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謎ばっかりが増えていく


 それにしても、今回の流れで私が気になってるのは『そもそもなんでごまみそが私に懐いたのか』って言う点。

 これがエサでもやった後に懐かれた、って言うならわかるんだけど、エサをあげるまでもなく懐かれたっていうのが不思議なんだよねぇ。


「……ごまみそはどうして私に懐いてきたんだろうねー? エサも貰ってないのにさー?」


『あんなー、いいにおいしたー』


「良い匂い? 私が?」


『そー。 いーにおい! やさしそーなの!』


「…………………………本当に会話が通じてんな、オイ……俺にはにゃごにゃご言ってるようにしか聞こえない、ってのに!」


「安心しろ、トーリ。アレは俺にもにゃあにゃあとしか聞こえん」



 ごまみその喉元をもふもふと撫でてやりながら話しかけてみれば、満足げに目を細めて喉を鳴らすごまみそがかぱーっと口を開いた。

 ……え、におい!? 猫的な良い匂いってどんな感じなの!?

 もしかして(ニオ)いってこと!? こまめに洗浄の魔法はかけて貰ってたけど、汗臭かったりなんかそんな感じの匂いがするとか!? え、うそ、マジで!?

 思わず腕の辺りの匂いを嗅いでみたけど……特に変な匂いはしない……ん、だけど……。

 あ、でも「自分の匂いは自分ではわかんない」って聞くし、もしかして妙な匂いでもしてるんじゃ……!!


 私が慌てている間に、目の前にでんと座ったトーリさんがさらに頭を抱え、ヴィルさんも首を傾げている。

 

 んん?? ダンジョンにいた時はヴィルさんたちにも通じてた気がするけど……アレは確かダンジョンコアが近くにあったし、ダンジョンコアがスピーカーというか翻訳機的な役目を果たしてた、ってことなのかな?



「そういえば、リン。その猫はなんて言ってるんだ?」


「うーん……なんか、いいにおいがしたからとか言われてますけど、そんなに私妙な匂いとかしてますか?」


「いや、何か変わった匂いがする、というわけではないが…………何となくコイツの言ってることがわかる気がするな。妙な表現になるが、魂の匂いというか、マナの波動というか……そういった感じのものが共鳴したんじゃないか?」


「あー…………うーん………………馬が合った、相性が良かった、っていう感じと認識していいんでしょうか?」


「ま、そんなもんだと思えばいい」


 

 トーリさんが頭を押さえて唸っている間に、ヴィルさんの腕がごまみそに伸ばされた。

 まっすぐ頭に向かって伸ばされた腕に、叩かれるのかと考えたごまみその身体が一瞬ぴくんと跳ねるが、その手はごまみその頬をもふりと撫でるだけだった。

 頬から口元、喉元を撫でられて、目を細めたごまみそがゴロゴロと喉を鳴らす。むむっ! ヴィルさんなかなかお上手ですな。


 ……ってか!

 ヴィルさんにまで『良い匂いだったから懐いた』っていう事案に対して『わかるー』って言われるとは思わなかったよ!!

 変な匂いがしない、っていうのには安心したけど、一体どういうことなの!?


 ……うむ。何が何だかさっぱりわかんないけど、まぁ多分ごまみそと私の相性がいいんだろう、ということで納得することにした!

 魂がどうこうとかマナがあーこう言われても、ちょっと私が今まで培ってきた概念の埒外というかなんというか……。

 要するにまぁ、心の友、魂の兄弟みたいなもんなんじゃなかろうか、と思うわけですわ。


 あと引っかかってることと言えば、ダンジョンコアの守護役として配置されていたダンジョンボスが、何でその役目を放棄して付いてきちゃったのか……ってことなんだけど……。

 コレに関しては「ダンジョンボス」っていう強力ながらも汎用的な魔物だったものを、私がうっかりネームド化しちゃったせいで個の魔物にしてしまった、というか……。ほら、和風ファンタジーでよく言われてる「名前は(しゅ)であり、名付けることで様々なものを縛ることができる」理論的な?



「ごまみそはアレなのかな? ごまみそになったからダンジョンボスじゃなくなったのかな?」


「まぁ、ネームドの固有モンスターになってたからな……その可能性も捨てきれん」


「まさかこんなことになるとは思いもしませんでしたけどねぇ……」


『朕はなー、たのしいからなー、もんだいないー♪』



 私が汎用ダンジョンボスに「ごまみそ」って名付けちゃったことで、汎用ダンジョンボスは「ごまみそ」という固有モンスターになり、固有モンスターになったが故に「ダンジョンボス」という役目から解き放たれ、固有モンスターの「ごまみそ」として自由に生を謳歌するよ! ……って感じなのかね??

 二人がかりでごまみそをモフっているうちに、ようやくトーリさんが復活してくれた。むくりと上体を起こすと、半ば死んだような目でこちらをじっと見据えている。



「オレが言う話じゃねぇが、こりゃあもう一介のギルドマスター(オレ)の判断の範疇を超えてるぜ……」


「ああ。それに関してなんだが、こうなった以上意地を張ってる場合じゃないだろうし、アイツの判断を仰ごうと思ってる」


「……ヴィル(おまえ)が良いって言うなら、それが一番かもしれないな。ホントに、もうこの案件は俺の手に余る事態だぜ!」



 トーリさんとヴィルさんが、謎のアイコンタクトを交わす。

 ニュアンス的に、誰かはわからないけどギルマスさんより上の人に報告をして判断を仰ぐ、ってことなんだろうけど……アイツって誰よ!?


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