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こんな攻略、あり!?

誤字報告ありがとうございます。

ごまみその「おしもと」発言に関しましては、舌っ足らずさやらアホの子さやらを醸し出してみたかったが故の「おしもと」表記となっております。

ご指摘いただきました皆様にはご迷惑をおかけしてしまいまして申し訳ありませんでした。


 改めて神殿内部というか、コロッセウムを眺めてみると本当に何にもない。

 ……と。ぴこんと耳を立てたごまみそが、不意に体を起こした。そのまま私の腕から飛び出し、みんなの足元をすり抜けて、コロッセウムの中央にちょこんと腰を下ろした。


 琥珀色の瞳の中で、瞳孔が一瞬きゅうっと収縮する。子猫の口がぱかりと開き、真っ赤な口内が覗く。



『みゃぁぁぁぁん』



 子猫の高い声がコロッセウムに反響し、長く長く尾を引いて、消えた。

 突如、子猫の座っていた部分が盛り上がる。


 コロッセウムの土を割って現れたのは、バスケットボール大の子猫よりも大きな水晶玉のようなものだった。青みを帯びた透明な珠の中で、時折何かが閃くように輝いては消え閃いては消えを繰り返している。



「ま、まさかアレはダンジョンコア!?」


「え……知ってるんですか、ヴィルさん?」


「読んで字の如くダンジョンの核、ダンジョンの根幹だ。ダンジョンコア(これ)なくして、ダンジョンは成り立たない……なんでこんなもんがいきなり……?」


『あんなー、朕なー、忘れてたけどなー、朕なー、コレ、まもらないとダメだった!』



 巨大な水晶玉……ダンジョンコアにちょこんと座って無駄なドヤ顔で胸を張る子猫がにゃごにゃご鳴くのに合わせて、ダンジョンコアから何ともアホっぽい声がコロッセウムに響き渡った。



「……ってか、さっきから聞こえてた、ごまみその声!!」


「何だと!?」


『朕、おもいだしたー! 朕のおしもとなー、これをまもることー!!』



 上機嫌な様子でぱたぱたと尻尾を振ってきた子猫の瞳が、キラリと輝く。

 その瞬間、子猫は、子猫じゃなくなっていた。

 

 人の胸ほどまである体高と、巨大な翼、裂けたような大きい口と、そこから覗く鋭い牙……前足は太く、大きく、アレで猫パンチでもされたらもうひとたまりもなさそうだ。


 ぽかんとしてしまって何もできずにいる私をよそに、ある程度こんな結末でも予想していたのか、ヴィルさんを始めとしたパーティメンバーはみんな臨戦態勢を瞬時に整えていた。


 ……え……あれ、ごまみそ、が……敵……ってか、ボス……だったの……!?

 

 私の膝の上でぷすぷす眠るごまみそが……もっと撫でろと頭を押しつけて要求してくるごまみそが……幸せそうにコカ肉を貪るごまみその姿が……走馬灯のように頭を駆け巡って………………ほんっとうに神経図太いなこの猫!! という感想が湧き上がってきた。

 

 あー、うん。ボス……ボスかぁ。納得の図太さだわぁ……。



『?? 何で朕にぶきむけるのー? 朕なー、朕じゃなくて、ごまみそになったからなー、もうおまもりとかしなーい』



 今まで自分を撫でてくれていた人間が武器を向けてくることに、心底不思議そうな様子で首を傾げた大きな山猫は、その大きな前足でべしっとダンジョンコアを叩きつけた。

 台座のようなものに安置されていた水晶玉は、その衝撃に耐えられなかったのか台座から外れて転がっていく。

 それを追いかけていったごまみそ(大)が転がる水晶玉を押さえ込んだ。

 すると、ごまみその下からパリンと何かが割れたような音がしたかと思うと、ごまみそ(大)も縮んでいって……。

 


「……はぁ?」


『朕なー、ごまみそなったからなー、もうここからでるー! いっしょにいくー!!』

 

「え? は、え、待って……待って……何が起きてるの?」



 いつの間にか、そこにはごまみそ(小)がむふんと胸を張って座っていた。

 しっぽをぴんと立てて立ち上がったごまみそ(小)は、私の足にすりっと頭をこすりつけたかと思うと抱っこをねだるように足に手をかけて体を伸ばしてくる。

 つい抱き上げてしまった私の腕の中で、ごまみそは満足げに目を細めて喉を鳴らした。


 それと同時にダンジョンコアが収まっていた台座が輝きを持ち始める。



「おい、嘘だろ!? まさかこれでダンジョン攻略終了か!!」


「え? もしかしてアレが出口、ですか!?」


「ああ、そうだ! ボスの撃破じゃなくてダンジョンコアの破壊による出口だ! 早く走れ!! ダンジョンの崩落に巻き込まれるぞ!!!」



 ヴィルさんのそんな言葉が終わるか終わらないかのうちに、不気味な振動がコロッセウムを襲う。

 低音の地鳴りと共に部屋全体が揺れ、端の方からガラガラと屋根の、壁の、観客席の崩壊が始まっていく。

 ダンジョンコアは、ダンジョンの根幹、ダンジョンの核……核がなくなったことで、ダンジョンが形を保てなくなってるんだろう。


 どんどん崩れていく部屋を呆然と見ていると、ヴィルさんに肩を掴まれた。



「行くぞ、リン! 細かいことは後で考えろ! 今は逃げるんだ!!!」


「あ、はい! すみません、今行きます!!」



 見れば、崩落するコロッセウムには私とごまみそ、そしてヴィルさんしか残っていなかった。他のみんなは、もう出口を潜り抜けていったらしい。

 焦ったような表情のヴィルさんに腕を引かれながら、私も、ごまみそも台座だった出口に飛び込んだ。

 溢れる光で視界が真っ白に染まる。

 咄嗟に目を瞑って、再び開けると、突入前に見た森の中にごまみそを抱いて呆然と立ち尽くしていた。腕の中のごまみそは、物珍しそうにきょろきょろと周りを見渡している。

 一緒に扉を潜ったはずのヴィルさんは少し離れたところにいて、同じような間隔で散らばったメンバーみんなが立っていた。

 ただきょときょとと周りを見回す私たちに、他の冒険者を装ったギルド職員さん達が小声で話しかけてきてくれる。



「お帰りなさい! よくぞ御無事で……!」


「ダンジョンの入り口が消滅したので、ギルドの方へ連絡を飛ばしています!」


「消滅……やはり消滅したのか……!」


「ダンジョンコアを破壊したんですか? ああ、いや、詳しいことはギルドで! ギルドマスターが待っているはずです!」



 人数分の水薬(ポーション)を渡されて、「お疲れの時は飲んでください」と小声で囁かれる。え、何この水薬(ポーション)栄養ドリンクかなんかだったの?

 味は気になるけど、でも、何というか、これを飲むほどには疲れてないもんなぁ。

 それはみんな同じだったようで、貰った水薬(ポーション)は懐やポケットにしまっている。

 ギルド職員さんがさりげなく離れてくれた頃合いを見計らって、再度集合した暴食の卓(わたしたち)も街に向かって歩き出した。


閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


翼猫を検索してみたのですが、可愛らしいのからかっこいいのまでよりどりみどりで、もうたまらんです!

ごまみそに関しては「ウザ可愛い」を目指していければ、と思います。

もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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