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ウソ!? 私の能力凄すぎ!?

7月9日 追記

内容を書き換えました。

「リンは料理が上手いんだな! 料理人か何かだったのか?」


「料理は単に趣味なだけですねぇ……職業にしたら、たぶん自炊とかしなくなっちゃう性分なので……」



 …………さて。お互いにお腹も膨れ、食後の後片付けとテントの撤収も終わり……昨日散々飲んだのに、ちっとも中身が減る気配がない不思議な麦茶を飲みながら、感心したような目でヴィルさんが私を見つめている。

 いやー、どうだろう。私の料理の腕なんて、中の中……欲張って中の上くらいじゃないかな?

 多分、ヴィルさんがお腹減ってるからそう感じるんだと思うなー。空腹は最大のスパイスなり、ってね。


 趣味というか、好き勝手に作れる(ぎむじゃない)から楽しいんであって、料理(コレ)が『仕事(ぎむ)』になっちゃったら自炊とかしないタイプだと思うよ、私は。『家に帰ってまで料理(しごと)してられるかー!!』ってね。


 それよりも私は、減らない麦茶の方が気になるんだけど……汲めども尽きぬ麦茶の泉、ってか?

 いやまさかそんな……ねぇ……。



「ところで、リン。これは俺の勝手な独り言だが……お前はいったい何者なんだ?」



 おぅふ!

 何ですかそのいきなりな剛速球は!?


 思わず麦茶を吹き出しそうになった私をわざとらしく無視しながら、素知らぬ風のヴィルさんが嘯く。



「少なくとも俺は、今俺たちが座っているような自在に折り畳める椅子を見たことも、火を焚いている金属の台も、不思議な手触りの天幕も、寝床も、見たことがない」


「う、うぅぅぅ…………それ、は……」


「まぁ、リンが何者であろうとも、俺はリンに助けてもらった身だからな。よほどのことがない限り、俺が進んでリンを傷つけるような真似はしないと誓うが」


「よ……よほどのこと…………っていうのは……?」


「……何か聞こえた気がしたが、そうだな……仲間を裏切ったり、傷つけたりしようとした時とか、だろうな」


「あぁ、それはないと思います。端くれとはいえ医療に携わる者ですから。故意に人を傷つけたりしませんよ」



 お、おお?? 鋭い所を突っ込まれたけど、ヴィルさんは味方になってくれる、ってこと……かな?


 ……だとしたら、一緒に行動する以上いつまでも黙ってはいられないし、そもそも私の性格からして騙し通せるとも思えないし……。

 私の事情とかスキルを話しちゃった方が良いかな……?

 なんかマズいこととか不穏な雰囲気になったら、荷物は諦めてモーちゃんに飛び乗り、ダッシュで逃げようと思います。



「えーと……あー……あのですね、ヴィルさん。ちょっと出発する前にお話ししておきたいことがあってですね」


「どうした、リン? そんなに真面目な顔で話すことなのか?」


「ええ……まあ、何というか……見てもらった方が早いかなー」



 決意はしたものの、なにをどう話し出せばいいかわからなくなって、チラリと目の前のヴィルさんを眺めてみた。

 わかっているだろうに、麦茶の入ったコップを片手に小首を傾げるヴィルさんは、ガタイが良い分そのギャップがあざと可愛い……ように見えて困る。

 ……なんかなぁ……親しみやすいイケメンって困るわあ……。

 とりあえず、モーちゃんに『ヴィルさんにも車体が見えるようにしてー』と電波……もとい、思念をゆんゆんと送ってみる。百聞は一見に如かず、だ。


 次の瞬間、ガタンと音を立てて椅子が転がった。いきなりヴィルさんが立ち上がったからだ。

 私の目には常時映っているモーちゃんが、ヴィルさんの目にも見えるようになったんだろう。



「リ、リン……これは……!?」


「あー……驚かせてすみません。これが、今からお話しする私のスキル? なんです」


「これが、か……!? リン……お前、いったい何者だ……?」


「えー……ただのしがない鍼灸師兼介護福祉士なんですけどねぇ……」



 モーちゃんを見据えながら呆然と呟くヴィルさんの視界の端で、私は頭を下げた。うん。こんな訳の分かんないことに巻き込んでしまって申し訳ないという自覚は、ある。

 こちらを見るヴィルさんの目には、驚きと混乱とともに過分の警戒心が混ざっていた。

 ……まぁ、そうなるよねぇ。こんなワケのわかんないことが起きたら、私だってそうだ。

 だからこそ、ヴィルさんが納得してくれるまで話す必要があると、私は思うんだ。施術じゃないけど、説明と同意インフォームドコンセントって、日常生活でも大事だと思わん?



「えーとですね、まず何から話せばいいのかわかんないんですけど、私は『聖女召喚』とやらでこちらの世界にやってきました。異邦人ですね」


「せ、聖女召喚!? まさか、本当にあの儀式を実行した連中(バカ)がいるのか!?」


「んー……多分、実行した連中がいたから私ともう一人の子が召喚されて、私は『役立たず』ということでこの周辺に飛ばされました」


「……勝手に召喚した挙句、調べもせず役立たずと判断し、こんな僻地に強制転移、か……リンが本当の『役立たず』だったら死んでいる所だぞ!?」


「……それが狙いなんじゃないんですかねぇ……。視界に入るのもおこがましいとか言われた気がしますし……」



 とりあえずお互いに椅子に座り直し、お茶も入れ直したところで私はこれまでの経緯をざっくりと説明する。

 最初は驚いた様子だったヴィルさんも、終いには額を押さえてがっくりと項垂れる程に消沈していた。


 ……うん。あの連中のやりようは非道だよねーと自分では思ってたけど、どうやら他の人(ヴィルさん)から見てもド外道な扱いだったらしいよ。

 私の感性間違ってなかった! よかったぁ!!!



「で、飛ばされてから発動したのがこのスキル、という事か……」


「はい。『特殊スキル』とかで、野外でのみ発動するらしいです。この中に、かなりの量の荷物を入れたり出したりできます」



 うん。嘘は言ってないパート2。

 あの四次元収納はかなりの量が入ると思われるんだ……。 



「なるほど……しかしこれが『役立たず』とは……戦闘そのものには役に立たないかもしれないが、行軍にはかなり役立つのではないか?」


「その辺はどうなんでしょう? 召喚されたのが屋内だったので、スキルが見えなかったんじゃないかと思います。それに、少人数なら役立つでしょうけど、軍隊クラスになるとあまり効果はないかと……」


「いや。術者の座標起点で、任意に出し入れ可能な大容量収納がある箱を操れるのであれば、リンとその騎馬1頭という最小限で大量の食料や医薬品、武器防具などの道具を輸送できる。戦線維持に持ってこいの能力だ」


「え……なにそれこわい」



 私一人で戦線維持が可能そうとか、そんなの使い潰されちゃうじゃん!


 ……っていうか、ヴィルさんの口振りから判断するに、もしかしてモーちゃん乗り物だと認識されてない感じ?

 思い返せば『箱』って言われてたから、ただの大きな箱に見えたんだろうな、うん。


 まぁ確かに、こんな鉄の塊が自走する、って想像できないよね……私も時々どうしてこんな重いのに動くんだろ……って思うし、飛行機なんか理屈はわかるけどなんでアレ飛ぶんだろ……って思うし……。


 想像の範疇外ですよね!


 それよりも今は、難しそうな顔で考え込むヴィルさんの様子に、不穏な想像が湧き上がる。

 

……もしコレ、ヴィルさんに捕まって元の国に戻されたりしたら、確実に使い捨てられて過労死する未来確定じゃないですか、ヤダー!!



「……なぁ、リン。お前、これからどうするつもりだ?」


「うーん……正直な所、元の世界に戻りたいっていうのが最優先なんですが、それがダメなら自力で生きていけるよう仕事探して地に足つけて暮らしたいです」


「なるほどなぁ……戦争の英雄になる気はない、と……」


「ないです、ないです!! 特に、勝手に召喚()んでおきながらポイ捨てする連中のために働きたくないです!」


「それはそうだよな……俺としても、恩人が使い潰されるのはいい気がしない」



 沈黙を破って話しかけてきてくれたヴィルさんを、チラっとだけ生存戦略(サバイバル)さんで盗み見してみた……けど、赤枠(けいこく)は出ていない。……大丈夫、なの……かな?

 さっき『俺が進んでリンを傷つけるような真似はしない』って言ってくれたし、その言葉を信じるけどね!!

閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


ヴィルさん的に、モーちゃんは倫さんと許可した人にしか見えない大きな鉄の箱で、倫さんの任意で出現、消去が可能。

自走機能はないけど、倫さん本人の座標に依存して出現するので、馬なり馬車なりで目的地まで走れば良い……と考えていました。

実際は乗り込み&自走が可能な鉄の箱だったわけですが……。

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