The first day 1
入学式も無事?に終わり俺たち生徒は教室へ戻ることとなった。
昔からの友人である難波 樹と共に立ち上がる。
彼は一度やったことは忘れない、失敗しない天才肌の持ち主であり、また俺と同じく男子校育ちなのだが女の子の知り合いも多く、生粋の女たらしなのだ。
廊下を歩く途中、すれ違ったり教室の前を通る度にひそひそと小声で話すのが伺えた。
「さっすがあざみ、有名人だねぇ♪」
「今ばかりはお前のその能天気さが羨ましいよ。けど今だけは、そんなこと気にしてられないな。
俺はセンパイと付き合うためならなんでもするって決めたんだ!」
「やっぱり凄いよ君は。あの時からそうやってずっと真っ直ぐでさ。」
彼の指すあの時とは俺の運命が変わった日だ。
あの日、俺は高校受験前最後の模試を受け、帰路についていた。
手馴れた手つきでイヤホンを嵌め、リスニングをおもむろに流す。無意識のうちに電車に乗り、気づけば最寄り駅に着いていた。
その日は天気も良かったため、家まで歩いて帰ろうとした。
その途中で見つけた。いや、出会ってしまった。
長い髪は靡かれ、風と一体となり、水面を見つめるその姿はとても儚く、今にも消えてしまいそうで。
そんな姿があの時の俺にはひどく美しく、一瞬で心を奪われてしまった。
刹那、彼女と目があいお互いに狼狽える。
彼女を凝視していた事の弁明をするため近寄ると彼女は逃げ出してしまった。
その時彼女はたまたま制服を着ていて、それが自らの姉のものと同じだったため、学校を把握するのは容易かったが、姉の通うところは女子校。逆立ちしようが通うことも出来ず、諦めかけたところにそこのサイトの一文が飛び込んできた。
¨来年から本校の制度が変わり、入試の成績上位五%以内の男子生徒は入学可能となります。¨
これだ!!と思いすぐに志望校を変更し、この学校に行くことを決めた。
樹もそこに行くことにいていたのは驚いたが彼の性格を照らし合わせると納得もいった。
そして無事彼と共に合格し、門をくぐることが出来た。
これが¨あの日¨から今日までの怒涛の数ヶ月だった。
あの時の彼女は驚きのあまり逃げてしまったのかと思っていたが、今日の反応を見た限りそうでは無い何かがあったのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると隣の親友に声をかけられた。
「さあ、着いたよ。ここが僕らの教室みたいだね。」
「そうっぽいな、今日からどんな生活が待ってるのか楽しみだな!」
よく聞くセリフに不吉な予感を覚えた樹だったが、薊が楽しそうだったので気にせず、まだ見ぬクラスメイトへの期待に胸をふくらませた。
しかしやはりヒロインと親友の予想は当たるものであり、様々な波乱が待ち受けているのであった。