、『人間』であるお前にしか任せられないという意味ではお前で正解だったと俺は思っている」

「え……それは、一体どういう意味ですか?」


 尋ねる誇太郎に、ライムンドは噛んで含めて説明した。


「我が軍の戦闘部隊は知能が獣並みのモンスターを始め、そこからランクが上の下位・中位・上位の魔人たちで構成されている。だが、ランクがいくら高くなっていったとしても……魔人たちの戦い方は良くも悪くも『単純』なのだ」

「良くも悪くも……?」

「例えば、今の状況下で例えるとしよう。こちらの軍勢が相手よりも劣勢だった場合、コタロウ……お前ならどうする? 一つ異なる点を挙げるなら……準備期間は少なく、軍勢を増やせない。そうなった場合……お前ならどうする」

「俺ですか? 俺なら……そうですね、少ないなら少ないなりに上手く戦うようにするかと。相手の隙を突くために、奇襲だったり……罠だったり……少しずつ大勢を切り崩して勝利を確実に目指す。そうすると思います」

「……そうか。よかった、そういう答えが返ってきてくれて」

「え……まさか、魔人の方々って……」

「そうだ。先の俺の質問に対しライガならば『正面から暴れる』、スミレだったら『無謀を承知で正面からぶつかる』と答えるだろう。いずれにせよ、『軍勢に関係なく正面からぶつかる』選択を選んでしまうのだよ。そして、そいつらが率いる部隊も同様の考えを持っている。これをどう思う?」

「……危ない、としか申し上げられません」


 シンプルに感じた気持ちを、誇太郎はライムンドに示した。


「しかし、それならばライムンド殿であってもよかったと思いますが……」

「俺も駄目だ。俺はあくまで補助型魔法術(マジックスキル)黒穴クロアナと、一部属性攻撃型をかじっている程度の頭脳担当のグランレイスだ。身体術フィジカルスキルのような近接に持ち込まれたら、いざという時応戦できぬのだよ。

 だが貴様は違う、戦える力は最終課題のⅠとⅡで見せつけた。そして劣勢であっても冷静に状況を分析し、確実に勝利に持ち込ませる気概がある。これだけでも部隊を率いるに相応しいと俺は思っている」

「そうだったのですか……」

「だが、お前が思う不安の通り……いきなり大部隊を任せるのは俺も賛同しかねる。だから安心しろ、明日からお前には……大勢の軍を動かすにはどうすべきか。相手に勝つためにはどう戦略を組むべきか。それを少しずつ叩き込んでやる」

「……ありがとうございます、ライムンド殿」

「礼などいらん、分かったら今日はもう休め」


 最後にそう言い残し、ライムンドは大広間から去っていった。



 そして、一人残された誇太郎は異世界に戻る前に父・正文からかけられたある一言を思い返していた。


――――――――――――――――


「誇太郎、この本たちも持っていきなさい」


 異世界に戻る荷造りの最中、誇太郎は正文が持ってきた何冊もの本を受け取った。少なくとも5冊は下らないその本は、「孫氏の兵法書」や戦国武将の戦い方・現代におけるリーダーシップのハウツー本などいずれも人を動かすことに特化した内容の物ばかりだった。


「お、お父さん……この本必要か?」

「もちろんだ、持っていきなさい」

「いやいやいや、何言ってんの? 俺が人を動かすのなんて無理だよ? 前線で敵をバッタバッタ倒す方だよ? それだけでも十分じゃないか?」

「……そんなわけないだろう」


 ぴしゃりと誇太郎の意見を一蹴し、正文は厳格な面持ちで自身の考えを述べる。


「いいかい? 異世界の社会も魔王軍の組織図も詳細なことは分からないけど、組織というものに属す以上……いずれは自分が指導する立場になっていくものなんだ。

 昇進はもちろんのこと、左遷、上司の引退、仕事場の異動、そちらの世界じゃ……仲間や上司の殉職もあり得そうだね。とにかく色々な理由で、いずれは自分が皆を引っ張っていくという気概を持たないと駄目なんだ。それこそ、今までみたいに日和見めいた考えで臨めば……異世界そっちに行っても二の舞を演じる羽目になるぞ」


 社会人としてのキャリアが長い父からの、最大限の忠告だった。誇太郎の家族は所謂普通の家庭だった。一軒家を持ち、父の稼ぎ一つで経済的には非常に安定した暮らしを持っていた。


 そんな中、誇太郎は社会に出て痛感したこともあった。日々の業務の忙しさはもちろん、お互いの連携を組む為にも必須なコミュニケーションを築かねばならなかったり、状況に応じて臨機応変に動かねばならなかったりと、社会生活とは常に激流の中で自分の動きを持たねばならない非常に大変なものだったのだ。


 そんな中、顔色を変えず家族の為に必死に働き自身ひいては家族を支え続けた存在。それこそが父であると、誇太郎は改めて実感した。その父が今、異世界に旅立とうとする息子に今まで感じてきたことを伝授しようとしている。


 その状況を前に、誇太郎は緊張のあまり固唾を飲みこんだ。


「俺が……皆を引っ張っていく、か。できるかな……」

「できるかな、じゃない。やらねばならないんだ、それが……人を率いていく。社会に入って責任を果たすという事なんだ」

「……」

「そんな生気のない顔をするんじゃない、樋口家……じゃなかった、魔王軍の侍!」


 弱気になる誇太郎の両肩を掴んで、正文は力強く告げた。


「だからこそ、このリーダーシップの本や兵法家たちの戦い方を見て研究して、しっかり人の上に立つ存在として成長するんだ!」

「人の上に立つ存在……」

「そうだ。誇太郎、これからは自分の力だけ強くても駄目だ。上司の指示をしっかり遵守し、尚且つ部下の犠牲を出すことなく物事を遂行していく。そんな侍として成長していくんだぞ!」

「……何か、すごくかっこいいな……そんな侍も」

「当たり前だ、かっこいいんだぜ? 大丈夫だ、お父さんは誇太郎がそうなれると信じてるからな」


――――――――――――――――


「まさか……こんな早く人の上に立つ存在になるとは、思わなかったよ」


 天井を見つめ、誇太郎は短く苦笑した。そして、ため息を一回つくと覚悟を決めた様相で正面を向く。


「……やってやろう、俺の思う通りに……皆を引っ張りフェリシア様への忠誠を果たすためにも」


 全ては己の心の赴くがままに。


 こうして誇太郎の……否、戦闘部隊の長くも短い龍人族ドラゴニュートの砦攻城戦が始まった。

いかがでしたでしょうか?

作戦の準備期間はなるべく文章量を減らして投稿していく予定です。

もしかしたら変わるかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします。

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